【まえがき】
白熱なロンドンダービーだった。
ピッチの中はもちろん、ピッチ外もバチバチ。試合開始のホイッスルから段々とボルテージは上がりまくり、その熱は試合終了のホイッスルがなっても冷め止まなかった。
試合終了後、両監督が握手をすると🤝それをきっかけに小競り合い開始。2人にはレッドカードが提示され退場処分となった。
バチバチの肉弾戦。大歓声の観客。ヒートアップする両監督。非常にエンタメ性に溢れるロンドンダービーだった。そして戦術的にも非常に面白くハイレベルな90分だった。
そんな面(戦術的やり合い)を簡単ではありますが解説していこうと思います!最後までどうぞお付き合いください!

⒈はまらないプレス。
序盤トッテナムがチェルシーのボールを引っ掛けてショートカウンターを発動。厚みを持ってペナルティエリアへ侵入していった。
しかし、その後はチェルシーが攻守でトッテナムを上回っていった。
チェルシーはボール保持とボール非保持でシステムを変える事で優位性を作り出した。まずはチェルシーのボール保持解説からどうぞ。
1-1.チェルシーの前進
チェルシーもトッテナムも後方からしっかりボールを繋ぐ意志を持ったチームだ。前半その意志を結果に結びつけることが出来たのはチェルシーだった。
トッテナムはボール非保持になると後方に5バックを形成し、中盤2枚、前線3枚の5-2-3の陣形でボールへ出ていった。
チェルシーはボール保持するとDFラインは4バックに。右からジェームズ、チアゴ・シウバ、クリバリ、ククレジャの4バックを形成。この時自陣でのビルドアップ局面では両SBが高い位置に上がりすぎないのがミソ。4バックが横並びでボールを動かす事で、トッテナムの5-2-3陣形ではプレスが届きにくいエリアを作り出していった。

そのプレスが届きにくいエリアが後方のサイドエリアだった。チェルシーの横に広がるSBにプレスがかかりにくい。なぜならトッテナムは3トップ。横幅をDF4人+GKでボールを動かすチェルシーに3人でプレスに出るトッテナムのプレスが間に合わなくなるのはイメージしやすいかと。そしてトッテナムの3トップは中央を閉まる意識が非常高い事で、より横幅をとるチェルシーのSBがフリーになりやすかった。
そこで生じたプレスのずれからチェルシーがボールを前進していった。SBが運ぶドリブルで前進したり、フリーになるチェルシーのSBにトッテナムの中盤がスライドしてプレスに出れば、前線のから列を降りるマウントがライン間でボールを引き受ける。
たとえトッテナムがタイミングよくプレスに出ることに成功し、GKメンディまでボールを下げさせることが出来ても、前線に待ち受けるハフェルツへの長いボールへ回避。また右ワイドに立つロフタス・チークもロングボールの起点に。高さも兼ね備える天才2人がさらにトッテナムのプレスを空転させた。

前から行ってもボールを奪えない状況をいつまでも受け入れることは当然出来ずに、ソンフンミとクルゼフスキを中盤に下げて、5-2-3→5-4-1の陣形へ押し下げられていった。
1-2.チェルシーのフィニッシュワーク
相手を押し込んだ先にやってくるのがフィニッシュワーク。それではチェルシーはどんな狙い、戦術を持ってトッテナムのゴールをこじ開けようとしたのか見ていこう。

ビルドアップで横幅をとっていたSBは大外高い位置に上がって積極的に攻撃参加。これによりロフタス・チークはインサイドへ。またビルドアップ同様に彼の高さを生かすべく積極的にクロスに合わせるアクションも見せる。
メイソン・マウントは左のハーフスペースと大外レーンを主戦場に難しいエリアで平気な顔をしてボールを引き受ける。
スターリングとハフェルツはより流動的にボールに関わる。
大外で幅をとる役割。流動的にポジションを動かす役割。ボール循環をリセットするジョルジーニョ。非常にバランスの取れた配置.役割でトッテナムを押し込んでいった。
FootBall Base マガジン|inamo|noteきっと、もっと、サッカーが面白くなる秘密基地。こっそりサッカーに詳しくなりませんか?サッカー好きが集まる秘密基地。そんなフnote.com
2.はめたプレス
チェルシーはボール保持の局面に加えて、ボール非保持の局面でもトッテナムを押し込んでいった。
後方からのビルドアップに加えて、プレッシングからのショートカウンターでチャンスを作り出した。
トッテナムはボール保持の際に3-4-2-1の配置になった。これに対してチェルシーは5-1-2-2もしくは3-1-4-2の様な配置でリスクを管理しながら前からのプレスに出た。
右のロフタス・チークがトッテナムのWBセセニョンをマーク。5バックの大外を務めるイメージ。左の大外はククレジャ。3バックはジェームズ、チアゴ・シウバ、クリバリが並んだ。
その5枚の前にアンカージョルジーニョがたち、その前にカンテとマウント。前線にはスターリングとハフェルツが配置された。
5枚の大きな皿の上に、五角形が置かれてプレスに出るイメージかと。

トッテナムのWBには大外のロフタス・チークとククレジャが積極的にアタック。
落ちるソンフンミにはジェームズがマンマーク。もう一方のIHであるクルゼフスキにはジョルジーニョがついて行き、IHの列落ちを封鎖していった。
2トップのハフェルツとスターリングは3バックの間に入ってプレスに出ながら、プレスの方向付け。
そしてこの日のチェルシーのプレッシングで一番精密さと一番運動量が求められたのがカンテとマウントだった。

トッテナムのCHをマークしつつ、方向が決まれば3バックの一角へプレスに出る。マウントはCHのコースを背中で消しながら3バックへプレスに出る振る舞いは非常に素晴らしかった。彼が1人で相手2人を見ることで、最終ラインに1人のカバーが出来た要因でもある。
見事なプレッシングがきっかけでCKをゲット。そのCKをクリバリが豪快に叩き込み先制点を奪ったチェルシー。前半終盤こそトッテナムの勢いに押されたが、前半終わってみればチェルシーがゲームを支配する展開でハーフタイムへ。
後半に入ってもそんな構図は変わらずにチェルシーが優位にゲームを進めていった。
しかしそんな状況をいつまでもコンテが許す訳もない。選手交代からそんなゲームの構造をガラッと変えていった。
トッテナムの4-4-2シフト
WBセセニョンに替えて新加入FWリシャルリソンを投入して4-4-2へシステム変更。
攻撃的な選手を前線へ投入。長いボールもより意識しながら、ビルドアップ局面で後方4枚にする事でチェルシーのプレッシングが届かないエリアを作り出し(4バックが横並びでボールを動かす事で、2トップのハフェルツ、スターリングのプレス距離を広げる)、厚みを持った前進も見られるようになった。

しかしトッテナムの前進機会は増えていったが、チェルシーの前進機会が減ったわけではなかったのでゲームはよりオープンに。
こんな状況で厚みを持って前進したトッテナムがペナ内で一度失ったボールを回収し、最後はホイビュアがミドルを叩き込み同点。
ゴールが入るとコンテがチェルシーベンチへガッツポーズ。両ベンチは一触即発な雰囲気に。ここからさらにゲーム内外でヒートアップ。
コンテのシステム変更が功を奏した形とも言えるが、こんなカオスな状態でもトゥヘルがすぐさま手をうった。
すぐさま手をうち、即決回答!
同点シーンすぐにチェルシーはジョルジーニョに変えてアスピリクエタを投入。
ロフタス・チークを中央へ移し、3-4-3へシフト。明確なWBが出来たことで、トッテナムの4バックの大外に時間とスペースが出来る構造に。4バックへシフトしたトッテナムにすぐさま5トップをぶつけたトゥヘル。

この狙いが見事に的中。右の高い位置に上がるWBのジェームズがフリーになりサイドからゴールへ迫る。
そして77’左サイドでボールを奪うとショートカウンター発動。スターリングがバイタルでボールを受けるとトッテナムの4バックが密集。そうなれば大外のジェームズがフリーになる必然。そこへ優しいパスが送り込まれ、最後はジェームズがゴール中央へボールを叩き込み再びリードしたチェルシー。
雰囲気も再びホームチームに偏り、ゲームはこのまま終わる…いやまだ終わらなかった。
トッテナムのエースが勝ち点をすくいあげた。後半ロスタイム。CKからケインがヘディングをそろしてチェルシーゴールに同点ゴールを流し込んだ。
ロンドンダービーは2-2と勝点を分けあった。
おわり
ピッチ内外で非常にエンタメ性のあったゲーム。そしてゲーム内容自体も非常にハイレベルで非常に面白かったということは忘れずお伝えした。是非見てほしいと言える90分だった。
コンテとトゥヘルのやりあい。最後のトッテナムの劇的同点弾はもちろん、私個人としては60分から77分のチェルシーの追加点までの時間帯の両指揮官の采配に本当に痺れた。
戦術的やりあい。色んな意味であんなカオスな状況でも心は冷静にピッチの状況を把握し、最適解を出した指揮官に鳥肌がたった。
新シーズンが始まってまだ2節。こんなハイレベルな戦いがこれから何試合あるの?とワクワクが止まらない。やっぱりプレミアリーグは最高だ。
2022/8/15 プレミアリーグ第2節
チェルシー 2-2 トッテナム
得点者:クリバリ.ジェームズ.ホイビュア.ケイン
FootBall Base マガジン|inamo|noteきっと、もっと、サッカーが面白くなる秘密基地。こっそりサッカーに詳しくなりませんか?サッカー好きが集まる秘密基地。そんなフnote.com
コメント