【動けるけど、動きすぎないカンテ】プレミアリーグ第30節 チェルシーvsマンチェスター・シティ

サッカー戦術分析
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チェルシーのホームである、スタンフォード・ブリッジで行われたビックゲーム。キックオフから両チームインテンシティの高いゲームでスピード感もありとても面白い90分でした。チェルシーのこの試合に掛ける思いや、しっかりとしたシティ対策を持ってゲームに挑んだ姿を見せつけてくれました。シティは再開後取り組む、「ニュープレス」に新たな課題がでたゲームでもありました。

そして、シティの結果次第でりリヴァプールのプレミアリーグ優勝も決まる一戦でした。

それではどんなゲームだったのか紐解いていきたいと思います!

しっかり設計されたチェルシーの守備網

ホームのチェルシーはシティにある程度ボールを保持されることは想定済みで、それを踏まえた上で自陣に中央を圧縮した守備組織を形成した。

チェルシーのボール非保持のシステムは4-1-4-1となり、時には4-5-1となった。この試合アンカーに入ったカンテの位置どりに応じて中盤の形成が少し変化した。

チーム全体として中央を圧縮してシティの縦への推進力をダウンさせる。ボールをサイドに誘導して、そこでボールを奪う狙いがあった。アンカーのロドリにはCFのジルーに見させて、シティのCBにはある程度ボールを持たせていた。シティの攻撃のキーである両IHにはバークリーとマウントがしっかりと監視、アンカーのカンテは誰かにマークをつく訳ではなく、バイタルエリアを埋める役割と、その時に応じてチームメイトのカバーに入る役割を担っていた。

チェルシーの思惑通り、シティの攻撃をペースダウンさせていった。シティは縦方向のパスを入れられず、チェルシーのブロックの外へボールを誘導させられていった。

それでもシティも「中央や縦パスを入れられなければ、幅を使って攻め込むよ!」と大きな展開で幅を使っていく。シティの特徴の一つである、大外にボールを入れて相手のSBを釣り出してハーフスペースを開けて、チェンネル(SBとCBの間のスペース)を利用した攻撃を狙うシーンも増えていく。

右サイドはマフレズ。左サイドはメンディとスターリングがハーフスペースを開けさせる幅をとったが、シティのハーフスペース侵入の狙いもチェルシーはしっかり対策をしてきた。

カンテのPermuta(ペルムータ)

Permuta(ペルムータ)とはスペイン語のサッカー用語である。Permutaが意味するのは「カバーリングをした選手のカバー」という意味がある。カンテはボール非保持においてPermuta(ペルムータ)の役割を与えられていた。

シティの幅を使ったチェンネルを開けてハーフスペース侵略の対策としてチェルシーは釣り出されるSBの開けたスペースにボールサイドのCBがカバーに入り、そのカバーに入ったCBのスペースをアンカーのカンテが一枚下がって埋める戦術で対策をした。この対策が見事にハマり、ワイドからハーフスペースへ侵入するシティの得意技は防がれ、攻撃の一手を防ぐことに成功していった。カンテのPermuta(ペルムータ)の動きがカバーに入るCBに迷いを無くし、安心を与え、結果としてシティの攻撃停滞に成功した。

この試合のカンテは攻守両面でキーマンとなっていた。カンテがアンカーとして出場している試合は久しぶり。この試合は動きすぎずに、要所要所で持ち前の運動量と機動力を活かして託されたタスクをほぼノーミスでこなしていった。

ベルナルドの最前線

シティの攻撃を停滞させていったチェルシーだったが、シティもビルドアップではほとんどミスがなく、チェルシー陣内でボールを握る時間帯が増えていった。

この試合、前節で怪我をしてしまったアグエロは当然のことながら欠場。ジェズスはベンチスタートで、最前にはベルナルドが入った。

ビルドアップに人をかけすぎた?

先ほど述べた通り、チェルシーの準備された守備組織に攻撃のスピードダウンをさせられたシティ。糸口を見出そうといろんなアクションを起こしていった。その一つがベルナルドが偽9番のような動きで最前線から中盤に落ちてボールを引き出す。それにより数的優位を作り出し前進するシーンも。しかし、最前線の選手がボールを受けに落ちれば、ゴール前の厚みは薄れてしまう。ベルナルドが落ちた時にワイドの選手が斜めにランニングする動きや、クロスに対して中に入る動きがあればゴール前の厚みを保てるが、その動きも少なく、ゴール前の怖さは少なかった。

メンディのいいクロスもファーサイドまで流れるシーンもあったりと、ビルドアップの段階でベルナルドも下がることで、少し人をかけすぎて、ゴール前の厚みが薄れてしまったのは改善が必要だったかもしれない。

ベルナルドが前のめりすぎた?

シティは再開後チャレンジしているボール非保持での「ニュープレス」をこの試合でも試みていた。WGのスターリングとマフレズはSBのコースを切りながらCBへプレスにいく。最前線に入ったベルナルドは一列下がってCBの中盤へのパスコースを遮断するプレスだ。今節は最前線に入ったベルナルドがCBへ前のみり気味にプレスに行きすぎてしまった感があった。

ベルナルドがCBへプレスに行くとチェルシーのアンカーを務めるカンテがフリーになる。そこに対してもシティはアンカーのロドリがポジションを押し上げてカンテにマークにいく約束だったはずだ。そこが上手く連動してロドリが前に行き、プレスの圧力を高めてチェルシーのボールを奪うシーンもあったが、それが間に合わずにカンテにボールを当てられて前進されるシーンも多かった。またチェルシーの最前線には大きなジルーがおりそれが気になりロドリも前に出ることに対して躊躇することもあったかもしれない。実際前のめりになったシティのプレスに対してチェルシーはジルーに長いボールを入れて前進したシーンもあった。

そういうことも踏まえるといつ最前線のベルナルドがCBにプレスに行くのか?タイミングをチームとして出すのかは重要だと感じた。ベルナルドのプレスタイミングで行くならばロドリの押し上げはもっと早くすべきだったし、それが間に合わなければベルナルドはもう少しカンテを監視してチェルシーのCBにボールを持たせる選択が必要だったと思う。

これはシティの「ニュープレス」の新たな課題かもしれない。

もったいないシティ

それでもシティはしっかりボールを握って、主導権を握りながらゲームを進めていったが、自分たちの連携ミスからプリシッチにボールを奪われ、ハーフラインからドリブルを仕掛けられ、そのまま先制点を返上してしまった。このレベルで小さなミスの重なりは確実に仕留められる。プリシッチの速さは脅威だったが、シティの選手たちが自ら招いてしまったミスなのが極めてもったいなかった。本当に初歩的なミスであっただけに悔やまれる。

チェルシーのカウンターの切れ味は鋭かった。両ワイドのプリシッチとウィリアンはコンディションも良さげで、早い速い。ウィリアンは移籍の噂も出ているようだが、まだまだキレキレな選手なだけに本当に放出しちゃうの?と疑問も浮かぶほど。

後半はよりオープンに

後半に入ってもシティがボールを握る展開に。後半9分シティはゴール前でFKを得るとそのFKをデ・ブライネがスーパーフーキックで同点弾。縦回転に落ちるボールでチェルシーゴールに突き刺した。ここからよりスピードアップ、よりオープンな展開へと。

より前のめりになるシティ

デ・ブライネの同点FKが決まってすぐに2人の選手をピッチに送り込む。ベルナルドとジェズスを変えて、ロドリに変えてシルバを投入。ジェズスは最前線に入り、シルバIHに入り、ギュンドアンが一列下がってアンカーの位置へ。この交代により、チェルシーへプレスを明確に前に示す形に。ロドリよりも機動力があるギュンドアンはカンテまでボールにはっきり出るように。そして最前線に入ったジェズスはCBへ明確にプレスに行かせてよりチームとして前のめりにさせて逆転ゴールを奪いに畳み掛けに行く。

SBのメンディに変えてジンチェンコを投入し、また違うアクセントを加える。メンディは大外からの力強い突破やクロスが得意だが、ジンチェンコはまた違うタイプ。インサイドでボールを受けたり、ライン間へ斜めのボールを供給したりできる。チェルシーにまた違った選択を迫らせて、攻撃にアクセントを加える狙いがあったかもしれない。

前のめりを逆手に

チェルシーもシティの前がかりになっていく様子をただ見ているだけではない。最前線のジルーに変えてエイブラハムを投入。よりスピードと独断での突破が得意な選手にチェンジ。前のめりになるシティの裏のスペースを利用する意図もあったかもしれないし、違ったタイプの選手を最前線に投入した。エイブラハムは左サイドでプリシッチとのコンビで突破を見せるシーンも。プリシッチが裏を一気に抜けてGKを交わしてシュートもここは惜しくもカイル・ウォーカーのスーパークリアに阻まれる。

しかし、76分ウィリアンが自陣からスピードを活かして一気にシティゴール前まで侵入しクロス。最後はフェルナンジーニョがハンドをしてしまいPK返上プラス退場の展開に。ウィリアンがしっかり決め切り再びリードを広げたチェルシー。前のめりになるシティを逆手にとって、スピードを活かす攻撃で追加点を奪ったチェルシーであり、ランパードの見事な采配がマッチした。

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一人少なくもなってしまったシティは万事休す。この退場の前にラポルトを下げたことで新たばCBを入れられなかったペップは、ウォーカーをCBにスターリングを右SBの苦肉の策で残りの時間を迎えることに。チェルシーはしっかりリードを守りながら、ゆっくりゲームを運んでいく。

試合はこのまま動かずビックゲームはホールもチェルシーが勝ち点3を奪い去った。

終わり

チェルシーのこの試合に対する思いや、しっかり設計されたゲーム運びはお見事でした。カンテのアンカーとしての存在感がさすが。彼の良さを最大限に活かすポジションはどこなのか?ジョルジーニョも帰ってきたチェルシーにとっては色んな中盤の編成ができるのは非常にポジティブな要素になるでしょう。そしてチェルシーの前線のキレキレ具合。早くて速い。カウンターの破壊力は凄まじかったですね。

シティは負けてしまったものの、決して悪い内容ではなかった。デ・ブライネの同点弾すぐにカウンターからスターリングがポストを叩くシーンもあり、逆転をするチャンスもあった。またチャレンジしている「ニュープレス」も毎回課題は出るものの、トライ&エラーを繰り返し、完成度をあげていっている感じに伺える。ビルドアップの豊富さ、精度も高まってきていてポジティブな要素も多い。だからこそ、今節のチェルシーに決められたようなミスはもったいないし、決してやってはいけないプレーだった。

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そしてこの試合結果を受けて、リヴァプールのプレミアリーグの優勝が決まった。まだシーズンは終わってないが、今シーズンのリヴァプールのプレミアリーグでの戦いぶりは本当に本当に強かった。

優勝は決まってしまったものの、シティはリヴァプールとの戦いがまだ残っている。そのゲームはお互いのプライドを前面に出して欲しい。世界最高峰の試合を見せてくれることをサッカーファンとしては楽しみにしています。

リバプール、優勝おめでとう!

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