【スカイブルーの意地と覚悟】プレミアリーグ第31節 マンチェスター・シティvsリヴァプール

サッカー戦術分析
この記事は約13分で読めます。

前節チェルシーに破れたシティ。それによりリヴァプールのプレミアリーグが決まった。今期のプレミアでのリヴァプールの強さは際立っていた。速攻でも遅攻でも戦えるチームに変貌を遂げていったレッズ。圧倒的な強さでプレミアを制した。本当におめでとうございますと賞賛を贈りたいと思います。

Embed from Getty Images

そんな中おとずれたこのビックゲーム。いきなりの新旧プレミアリーグ王者対決。

リヴァプールは新プレミア王者としての誇りと意地を

シティは前プレミア王者の意地と新たな挑戦者としての覚悟を

示すまさに世界最高レベルの90分だった!

シティのビルドアップ

シティは前節から選手と配置も入れ替えてきた。4-3-3ではなく、4-2-3-1のシステムに。対する王者リバプールは今いる現状のフルメンバーをぶつけてきてくれた。本当にサッカーファンとしても嬉しいかぎり。ゲームが始まる前からお互い何も言わずに真っ向勝負しようじゃないか!というような雰囲気が両チームから漂っていた。

このカードで毎回注目されるのはシティがどうやって自陣から敵陣に侵入するのか?リヴァプールは逆にどう敵陣でボールを刈り取るのか?という攻防はもはや恒例になっていると言っていいのではないだろうか。

シティのビルドアップを中心に、リヴァプールのボール非保持の戦術を紐解いていこう。

中央を経由するビルドアップ

Embed from Getty Images

シティは中盤のそこにアンカーを置くシステムではなく、2人の選手を中盤の底に並べる4-2-3-1のシステムでゲームに入った。リバポのハイプレスを中盤を経由して、中央を使って剥がすぞ!というペップのメッセージがひしひしと感じたが、予想通り後方からショートパスを織り交ぜながら、中央の2CH選手(ロドリとギュンドアン)を経由してリバポのハイプレスを剥がす試みを何回もチャレンジしていた。

一度中央を経由する狙いとして、リバポの前線と中盤を中に集めたかったからと推測する。リバポの3トップの両ワイドのサラーとマネはシティのSBの選手のコースを切りながらCBへプレスにいき(カバーシャドウ)、フィルミーノはシティの中盤の選手のコースを切りながら徐々にCBへ圧力をかけにいく戦術はもうお馴染みだ。シティはこの強力なファーストプレスをどう剥がしていったのか?

ファーストプレスを剥がして外へ

そこでシティは一つ目の対策として両SB(メンディとウォーカー)を高い位置に上げて、後方は2CB(ガルシアとラポルト)とGKエデルソンと2CH(ギュンドアンとロドリ)の5枚でリバポのファーストプレスをに数的優位を保ってボールを動かした。

中央の底に2枚いることで、フィルミーノが下がって見る選手が2人選手になり、どちらかのCHが開く状況になる。そうなるとロドリとギュンドアンのどちらかに頻繁にボールが入るようになりリバポのファーストプレスを剥がして前を向き、高い位置をとるSBへ前向きの状態でボールを供給していった。

シティは前向きでSBがボールを持つとリバポの背後もしくは斜めからライン間へボールを前線へ送り込んで行った。SBからライン間へのボールは比較的入りやすかった。またメンディから一本背後をとったジェズスへのスルーパスがあったり、ウォーカーから対角の鋭いサイドチェンジがデ・ブライネに入り前進するシーンもあり、シティはリバポの弱点を上手くついていった。もちろんゴール前まで行けばクロスを入れる働きも。

そうなると当然リバポは中盤3人が押し上げてシティの2CHにプレスにくる。しかし、それもシティの狙いの一つだった。

アンカー脇からの侵入

中央でロドリとギュンドアンを経由することで、リバポの中盤を釣り出していく。特にアンカー以外のヘンダーソンとワイナルドゥムを釣り出して、それによって生まれるファビーニョのアンカー脇のスペースを突いていった。スターリングが左サイドからインサイドへ絞ったり、デ・ブライネが受けたり、ジェズスが一列落ちてボールを引き出すシーンも多く、これはシティが狙っていた形だっただろう。

中央を経由するビルドアップも特徴的だったが、GKからのビルドアップ時の配置も特徴的だった。

ゴールキック時のシティの配置

シティはゴールキックになると少し配置を変えて安定感を保っていった。ゴールキックになるとエデルソンの真横にペナの中でギュンドアンが位置どり、両CBはペナの外に位置どり。デ・ブライネは一列下がってロドリと横並びになり、両SBはワイドに高い位置どりを保つ。GKエデルソンを含む後方4枚とロドリとデ・ブライネの2枚が加わる配置チェンジをして6枚の選手でゴールキックからのビルドアップを試みた。

ギュンドアンが一枚後ろに下がることで、リバポの3トップのファーストプレスに対して数的優位を作り出すことに。GKエデルソンの高いビルドアップ力があるからこそできる戦術でもある。そこで生まれた数的優位を活かして、リバポのハイプレスを剥がして前進するシーンも、またはプレスを下げさせることに成功していた。

細部にまでこだわるペップの姿勢が伺える。確かにGKからのビルドアップって難しいし、そこを奪われれば一気にピンチなる。なぜ難しいというと、ゴールキックをセットしている間に、ボール非保持の配置も整えられるからだ。準備してプレスに行けるわけだ。整った状態で受けるリバポのプレスは当然破壊力を増す。そこに対してしっかり対策を取ってきたペップシティ。非常に面白い局面であった。

シティのやめない覚悟

それでも、リバポのハイプレスはそう簡単に剥がせる完成度ではない。ファーストプレスをはがせても、中盤の選手のチェイシングでボールを奪われたり、中央を経由するためロドリとギュンドアンがボールを引っ掛けられてショートカウンターを受けるシーンも少なくなかった。

Embed from Getty Images

ピンチになるシーンもいくつか。そんな状況になってしまったら逃げたくなるはず。しかも相手はプレミア王者のリバプール。世界一のハイプレスをしてくるチーム。そんな相手に対しても今節のシティは覚悟を持って自分たちのスタイルを曲げなかった。

いくらチャレンジに失敗してもやめない。何度でもチャレンジを繰り返す。修正しなければいけない状況もあったが、自分たちが決めたリバプールに対するこの日にぶつけた戦術は絶対に曲げない。貫き通すんだという強い気持ちを感じた。

続いてはシティのボール非保持を見ていこう!

シティのボール非保持

シティは再開後チャレンジしていたニュープレス。リヴァプールの4-3-3プレスを彷彿とさせるボール非保持での立ち振る舞いを見せていたが、前節のチェルシー戦で多くの課題を突きつけられた。今回はどんなボール非保持で王者リバプールに挑むのかと一つの楽しみだったが、プレミア中断前に見せていたプレスに戻った感があった。

4-4-2の陣形とハイライン

リヴァプールが自陣でボールを保持すると、シティは4-4-2の陣形になった。デ・ブライネが一列上がってジェズスと最前線に入った。そこからガンガンリヴァプールのボールを奪いにいくわけでもなく、最終ラインのリバポの選手たちには多少の時間の猶予を与えた。時間の猶予は渡したものの、中盤やライン間といったパスコースを埋めていった。

そしてラインは高く設定し、非常なコンパクトな4-4-2のブロックを形成し、徐々にボールに圧力をかけにいった。ラインが高かったことを象徴するように、シティの最終ラインが裏を取られた時にはGKのエデルソンが自分の守るゴールマウスから大きく離れ、ペナの外まで走り果敢にボールをクリアするシーンも数回あった。

リバプールのビルドアップ

それに対してリバプールはシティの背後と、後方でのポジションチェンジでシティのゴール前へ迫っていった。

シティの高いラインの背後を突く

シティは先ほど述べたようにラインを高く設定していた。当然リバプールの快速自慢の両ワイドがシティの背後を再三取っていく。

サラーもマネも最終ラインの背後を突くのが本当に巧みだ。

この試合で印象に残ったのは、走り出す立ち位置だ。サイドいっぱいに広がった立ち位置から斜めにランニング!ではなく、CBとSBの間に立ち位置から背後を突くシーンが多かった気がした。シティのラインも高かったせいか、サラーとマネが背後を突いて決定的なシーンを作っていった。ファビーニョやファンダイクのフィードは本当に精度が高いね!

サリーで数的優位と位置的優位

アンカーのファビーニョや、中盤のワイナルドゥムが2CBの間に落ちて配置を変えて数的優位を作り出す(サリーダ・ラボルピアーナ)。それによりシティの守備の基準を撹乱させて、プレスのタイミングや、スペースを埋める時間を遅らせることに成功して前進するシーンも。

またSBもより高い位置へ。高い位置をSBが上がれると両ワイドはよりインサイドに入ることができ、前線には5人の選手が5レーンに入っている状況で位置的優位も作り出していった。

前半25分ごろまでシティがボールを6割近く握っていましたが、リバプールも前半25分から前半終了まではボール保持をする時間を高めていった。しっかりシティのプレスを受けながらもボールを動かしていき、前進をする。機を見れば長いボールでシティの背後を一気に突いていく。決定機を作り出す回数も決して少なくなかったリヴァプールだったが、スコアは前半終わる時には予想を上回る差になっていたはずだ。

人が湧き出るシティのカウンター攻撃

前半25分シティはスローインからスターリングの個人技でPKを獲得し、それをデ・ブライネがきっちり決めて先手をとった。

リバプールは先制点を許してより前のめりに。先制点を許したリバポだったが、先ほども述べたようにボールを保持する時間が長くなっていった。しかし、前に重心が掛かれば開いてしまうスペースも当然生まれる。シティは2点目と4点目を見事なカウンターで奪って見せた。リバプールが人をかけて攻め込む逆手をとってカウンターを仕掛ける。

カウンター行くぞ!となった時のチームの勢いが今日のシティは凄かった。前向きで誰かの選手がドリブルを始めると、一気にそれを追い越す複数の選手がランニングでボールに関わり始める。リバプールの選手が戻る前に、陣形が整う前に決着をつけてしまう力強いカウンターが得点シーン以外いにも多く見られた。スコアがシティに入るたびにカウンターが決まるシーンも多くなる。

リバプールの前がかりになるリスクと、マネジメントのバランスが崩れていってしまった証でもある。

シティの2つの希望

この日先発フル出場を果たした若きシティの戦士。シティの攻守の2つの希望である、フィル・フォーデンとエリック・ガルシア。

Embed from Getty Images

エリック・ガルシアは若干19歳。再開後一発目のアーセナル戦でも先発出場を果たし、このリヴァプールとのビックマッチでも先発を果たして小さな驚きを与えてくれた。しかしもはや驚きではないのかもしれない。再開後のアーセナル戦も今節のリバプール戦もガルシアが先発した試合はクリーンシートだ。今節も目立ったミスもなく、果敢に攻守ともに与えられたミッションにチャレンジしていた。将来シティの最終ラインを任せられる大きな存在になりそうな予感がどんどん出てきている。

Embed from Getty Images

そしてプレミア再開後から絶好調をキープしているシティの宝である20歳フィル・フォーデン。過密日程の影響も受けて出場機会を徐々に重ねる今、試合に出場する度に存在感をどんどん増していっている。ワイドもインサイドもこなす、前線のポジションだったらどこでもこなしてしまう頼もしさも出てきた。そして今シーズンで退団するダビド・シルバの後継者と長らくそう言われてきたが、本当にシルバが安心して退団できるほどの力を最近は示している。

若い選手の成長スピードは本当に早い。ガルシアもフォーデンも試合を重ねるごとに力を増していき、シティの力になっているのが目に見えて分かるように。これからの成長が楽しみなシティの2つの希望である。この2つだけでなく、シティのアカデミーにはまだまだ宝の宝庫だ。どんどん若い力が台頭することも楽しみである。

シティの意地と覚悟

前半3-0とリバプールを突き放して折り返したシティ。これで正直ゲームが決まった感もあったが、前半はどちらに流れが転がってもおかしくない試合展開だった。こんな大差になるのが不思議なくらい、リヴァプールのパフォーマンスも決して悪くなかった。これもまたサッカーの醍醐味というか、魅力ですね。

試合が終わってみればシティは4-0と王者リバプールに意地と覚悟を見せる戦いで勝利した。

シティは細部にまでこだわって新王者のリバプールに挑む精密さと、この試合にかける強い気持ちを本当に感じた。優勝を受け渡した悔しさと、前王者としての意地もあったのかもしれない。そしてこの試合、ペップが決めた戦術プランに対して絶対に貫き通す覚悟を選手たちからも感じられた。

何回もチャレンジが失敗してもやり続ける。世界で一番デカくて怖い相手であるリバプールに対しても決して恐れずに、ペップの決めた戦術を遂行するんだという強い気持ちが90分通して感じられた。スコアがいくら開こうが、抜かりを一切許さなかったペップ。それをまっすぐに実行するシティの選手たち。

そんな気持ちがスコアに大きな差を生み出したのかもしれない。

シティの意地と覚悟が勝負を決めたのかもしれない。

Embed from Getty Images

真っ向勝負をしてくれた両チームに大きな拍手を贈りたい。朝早いキックオフだが一気に目を覚まさせてくれる内容。本当に毎回キックオフ前には身震いを起こさせてくれる両チームのぶつかり合い。サッカーファンには本当にたまらない時間をいただけて感謝感謝。

そして改めて、何回も言うが
リバプール優勝おめでとう!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました