768本。これはマリノスがこの試合繋いだパス本数だ。どんなに苦しい状況になろうが、調子が下向きになろうが、自分たちのスタイルを曲げずに貫いたマリノス。怪我人が続出している中、ご自慢のサイドのスピードスターが不在。しかし、みんなで繋ぎきり、崩しきり、総力戦で勝ち点3を持ち帰ったマリノス。
ここ数試合、Jリーグの難敵たちに突きつけられた課題を克服するような90分でもあった。敗戦からマリノスは確かに学んでいる。そして強くなっている。後半ロスタイムのマルコスのゴールは久しぶりに痺れたぜ!
それではゲームを振り返りましょう!
ベガルタの役割分担

ベガルタはボール非保持になると役割を分担してマリノスボールを奪いにかかった。DFライン4人は背後のケアを行い、中盤より前の6人の選手でマリノスのボールを前から積極的にプレッシングしていった。このように役割を分担してマリノスのボールにアタックするプランがあったはずだ。

そしてもう一つの狙いがカウンターだ。マリノスに押し込まれた時にもただ守り凌ぐ訳ではなく、カウンターパンチを入れる狙いと準備がある前線の配置であった。最前線には長身FW長沢、両ワイドには独断突破の出来るジャーメインと西村を並べカウンター、そして大きなサイドチェンジからの突破を狙う配置になっていた。
前と後ろで明確な役割を分担したベガルタだったが、マリノスがそうさせなかった。ベガルタの役割を分断していったマリノス。
役割分断させたマリノス
マリノスはどのようにしてベガルタの役割を分断させていったのだろうか?ベガルタの後ろで待ち受けるDFライン4人と、前にでる6人間に生まれる僅かな溝(ライン間)をしっかり見つけて前進していった。

ベガルタのDFラインと中盤の間のスペース(ライン間)に天野とエジガルが中心にボールを引き出す。また喜田や扇原が一列上がってボールを引き出すシーンもあり、しっかり相手を見て、空いているスペースをチームで意識的に使うことが出来ていた。
ハマらない2CB

そしこの試合CBに入った畠中と本来本職はSBの松原のコンビからライン間を刺すボールが何度も供給されていた。ベガルタの前からくる6人のプレスを何度もひっくり返す縦パスが入る。今節の2CBは本当にハマらなかった。畠中は本調子が出てきた感じ。本職はSBの松原の配給力も素晴らしかった。48分松原から喜田への縦パスを起点に完璧な崩しも生まれた。
両CBともに自信を持って、ミスも少なく、効果的な配給からチームに安心感と推進力を与えていた。
スペースを開ける動き

長い距離を動くことでベガルタを釣り出してスペースを作り出すことも出来ていたマリノス。2CHの喜田と扇原がDFラインに落ちる(サリーダ)ことで後方に数的優位を作り出すことや、ベガルタの中盤の選手を釣り出して、ライン間に大きなスペースを開ける役割も。そしてその空いたスペースにボールを受ける選手がセットで連動して動いていた事もよかった。
このシーンもエジガルがCBを釣り出してスペースを開けさせて、長い距離を走るSBティーラトンがフリーになってフィニッシュに持ち込んだシーン。次でも述べる大外を起点にしたポケット侵入でもある。
このようにベガルタの役割分担された前プレを分断させることに成功していったマリノスはベガルタ陣内に押し込んでゲームを進める時間が増えていった。
それではそこから先、ゴールまではマリノスはどのような狙いを持って攻め込んでいったのでしょうか?
起点は大外から
ライン間にボールが入ると大外にボールを供給していったマリノス。右はWG水沼の高精度クロスを活かして、左は大外から斜めのボールを使ってポケット侵入を試みる。左右異なる形ではあるが、大外、サイドを起点にしたフィニッシュワークでゴールに迫っていった。

たとえ大外にボールが入ってもマリノス自慢のスピードスター(エリキ、仲川、遠藤は移籍)が不在の中では独断突破が中々出来ない今のマリノスの厳しい台所事象。しかし、そこは人をかけて、コンビネーションを絡ませて解決していった。複数の人が、連続してショートパスを繋ぎながらゴール前に迫っていくマリノスの戦士たち。本来のマリノスの目指すべきアタッキングフットボールの形を思い出させてくれるかのように。
大外を起点に色んな形からベガルタのゴールに迫っていった。
そして生まれた後半ロスタイムのゴール。途中から入ってきた絶対的エースマルコスが勝負を決めるゴールを叩き込む。
何か起きそうな雰囲気が漂っていたマリノス。その予想が的中したかのように、大外からティーラトンがクロスを上げて、ニアで大津が潰れてボールはマルコスの元へ。最後は気持ちこもったシュートでゴールへ叩き込んだ。久しぶりに痺れたぜ!
課題を確かな糧に
マリノスがここ数試合突きつけられた課題。それを解決した90分でもあった。「前からガンガンくるプレスに対してどうするの?」「カウンターどうするの?」「大きなサイドチェンジどうするの?」Jリーグの難敵たちに突きつけられた多くの課題を確かな糧にしていることを証明してくれた90分でもあったと感じる。
「あぁまたこのやり方ね。もう何度も同じ手は食らわないように俺たちもチャレンジしてるんだよ」「前からくるんだったらライン間と、背後が開くよね。チームとしてそこはもう痛い思いをして学んでるよ」そんなプレーが随所にあったことが成長している証だろう。
そしてこの試合繋いだ768本のパス本数。全員で繋ぎきり、勝利をもぎとった証だ。マリノスの強みであるサイドのスピードスターが不在の中、そこに頼らずしても複数の人が連続して関わり合いながらでも俺たちのアタッキングフットボールを証明出来るんだぜ!という大きな意思を本当に感じられた試合でもあった。感動した。
次節はこれまた絶好調難敵レイソル。怖いね。多分1点だけでは勝てない相手だろうな。ノーガードでガンガン殴り合おうではないか!
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