【シティは臆病だったのか?】チャンピオンズリーグRound8 マンチェスター・シティvsリヨン

サッカー戦術分析
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ラウンド16レアル・マドリード戦で勇気ある戦いぶりを見せてくれたマンチェスター・シティ。CL最強のジダンレアル相手にダブルを達成してのラウンド8。確かな自信を持ってこの戦いに挑んだはずが…サッカーって難しい。だから面白いよね!そう感じるゲームでした。対するはこちらも私好みのリヨン。昨シーズンからちらほら試合を見てましたが今シーズンどんなチームに変貌しているのかは知りません!

イタリア王者ユベントスを倒してのこの一戦。昨シーズン主力だった、エンドンベレ、フェキル、メンディが抜けたリヨン。昨年とはまるっきり違うチームになっていました!

それではゲームを振り返っていきましょう!

噛み合わせたのはシティ

シティの配置がまた特殊の形に。今シーズンリーグ、CL、カップ戦ともにあまりやらない配置でゲームに入ったシティ。CLラウンド16レアル戦とはまた違う戦い方で挑んだシティ。

試合前のスタメン発表からどんな配置?と思わせる人選。デ・ブライネの0トップかな?と思いきや後方3バックのウォーカーとカンセロをWBに置く人員となった。リヨンの配置に噛み合わせる配置を採用したペップグアルディオラ。

1発勝負の戦いを踏まえて、リヨンをリスペクトしての采配だっただろう。しかし、あまりにも相手を意識しすぎてしまったのかもしれない。

この人員、配置はシティの選手にはやりにくさすら感じなかなかリズムも出ない。逆にリヨンにとっては3-4-3で挑んできたシティは捕まえやすい配置となってしまった。

リヨンに突かれた弱点

シティはボール非保持になると前からプレスに出て行く。前からプレスにいく噛み合わせをはっきりさせる為にも3-4-3の配置にしたのかもしれない。

またカウンター対策としてリヨンのWBが前に出ることを想定してウォーカーとカンセロをWBに配置。たとえリヨンが自陣でボールを奪ってもシティが3バックの為に早いカウンターはまず打てない。ここはシティの狙いが一つのハマった形だが、シティもこの試合重心が後ろに重く、なかなか前に人をかけられずに、リヨンの5-3-2のブロックを剥がせない。両チーム自分たちのテンポを出せずに昨日行われた、バルサvsバイエルンのような非常にスリリングな、スピーディーな試合とはならなかった。

リヨンのカウンター対策の出来はまずまずといったところだったが、リヨンのビルドアップを前からのプレスで狙い通りにはめることができなかったシティ。逆にシティの前からのプレスの弱点を突きリヨンが先制点を奪う。

ハメられなかった左

ジェスス、スターリング、そしてデ・ブライネの3人が前からプレスにいくシティ。最前線のジェズスはリヨンのアンカーを消しながらプレスにいく役割を担い、左のスターリングと右のデ・ブライネは両脇の3CBへプレスに出ていく役割を担っていた。噛み合わせだけ見てみればハマっている状況だがリヨンの3CBの左の20番マルサウがワイドに開くことでシティの守備の基準を壊していく。マルサウがワイドに開くことで、左WBコルネが高位置をとる。左の高い位置にはエカンビとデパイも集まることで厚みをつくりだす。リヨンは左サイドからの前進が目立つように。

そして生まれた先制点も左サイドが起点となった。前からプレスにいくシティ。しかし左に開く3CBのマルサウを捕まえられない。彼がデ・ブライネの背後をとってボールを引き出してドリブルで前進。そして一気にシティのハイラインの裏を突くボールを厚みある左サイドへ蹴り込む。エカンビが裏でボールを引き出し一度はガルシアが防ぐもこぼれ球を左WBコルネがダイレクトでゴールを流し込み先制点を奪ったリヨン。

シティのハイライン、ハイプレスの弱点を突いたリヨンの狙い通りのゴールが生まれた。

後手後手のシティ

シティは相変わらず自分たちのペース、リズムを出せない。唯一好機を生み出しそうな雰囲気があったのは右のWBカンセロがワイドの高い位置でボールを受けた時に、ハーフスペースにスターリングがボールを引き出してリヨンのデザイヤーとの1対1に持ち込むシーンくらいだった。しかしそこもなくなってしまう。

ハメられなかったリヨンの左サイドのビルドアップ対策のために、デ・ブライネとスターリングの位置をチェンジ。よりプレス強度の高いスターリングを右に持って来ることでリヨンのビルドアップを塞ぎにいく。しかし、先ほど述べた前半唯一といっていい好機をつくり出していたカンセロからスターリングのコンビがなくなってしまうことにも。

ここでも後手に回ってしまった感があったペップシティ。

前半は全くシティらしさが出せなかった。出せなかったのか、出させてもらえなかったのか。それとも出そうとしなかったのか。

忘れかけていた自分たち

後半10分をすぎるとシティはリヨンに合わせることではなく、自分たちのスタイルを思い出すかのように人員と配置を変えていった。フェルナンジーニョに変えてマフレズを投入。4-2-3-1の配置チェンジ。

今シーズンリーグ戦で100得点を奪った攻撃的な自分たちのスタイルで同点弾を奪いにいく。そして生まれた同点弾。マフレズがインサイドに絞ってボールを受けると裏に走るスターリングにボールが入りリヨンの背後をとる。スターリングがタメをつくり、最後はデ・ブライネがマイナスのクロスを冷静に押し込み同点弾。

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今シーズンを象徴する3人から生まれたシティらしいゴールだった。複数の選手が配置を崩しながら流動的にボールに絡んでいく。裏をとる選手、ボールをとる選手。幅をとる選手、ゴール前に厚みを作る選手。唯一といっていいこの試合ペップシティらしいシーンがこのゴールに詰まっていた。

やはり4-2-3-1になったシティは水を得た魚。自分たちの親しんでいるシステムに変わっただけでらしさが出始める。これを初めからやって欲しかった…

ここから一気に逆転だ!という雰囲気が漂っていたが、リヨンは冷静だった。シティはペップの会見後のコメントもあるようにもっと上手くゲームを進めなければいけなかった。

貫き通したのはリヨンだった

シティはマフレズを投入して4バックに。その采配が上手く噛み合って同点ゴールを奪うことに成功した。しかし4バックにすることで問題も出てくる。それはリヨンの駆け上がってくるWBに手を焼くことだ。これは承知の上。しかし、リヨンも明確にそこを狙ってくる。70分リヨンは右サイドから高い位置に上がった左のWBコルネへ長いサイドチェンジが入る。右SBカイル・ウォーカーの背後をとりペナの侵入。なんとかここはウォーカーが体を入れて防ぐが、恐れていたシーンが少しづつ出てくる。

シティが4-2-3-1にシステムチェンジにすぐさま対応するベンチワークも素晴らしかったリヨン。前からプレスにいくときは4-1-4-1にチェンジし、トップ下に入るデ・ブライネもしっかり監視、ファーストプレスが剥がされればもう一度5バックとなりシティの攻撃を引き込んでカウンターを狙いにいく。

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そしてリヨンがゲームを再び動かす。CBラポルトのボールを中央で引っ掛けてショートカウンター発動。そこから一気にシティの背後をとって最後は途中交代のデンベレが押し込み追加点を奪ったリヨン。再びリードを広げたリヨンは終了間際にも追加点を奪って3-1でシティを退けて準決勝へ駒を進めた。

シティは臆病だったのか?

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CLラウンド8で敗退となってしまったマンチェスターシティ。これで今シーズンのシティの試合が終わってしまったことでもある。そしてそれはシルバのシティでの旅路の終わりを意味するホイッスルでもあった。

私はシーズン通してシティを見てきましたが、この試合はもしかしたら今シーズン一番臆病なペップシティを見たのかもしれない。相手をリスペクトしすぎたのか、相手を研究し尽くすペップの性格が裏目に出てしまったのかは分からないが、どこか自分たちのスタイルを忘れてしまったシティを見た90分のようにも感じた。

コロナの影響でCLの決勝トーナメントは一発勝負になった今シーズン。そのレギュレーションが臆病にさせたのかもしれない。もし2戦合計だったらより攻撃的にシティらしさを出したのかもしれない。また昨シーズンシティとリヨンはCLで2戦している。その時もリヨンが1勝1分とシティは勝てなかった。その印象も残ってかペップを臆病にさせたのかもしれない。

色んな要素がひしめいていたのかもしれないが、この90分は今シーズン一番「臆病なシティ」だったなと私は感じた。同点ゴールのシティの崩しは今シーズンを象徴する3人がシティらしいゴールを奪った。リヨンに3点目を奪われる前にスターリングは超がつくほどの決定機が決められなかった。それもまた今シーズンのシティを象徴するかのように。

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良い意味でも、悪い意味でもシティらしかったのかもしれない。しかし、悪い意味でのシティらしさを払拭しなければもう一度プレミアの王者には帰り咲けない。そしてCLのカップを掲げることはできないだろう。

あぁ、最高バイエルンと戦って欲しかったのは本心。あのバイエルンとどうペップシティが渡り合えるのかは世界のサッカーファンも見たかったはずだがリヨンが強かった。

しかし、リヨンの戦いぶりは戦術的にも、肉体的にも、精神的にもシティの上手だった。相変わらずリヨンは良いチーム。手強い。昨シーズンのリヨンも好きだったがまた違うリヨンが見られたのは楽しかった。

終わり

今シーズンのシティレビューはこれでおしまい。たくさんのシティの試合を見て色んなドラマを目撃し、色んな学びがありました。来シーズンも変わらずペップシティは追っていこうと思います。

そしてブログを見てくださった皆さまありがとうございました!

※Jリーグ、CLはまだ終わらないので、頑張って書こうと思いますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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