【明暗分けた18分】チャンピオンズリーグRound4 リヨンvsバイエルン・ミュンヘン

サッカー戦術分析
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バルセロナから8発を奪い、世界に衝撃を与えround4に勝ち上がってきたバイエルン。マンチェスターシティを見事に破ってきた若き才能溢れるリヨンの一戦。ゲームは試合開始から両チームのインテンシティは高かく、非常にスピーディーな前半に。変わって後半は運動量が落ちた面もあるがややスローペースに。両チームともに適材適所戦い方を変えられる柔軟さを発揮する試合にもなったが、この試合明暗を分けたのはキックオフからの18分だった。決め切りたかったリヨン。決めきってしまうバイエルン。

それでは世界最高峰の戦いを振り返っていきましょう!

背後をとるリヨン

ゲームの入りはリヨンが優勢だった。このゲームの序盤に作り出した決定機の1つでも決めきることができたら、結果はまた変わったのかもしれない。

リヨンの狙いはボールを奪ったらバイエルンのハイラインの背後を突くことだった。2トップのデパイとエカンビに加えて、WBのディボアとカクレが高い位置に上がることでサイドに優位性を作り出すことにも成功し、幾度となくバイエルンのハイラインの裏をとり、決定機を作り出した。

バイエルンはボールの失い方も悪く、カウンターを受けるシーンもあったが、リヨンの上がってくるWBを捕まえられずにいた。バイエルンは4バック。そこにWBが上がってくればサイドに優位性を与えてしまうし、SBがWBにプレスに行けば今度はチャンネル(SBとCBのスペース)が空いてしまい、そこにデパイやエカンビの2トップに背後を取られてしまうし、中盤のリヨンの宝アワールも積極的に攻撃参加してくるので非常に手を焼いていた。

18分までリヨンが圧倒的に決定機を演出していたが、決めきらないとバイエルン相手にはこうなるよなという予想が的中してしまう。

一気に形成をひっくり返してしまうバイエルンの決定力と破壊力。これがバイエルンの強さだ。

押し込むバイエルン

バイエルンはリヨンに背後を取られ続けるも自分たちのスタイルは曲げない。ハイラインはキープし、前からガンガンプレスにいくし、まずは裏へ、前への選択を選び続ける。しかし、決して闇雲に前へ前へ突き進むだけでないのがバイエルンの強さだ。後方に数的優位と個人戦術を用いて、後方で生まれた時間とスペースの貯金を出来るだけ早く前線のタレントたちにボールを渡すことでその攻撃の爆発力と鋭さは増していく。

チアゴのサリーダとアラバの「運ぶドリブル」

バイエルンはボールを保持すると中盤のチアゴが2CBの間に落ちて(サリーダ)両CBが外に開き3CBを作り出し、それに合わせてSBと前線の選手たちが配置を動かし、後方には数的優位を、前線には厚みをもたらす働きをこの試合でも担っていた。

そしてチアゴの両脇の両CBもビルドアップ能力に非常に長けている選手が揃っているのもまさに鬼に金棒だ。チアゴは長短正確なキックと、隙を見れば運ぶドリブルで前進をしてしまうし、ボアテングも配給力はお手の物。そしてこの試合ビルドアップで効いていたのがアラバの「CBからの運ぶドリブル」だった。

リヨンはチアゴのサリーダに対して中盤のカクレがチアゴをマークしに前に出て、デパイはボアテングを監視し、もう一人のトップのエカンビは高い位置をとる右SBデイヴィスのパスコースを消すために少し右寄りにポジションをとった。そうするとCBアラバがボールを持つとパスコースが限定される形に。リヨンにとってはしっかりハメられた!と思っていたかもしれないが、そうはいかないのがアラバのスキルだ。パスコースはないけど、運べるスペースがあるとすぐに把握してしまうとアラバは「運ぶドリブル」を開始。簡単に前進をしてしまう。

アラバがボールを運ぶドリブルを中央へ向かってすることでリヨンは中央に集められる。そこもしっかり頭に入っているアラバが一気にサイドにボールを展開し、味方に時間とスペースを与え、ビルドアップも完結させてしまう働きっぷり。

チアゴのサリーダは最強。ボールを奪いにいかなければドリブルで前進されるし、奪いにいけば剥がされて一気に数的優位を作られてしまう。リヨンはだんだんとバイエルンにボールを支配されていってしまい、苦しい時間が続いていった。

曖昧なポジションをとる右SBキミッヒ

バイエルンは左右でSBの立ち位置が違うことでリヨンに守備の基準を定めさせなかった狙いもあった。左SBのデイヴィスはより高い位置に上がり、リヨンのWBを下げさせて、右SHのペリシッチをインサイドに入れて中央に厚みをもたらした。反対の右SBキミッヒは上がり過ぎずに、曖昧なポジションをとる。

右SBキミッヒが曖昧なポジションをとることで、「キミッヒに誰がプレスに行くんだ?」とリヨンに迷いを与える。リヨンはボール非保持の際に中盤は3枚。中盤の選手がキミッヒにプレスに行くとしたら一番近いのは左IHのアワール。しかし、アワールがキミッヒまでマークにいってしまうと中盤に穴が空いてしまい中々前へ出れない。そうなると左WBのコルネがキミッヒにマークに出る?しかし、そうなると今度はWBが釣り出されることでリヨンの後方が4バックの状態になってしまう。

リヨンを4バックにして後方を手薄にして奪い去ったのが18分のニャブリのゴールだった。

キミッヒにボールを入れてWBのカクレとアワールに迷いを与える。キミッヒがやや内側でボールを受けるとワイドからはニャブリが、インサイドからはミュラーが背後を狙う。ミュラーがリヨンの3CBの間からランニングすること大外のニャブリをフリーにさせる働きも。そしてキミッヒから縦のロブパスを受けたニャブリが右からカットインで左足一閃!スーパーゴールが突き刺さりやや劣勢のバイエルンがゲームを動かした。

チームでリヨンの守備基準を曖昧にさせ、前線の選手たちの動き出しで、ワイドのニャブリをフリーにさせ、そこにもニャブリの質も伴った見事なゴールだった。

そして畳み掛けるバイエルン。バイエルンは畳み掛け方が上手くてエグい。またもニャブリがネットを揺らす。バイエルンが前線に曖昧なロングボールを入れるとトランジションプレスでニャブリがボールを奪い去り、左サイドを駆け上がるSBデイヴィスにパス。一気にスピードをあげたバイエルンがデイヴィスのクロスに対して雪崩れ込む。レヴァンドフスキが合わせるもGKに防がれるも、こぼれ球をニャブリが押し込み2点目。一気にリヨンを突き放した。

バイエルンが2点をリードしてハーフタイムへ。

やり方を変えるリヨン

先制点を奪ってバイエルンがより勢いづいたこともあったが、リヨンのカウンター回数が減っていってしまった。チアゴのサリーダや、アラバの運ぶドリブルで前進を止められず、そこから背後を狙い続けるバイエルンの攻撃は5バックの後方をしっかり形成しなければ先制ゴールのような結果になってしまうことを突きつけられたことで、重心が後に下がってしまった。それにより序盤見せたWBの駆け上がるシーンも減っていった。重心を下げられてしまうことでWBが上がるための距離が長くなる。また駆け上がる為の時間がより必要になるが、その僅かな時間の間によりバイエルンのハイプレスを食らってしまうことになり中々序盤みせた厚みのある背後への攻撃を防がれていってしまったリヨン。

そこでハーフタイムでやり方を変えたリヨン。ボール非保持になると5-3-2から5-4-1のブロックを敷くことで、右SBキミッヒのプレスを明確にし、中盤に一枚選手を置くことで、バイエルンの攻撃のスローダウンを試みた。アラバとチアゴのパスコースと運ぶドリブルのスペースも上手く消すことができ、スローダウンに成功した。

バイエルンはハーフタイム背後を取られた対策としてボアテングに変えて対人能力に強いズーレに交代。しかしこの交代が少し裏目にでる。ボアテングよりはスピードはあるかもしれないが、ブルドアップ力では少し劣えてしまう。リヨンはそこも見抜いてかチアゴとアラバにボールを入れさせずにズーレにボールを誘導させることでミスを誘うことに成功。中盤でボールを引っ掛けてカウンターを仕掛けチャンスを作り出すことにも成功したが、ゴールを決められなかった。残念!そこはノイヤー!というシーンも。立ちはだかるバイエルンの巨大な壁GKノイヤーにこの試合幾度となくゴールを防がれた。

そしてバイエルン仕上げのレヴァンドフスキーのゴールが試合終盤に決まり試合は決定的に。バイエルンが3-0と決勝へと駒を進めた。

終わり

リヨンの戦いはここで終わったしまたが、大いに今シーズンのチャンピオンズリーグを盛り上げてくれた。ユベントス、そしてマンチェスターシティといったビッククラブを倒し堂々のベスト4。しかし、この若き才能溢れるリヨンだが来シーズンヨーロッパの舞台には出場できない。アワールあたりはビッククラブが動かないわけはないだろう。

決勝を決めたバイエルン。3-0とスコアには大きな差があるが、決定機も作られていたのは確か。バルセロナ戦でみせた高い強度の継続性はこの試合少しダウンしたのは否めない。バイエルンの今のサッカースタイルを貫き通すにはコンディションが非常に大切だ。決勝の相手はPSG。休みが一日少ない中で戦わないければいけないがそこに大きな差が出ないかは心配材料にはなりそうだ。

さぁ、いよいよ次は決勝戦!

朝四時起き生活ももう少しで終わりそうだ!

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