【大きかった代償】Jリーグ第17節 サガン鳥栖vs横浜F・マリノス

サッカー戦術分析
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前節長い連敗から抜け出したマリノス。今節はアウェーでサガン鳥栖との一戦。プラン通りにゲームを進めていたのは鳥栖の方だったかもしれないが、スコアは?マリノスの早くて鋭い攻撃が牙を剥く。

非常にスピーディーで両チームともに攻撃的で面白い90分だった。

それではゲームを振り返っていきましょう!

戻る前に蹴りをつける

マリノスは今節も電光石火の先制点を相手にお見舞いする。開始わずか1分。左WBのティーラトンから鳥栖の背後へ斜めの長いボールが送り込まれる。そのボールにエリキが抜け出しボールをトラップ。ボールの勢い、エリキのスピードの勢いままにシュートを放つとボールはゴールに吸い込まれて先制!まさに電光石火のゴール。

この試合マリノスは鳥栖がゴール前にブロックを作る前に蹴りをつけることをいつも以上に意識していた印象。2点目も鳥栖が戻ってゴール前に陣形を整える前に蹴りをつけた。昨年の絶好調だった時のマリノスは相手の背後を突くシーンが多かった。その感じを彷彿とさせるような2得点だった。とにかく早く速く。鳥栖が帰陣する前にブラジル人トリオが蹴りをつけにいく。

そしてもう1点を加えて前半に3得点を奪ったマリノス。この3ゴール全ての起点は左WBティーラトンからの長い配給だった。

新たな武器

3ゴール全ての始まりは左WBティーラトンからの斜めの長い配給だった。1点目は鳥栖の背後へ。2点目、3点目は大きなサイドチェンジで鳥栖を揺さぶった。

相手が陣形を整える前に蹴りをつける!意味でも長い背後へのボールは非常に効果的だ。ティーラトンの正確なキックを存分に活かせる新たな形に!なって欲しい!

大きかった代償

マリノスは前半3得点を奪ってリードして前半を折り返したが、ボールは鳥栖の方が握っていた。マリノスのハイプレスを剥がされて押し込まれる時間帯も少なくなかった。自陣までマリノスは押し込まれるとWBも最終ラインまで下がり5バックとなる。これにより、重心は下がる。重心が下がってしまう事でボールへのプレス強度は下がり、鳥栖にボールを振られてしまうシーンも。しかし、鳥栖はマリノスを押し込んで前のめりになればなるほど、人をかけて厚みを持って攻め込めるが、リスクも一緒に背負う事に。そのリスクの代償を鳥栖は払う事になってしまった。

鳥栖が前のめりで攻め込んで、人をかけるほどに、自陣のエリアにはスペースが。背後や、ライン間のスペースをマリノスに渡す事に。今のマリノスの攻撃陣にとってそんな状況は大得意。前線に、背後にスペースがあればあるほどその攻撃力、得点力は増していく。スペースがあれば一人でシュートまで持ち込めてしまう「質」をもつブラジル人トリオが鳥栖に牙を向いた。

前半は鳥栖の方がゲームをコントロールしていた印象だったが、スコアは3-1とマリノスリードで折り返す事に。狙い通りに攻め込めるシーンも鳥栖は多かったが、それに伴うリスクをマリノスが上手く突けた前半だった。

鳥栖のビルドアップ

前半リードをしたマリノスだったが、鳥栖のビルドアップには手を焼き続けた。鳥栖はマリノスのハイプレスに対しても臆する事なく、自分たちの狙うエリアへボールを動かし運んでいった。一つの特徴は配置を可変させる事だった。それも左右非対称に配置を動かす事で、マリノスの守備の基準を撹乱させていった。

左と右では違う可変を行うことでマリノスを迷わせる。左はSBが少し内側に、SHは大外に張る。右はSBが高い位置まで上がり、めい一杯外に開き、SHの選手がインサイドに絞る。そして2トップの一角が一列下がって、右SHと共にハーフスペースでボールを引き出す。これによりマリノスの守備基準は定まらなくなり、5バックを形成させ、重心を下げさせる事に成功した鳥栖であった。

ビルドアップは中央から

お次は鳥栖のボール非保持での振る舞い。鳥栖はマリノスのビルドアップに対して前からプレスをかけにいった。しかし、配置の噛み合わせを考えても鳥栖の前プレはマリノスを苦しめるものではなかった。マリノスがビルドアップで起点にするエリアを間違わなければ…の話だが。前半の失点シーンはまさに鳥栖の狙っていたエリアにボールを運んだ?誘導?されて失った1点だった。

配置の噛み合わせ上、マリノスの中央の選手には時間とスペースが与えられた。対する鳥栖は中央にボールを入れさせずに、サイドでボール奪う狙いを持っていた。

2シャドーにマルコスとエリキがいる事で、鳥栖の2CHはマリノスの中盤2枚へプレスに出にくくなる状況に。2CHが前に出てプレスに出ればエリキとマルコスがフリーになってしまう。プレスに出なければマリノスの2CHがフリーになってしまう。中盤の選手への守備の基準点はなかなか定まらなかった鳥栖。

この試合、マリノスは中央を経由したビルドアップはほとんど失敗しなかった。中央の数的優位、数的優位で生み出されるズレをしっかり活かせた証だ。しかし、唯一中央を使わずにビルドアップを試みたシーンが前半の失点シーンだった。まんまと鳥栖が企むサイドではめる策にハマったマリノス。マリノスからしたら勿体無かった。鳥栖からしてみれば思惑通りだっただろう。

握られたのか?握らせたのか?

この試合の支配率は1試合通して鳥栖の方が高かった。この数字はマリノスの試合をよく見る人からみれば珍しいと思うだろう。

鳥栖の前のめりの可変システムによりマリノスは5バックにさせられて後ろに重心が重くなる事でボールへプレスに行けずに鳥栖にボールを握られる展開となった前半。しかし、今のマリノスは重心が後ろにかかればかかるほどに、前線のタレントたちが活きる状況が増していく。案の定前半カウンターを起点に複数のチャンス、得点を奪い去って見せた。

ここで一つ考えたいのが、鳥栖にボールを握られたのか?それとも意図的に握らせて引き込んだ?のかという事だ。鳥栖が前のめりにきて押し込む戦術をとってきたからカウンターから得点を奪えたのか?それともわざと押し込ませて、引き込ませてカウンターを仕掛けたのかは今後の試合を観察しなければ分からない事かもしれない。

しかし、マリノスは相手の背後に大きなスペースがある状況は大好物だ。逆にゴール前にバスを置かれて、ゴール前に時間とスペースがない状態を作られてしまうと手詰まり、攻撃力が下がってしまう課題がある。この課題は克服するためにチャレンジをし続けるとともに、わざと相手に押し込ませて、引き込んでカウンターを仕掛けるパターンが意図的に生み出せればマリノスの攻撃の破壊力はさらに増すだろう。

終わり

前半から鳥栖の可変システム、前のめりの攻撃に苦しめられたマリノス。プラン通りに試合を優位に運べていたのは鳥栖だったのかもしれないが、その前のめりさがマリノスにとっては逆に好機となったような試合だった。サッカーて不思議なスポーツだよね。だから面白いんだよねとサッカーの深みをまた感じることができた90分でもあった。

マリノスはこれで2連勝。暗いトンネルから抜けられたのか?は分からないが、確かな一歩を歩み成長している姿を毎試合見せてくれているのは間違いない。そこがマリノスの一番面白いところなんだよね。

さぁ次節もどんな進化した姿を見せてくれるのか楽しみだ!

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