開幕から無傷の4連勝で絶好調のホームエヴァートン。対する王者リヴァプールは前節まさかの7失点の大敗。しっかり前節の反省を活かすことはできたのだろうか?熱い熱いマージーサイドダービの開幕です!
手前に落とすボール
試合開始直後からリバプールがエバートンへ問題を突きつける。CBファンダイクからサラーへ長いボールが入り一気にゴール前まで攻め込むシーンが。このシーンはこの一本だけでなく、何度もリヴァプールが狙っていたシーンだ。
両WGのサラーとマネがサイドに張った時には彼らの身体の前に長いボールが入るように意図的に狙っていたリヴァプール。エヴァートンのSBがヘディング出来ない長さと高さのボールを両ワイドへ送り込む。後方から配給できるスキルと、それを収められるサラーとマネのスキルがマッチするリヴァプールらしい前進をしていく。サラーもマネも長いボールを収めるのは巧いんだよねぇ。

またエヴァートンのサイドに張るハメス・ロドリゲスとリシャルリソンの両ワイドの選手たちは前に出る意識は強いが後ろに下がる意識は少し低くて苦手なタイプの選手だ。そうなると必然的にエヴァートンのSBの前のスペースが開くのでそこへ長いボールを送り込もう!というリヴァプールの狙いに繋がるような気がする。
その対応にいきなり追われるエヴァートン。ハメスとリシャルリソンにしっかり戻るように指示するのか?しかしそうしたらズルズルと重心が後ろに下がってしまい中々反撃の狼煙を上げることが難しくなってしまうし。そんなことを考えている暇さえリヴァプールに与えてもらえずに開始3分で失点を許してしまったエヴァートン。ガードを構える前に強烈な先制パンチをリヴァプールにお見舞いされてしまった。
どうしても生まれるズレ
攻撃的な前のめりのハメスとリシャルリソンが、どうしても開けてしまうエリアをカバーする準備をしっかり備えているのがここまでのエヴァートンの絶好調の要因の一つだろう。ハメスとリシャルリソンにより攻撃面を重心させる為に中盤にはドゥクレ、アラン、A・ゴメスといった運動量豊富で広範囲のエリアをカバーできる3人の選手を並べている。彼ら3人は走ることを惜しまず、ボールにアタックしたり、自陣に戻ったり、横へのスライドを決して怠らない献身ぶりをこの試合でも見せた。しかし、それでもどうしてもズレが生じてしまうシーンがある。リヴァプールの早くて大きな展開によってどうしてもスライドが間に合わずにカバーが出来ないシーンが生まれてしまう。そうなってしまうとエヴァートンはピンチを招いてしまう。

この試合リヴァプールに奪われた2失点ともに、スライドが間に合わずに、アンカーのアランの脇を起点にされてしまった。彼らの広範囲を補える守備力で守れているシーンもあるが、リヴァプールのポジションチェンジや大きな長いボールによってズレを作られ、シュートまで持ち込まれるシーンも少なくなかった。
しかし、これもより攻撃力をあげる為の代償だ。特にハメスにより前向きに、自由に、攻撃をさせる為に、無理が効く選手が中盤に並べられているのが今シーズンのアンチェロッティ監督のエヴァートンの特徴の一つではないだろうか。
ハメスに自由を!
今のチームスタイルでどうしても生まれてしまうズレをリヴァプールに突かれてしまい2失点をしてしまったエヴァートン。言い方を変えればリヴァプールの狙い通りだった。しかし、エヴァートンも王者相手に引くことなく2度のビハインドを追いつくゴールを奪い、大いにマージーサイドダービを盛り上げてくれた。そこの起点の中心には輝きを取り戻しつつあるハメス・ロドリゲスがいた。守備の面では前述した通り少し難があるかもしれないが、それ以上に彼の持っている攻撃的なセンスとスキルがここまでのエヴァートンの快進撃の一つの要因になっているのは間違いないだろう。
Embed from Getty Imagesポジションは右のWG。中央よりもボールをフリーで受けやすい位置を与えられている。そして彼が落ちてボールを引き出せば労を惜しまず、右サイドの相棒であるドゥクレが前へランニングすることで相手を引きてハメスをフリーにさせたり、彼のパスコースへとなる。また彼が開けてしまった後ろのスペースをドゥクレがカバーする役割も。彼の持ち前の強靭な肉体と強さでボールを奪えばすぐさまハメスへボールを渡す。
または最前線で待つ絶好調男カルヴァート ルイン目掛けてGKピックフォードから長いボールがいくつも放たれる。カルヴァート ルインがキープしてハメスが前向きになったり、そのこぼれ球を拾ってハメスが前向きになるシーンも。
ハメスに多くのボールを与え、より前向きでプレーさせる為にチームとして設計がなされ、それを遂行するエヴァートンの選手たち。そしてその期待にしっかり応えるかのようにハメスの左足からは幾度の決定機が演出されていく。一つはCKからのアシスト。もう一つはサイドへの優しい縦パスでアシストのアシスト。2つのゴールを演出したハメス・ロドリゲス。
日本代表がW杯でコロンビア代表と対戦した時にハメスにちんちんにされたプレーを思い出させるかのように、あの時の輝きを取り戻しつつあるハメスが見られたのが一人のサッカーファンとして嬉しかった。
キャップとチアゴ
この試合ハメス以外に個別でいい働きをしているなと思った選手をあげるのであれば、レッズのキャップと新加入のチアゴだった。エヴァートンの絶好調男カルヴァート ルインも規格外のプレーで印象深かった。
まずはレッズのキャップであるヘンダーソンはこの試合効いていた。守備面で激しいプレスはいつも通り、それ以上にインサイドからサイドに流れる動きがエヴァートンの守備の基準をずらし、壊していく。

右WGのサラーがインサイドに入るとそれに合わせてヘンダーソンはハーフスペースから斜めのランニングでエヴァートンの背後へ侵入していく。また裏に抜けるだけでなく、サイドに張るシーンも。右SBアーノルドがオーバーラップすればインサイドに。後ろでCBからボールを引き出せばエヴァートンのSBの前にポジションをとりさらにエヴァートンの守備の基準を撹乱させることに成功していた。
リヴァプールの右サイドはサラーとアーノルドの独断突破に加えて、ヘンダーソンのお陰で流動性も生まれエヴァートンは中々ボールへアタックできない。そしてそれはしっかり得点という形に。リバプールが奪った2点ともに右サイドが起点に生まれた。
そしてもう一人。チアゴが初のプレミアリーグスタメン出場!ファビーニョ、ヘンダーソンとの中盤のコンビは少しぎこちなく、窮屈さも否めなかったが、チアゴの存在感は相変わらず抜群だった。後半に入るとお得意のトラップで相手を交わすシーンや、綺麗で早い配給をサイドへ散らしていく。巧い!と言葉を漏らしてしまうシーンが盛りだくさん。やっぱりチアゴには早くボールに触れて欲しいと思える選手だ!
おわり
白熱のマージサイドダービーは2-2の痛み分けで終了。王者に2度のリードを許すも、2度追いついたエヴァートン。ゲームを大いに盛り上げてくれた。エヴァートンの好調の意味と、隠れた課題の両面が見れた面白いゲームでもあった。エヴァートンの快進撃はまだまだ続きそうだ。そのキーマンはハメスであり、それを影で支える中盤3人の働きは欠かせないはずだ。
リヴァプールはこの試合試合早々にDFの絶対的な要であるファンダイクを負傷で失ってしまった。もしかすると長期離脱になってしまう報道も。GKアリソンに加え、ファンダイクも離脱となってしまえば非常に痛手。王者に更なる試練が。そしてこの苦難をリヴァプールがどんな戦いをし、どう乗り越えていくのかは非常に興味深い。
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