タイトル通り、両チームともにどこかリスクをかけずに、バランス重視。睨み合いをして終わったような90分でした。ゴールも生まれずにスコアレスドローで、この伝統のダービーマッチは幕を閉じた。退屈なゲームだったかもしれませんが、見方を変えれば、非常に緊張感ある、集中力高いゲームでだった。渋い味のあるゲーム。
それでは、簡単ではありますがゲームの振り返りをしていきます。

右へ誘導するユナイデット
ユナイデットはシティが自陣でボールを持つと、2トップ+ブルーノフェルナンデスの3人が積極的に前からプレッシャーをかけにいく。この3人で、シティの最終ライン+GKへとプレスをかけにいく。ここでこの試合のユナイデットのプレッシングの狙いの一つが見える。意識としてユナイデットの右サイドへ、シティの左サイドへボールを誘導してプレッシングをかけにいくことだ。ユナイデットは左サイドを蓋をしながら、右へとボールを誘導していく。なぜ、右サイドへ誘導していくかというと、シティの左CBディアスと、左SBカンセロが共に右利きということも関係していたかもしれない。

右利きの選手が、右からの横パスを受ける時、ファーストタッチはどこに置くでしょうか?また体の向きはどうでしょうか?この時、ユナイデットのプレスはボールと同じ方向からプレスにくると、またボールの置き所が限定されます。
右からのパスを、右から相手のプレスがきている状態で、右利きがボールを触ることを少し想像してみてください。きっと窮屈になるはずです。右足にファーストタッチを置けば右からプレスにくる相手のプレスを食らってしまいます。それでしたら左足にボールを置いてスムーズにボールを蹴り分けられれば問題ありませんが、左利きほどスムーズにいきません。右足ではもっと良いボールを前線に蹴れる状況が、利き足とは逆足で蹴れば当然キックの精度は落ちます。

そこも踏まえてか、ユナイデットは左から蓋をして右へプレスをかけることで、シティの選手に逆足でプレーさせる誘導をしたとも言える。それにより、ディアスやカンセロがトラップからボールをリリースするまでの時間が長くなり、プレスをかけられる時間を作ったり、利き足ではない逆足でプレーさせることで精度の落ちた、彼らからリリースされたボールを奪う狙いがあった。
それでも、カンセロ、ディアスがビシッち中盤にボールをつけるシーンもあったのは流石👏
また、誘導した右サイドには、右SBのワンビサカがシティの左SBカンセロまでプレスにいき、左WGのスターリングには右CBリンデルフがボールに出る、非常にアグレッシブでかつリスクをかけたプレスで圧力をかけにいった。
それでもユナイデットの右誘導のプレスで前への前進を妨げられてしまうシーンも少なくなかったシティだが、致命的なミスはおかさずに、ユナイデットの狙っていたショートカウンターは決まらずに睨み合いは続く。
開くギャップ
ユナイデットは積極的に前からプレスにいく。この時右SBワンビサカや右SBリンデルフも前へ行くシーンもあるので、当然開くスペースが。そこにデ・ブライネが上手く顔を出してボールを引き出すシーンも。ライン間や、中盤3人のギャップに上手くデ・ブライネが顔を出してボールを引き出し、前進する。

緊迫していたこのダービーに置いてデ・ブライネが前を向いてプレーする回数はそんなに多くなかったが、やっぱり彼が前向きでボールを持つと、何かかが起こりそうな雰囲気は漂っていた。前半の序盤からそのパス通っていればというシーンも少なくなかっただけに、1本でも通っていれば結果は変わったかもしれない。
鍔迫り合い
ユナイデットが積極的にボールにプレスに行く展開から、段々と今度はユナイデット陣内でシティがボールにアタックするシーンが増えていった。ユナイデットはGKデヘアからショートパスを繋いでビルドアップを試みる。シティはボール非保持になると4-4-2の陣形で、ボールに出ていく。GKからCBへボールが入ると、ジェズスとデ・ブライネが中央のギャップを締めながらプレスに出る。それに合わせて、両サイドのスターリングやマフレズ、2CHのロドリとフェルナンジーニョが連動してユナイデットのビルドアップに襲いかかっていく。

このプレスにより、シティがユナイデットのビルドアップミスを誘発させてボールを奪い、一気にショートカウンター!というシーンもあったが、最後の精度がこの試合はどうしても足りない。
ユナイデットも、シティにボールを何度か奪われる状況になっても、後方からのショートパスでの前進をやめない。ブルーノが落ちてボールを引き出してたり、ポグバの持ち前のキープ力でプレスを剥がして前進するシーンも。
そしてシティがビルドアップ時に一番手を焼いていた選手はブルーノでもポグバでもなく、マクトミネだった。ビルドアップ時右にボールが運ばれると、マクトミネが落ちてビルドアップのお助けに回る。

彼のマークに誰がいくのか?シティは悩まされる。スターリングはSBワンビサカにマークにいくし、ジェズスはリンデルフにプレス。そうなると中盤のロドリかフェルナンジーニョのどちらか1枚がマクトミネへプレスに出る。しかし、そうなると今度は中盤が手薄になる。トップ下のブルーノ、もしくはフレッジやポグバがフリーになってしまい、最終ラインから一つ飛ばすパスでユナイデットがシティのファーストプレスを剥がすシーンもあった。
ここの鍔迫り合いは緊迫感あり、非常に見応えはあったが、両チームともに、大きなチャンスには結びつけられなかった。奪えばシティがチャンス、剥がせばユナイデットがチャンスという一歩手前でこの試合の両チームはギアも精度も今一つ足らなかった。
幅をとった先
シティが後半終盤になるとユナイデット陣内でボールを動かす時間帯が多くなる。試合経過とともに停滞した攻撃陣のテコ入れの為に、ペップはマフレズに変えてF・トーレスを送り込む。トーレスが入ったことで、左右ともにユナイデットのペナルティ角で幅を取れるようになっていく。

しかし、そこから先がなかった。右はF・トーレス、左はスターリングやカンセロの独断突破に頼る形に。ユナイデットのSBワンビサカもショーも非常に対人は強いので、シティも独断での突破を何度も止められてしまい、決定機を作り出せなかった。
独断突破で勝てる力をつけるのはもちろんだが、もう少し、グループでの崩しは見たかった。ペップシティの題名しても言える、サイドからのチャンネルランも、試合終盤に横の幅も取れていたからこそ、そんなシーンがあっても良かったが、この日はトップ下にはデ・ブライネだけだったので、難しかったかもしれない。2CHではなく2IHの布陣だったらそんなシティらしい崩しももっと見られたかもしれないが、2CHの布陣のお陰でカウンター回数を減少できたとも言える。そういうことを踏まえたら、より個のスキルを上げるのか、セットプレーで取れるようにするのか、他の崩し方で得点を奪いにいくのかの探索は、これからのペップシティの課題の一つではないだろうか。
ファイナルサードのパワーと精度
Embed from Getty Imagesシティのゴール前の崩しも、ユナイデットのカウンターも、いつもよりも切れ味はなかった。この過密日程でやっぱり疲れているのかな?と思うほどに、相手ゴールに近づくほど、パワーと精度は薄れていった印象。ゴール前の迫力が足らなかった事に対して色んな要因が考えられるが、それ以上に両チームの最終ラインの集中力は最後まで素晴らしかった。試合終盤のユナイデットの最終ラインはシティにペナへの侵入、サイドの1vs1の攻防が多くなる中で、パーフェクトな対応をしていた。またシティのDF陣もしっかり失点を0に抑え、これでチャンピオンズリーグの試合を合わせて、5試合連続のクリーンシートを達成。攻撃がもう一つではあったが、守備の安定感は素晴らしかった。両チームのゴール前の集中力、DF陣のハイパフォーマンスがこのダービーマッチをオープンな展開にさせずに、渋い、睨み合う90分にさせたといってもいいだろう。
おわり
シティのリーグ戦での連勝は2で止まってしまったが、3試合負けなしと、着実に勝ち点を積み上げている。今シーズン、大混戦のプレミアリーグに置いて、負けないことが非常に重要になっている。負けることで勝ち点が積み上げられないのはもちろん、対戦相手に勝ち点を渡してしまうことにも繋がるので、負けるか、引き分けるの違いはリーグ戦全体を見た時には非常に大切になってくる。
毎試合順位がコロコロ変わる今シーズンのプレミアリーグ。ビックゲームを勝ちきるのはもちろんだが、しっかり勝ち点を稼げる時に稼ぎる方が重要なのかもしれない。しかし、そう簡単に勝ち点を稼げる相手など、今のプレミアリーグにいないのが、難しいところで、楽しいところ。
チャンピオンズリーグは少しの間お休みだが、今度はプレミアリーグの過密日程がやってくる。毎年恒例の年末年始のスーパーハードスケジュールの中でシティは着実に勝ち点を積み上げることは出来るのだろうか。幸い、他クラブに比べて怪我人も戻ってきているのは朗報だろう。シティの選手層を見せつける絶好のチャンス。今くすぶっている選手たちの活躍が楽しみ。
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