マンチェスターシティ戦術分析
マンチェスターシティの2021年一番最初のゲームとなった今節の相手は、チェルシー。新年一発目からいきなりのビックゲーム!シティは今シーズン初めてのリーグ戦3連勝がかかるゲームで、自分たちでしっかり主導権を握ってゲームを進め、ボールを持っていない局面でも一人一人がハードワークをし、青く染まるスタンフォードブリッジで勝点3をもぎ取るべく戦いに挑んだ。
攻守で連動していたシティと攻守に連動性が少し欠けていたチェルシー。そんな90分だった。それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきましょう!
前に出たのはチェルシー
積極的にゲームに入ったのはホームのチェルシーだった。昨シーズンのリーグ戦ではチェルシーは自陣にブロックを敷いてカウンターを狙う戦術が見事にはまり、2-1で勝利を納めた。しかし、今節はそんな戦い方ではなく、チェルシーは積極的に前からゲームに入った。
チェルシーのボール非保持での戦術はシティ陣内からのプレス。最終ラインをハーフラインに設定し、シティのビルドアップを前から妨げにいく。高い位置でボールを奪えればショートカウンターを発動。またはシティに長いボールを蹴らせて後方でボールを回収する狙いがあった。しかし、シティのビルドアップ力は皆さんご存知の通り世界一の精度。前からのプレスを剥がされて、一気にピンチを招くリスクもありながら果敢に前からプレスに出た。この積極的なプレスがシティを苦しめ、チェルシーの狙い位通り、長いボールを蹴らせてボールを回収し、主導権を握っていったチェルシー。

チェルシーが前からプレスに行こうと思った一つの理由としてはシティのGKがエデルソンではないということも含まれていたはずだ。エデルソンはコロナの影響でベンチ外になり、この試合ゴールマウスを守ったのはザック・ステファンだった。シティのGKなのでビルドアップ能力は当然あるが、エデルソンに比べてしまえば劣ってしまう。エデルソンからの長い長い精度高いキックがこの試合無いということでチェルシーに前からボールを奪いに行こう!という一つの勇気になったのかもしれない。しかし、プレミアデビューとなったGKステファンはチェルシーの圧力に臆することなくボールを捌いていった。試合早々バックパスをハンドしてしまい、チェルシーにチャンスを与えてしまったが、しっかり自分の仕事を遂行できていたはずだ。また、チームとしてもこの試合はいつもよりもGKへのバックパスは少なかった感じ。GKまでボールを戻さなくても、前への選択肢を作れていたとも言えるが、チームとしてもGKステファンを支えていたようにも感じるゲームだった。
シティは前半序盤こそチェルシーの積極的なプレスに苦しめられるも、主導権を握り返す。
撹乱させる両SB
シティは目まぐるしいポジションチェンジでチェルシーの守備の基準を撹乱させにいき、優位性を作り出していった。今シーズンのシティはポジションチェンジを行っても優位性を作り出せない試合もあった。ポジションチェンジから自らのポジションバランスを崩してしまって(ポジションがかぶる、みんな足元で背後がなくなるetc…)パスコースを減らしてしまったり、ゴール前に人がいなくてフィニッシュまでいけないシーンも少なくなかっった。しかし、この試合のシティはポジションチェンジとポジションバランスが非常に整理されており、チェルシーにプレスの合図を出させないシーンを非常に多く出せていた。
ポジションを崩しながら、ポジションを整える。
チェルシーの前からのプレスもマンチェスターシティの目まぐるしいポジションチェンジで段々と下げられてしまう。この試合に置いて両SBの立ち位置を見るのも面白かった。左にはジンチェンコ、右にはカンセロが入ったがこの両選手は非常に技術的に長けている。ワイドに張っても、インサイドに入っても難なくこなしてしまう高い技術があることで、前線の選手の立ち位置を見ながら、両SBが立ち位置を変えてポジションバランスを整えていたのが非常に面白かったし、ペップシティらしかった。

前回のニューカッスル戦でも見せた、カンセロのインサイドへの立ち位置はこの試合でもチェルシーの脅威となっていた。スターリングが右のワイドに張るとカンセロがインサイドに入る。まるでインサイドハーフのような振る舞いを見せ、チェルシーのアンカー脇で何度もボールを引き受け、シュートシーンを演出していた。
逆サイドの右SBジンチェンコも攻撃の起点に。ジンチェンコもカンセロ同様に偽SBの振る舞いはお得意ワザ。インサイドでプレーするシーンもあったが、この試合は大外のレーンで攻撃の起点となっていた。一列前のフォーデンはインサイドに入る為に、ジンチェンコは大外のレーンでプレーすることが多くなった。そしてここにこの試合最前線に入ったデ・ブライネとギュンドアンが左サイドで絡み、三角形もしくは菱形を形成して目まぐるしくボールを動かしていく。
Embed from Getty Imagesシティの先制点、そして2点目のどちらも左サイドから生まれた。先制点は中央から左の大外のレーンで待つ左SBジンチェンコにボールが入ると、バイタルエリアで待つフォーデンへ大外から斜めのボールが刺さる。フォーデンが狭いスペースで反転し、ギュンドアンへ横パスすると、ギュンドアンがアグエロ顔負けのファーストタッチから右足を振り抜きゴール右隅へ突き刺し先制!2点目も左SBジンチェンコが大外から斜めのボールをデ・ブライネに入れて生まれたゴール。今シーズン初めてのプレミアリーグ先発だったが、しっかり存在感を残してくれたジンチェンコ!いいアピールとなったはず!これから彼がプレーする姿は増えてくれるはずだ!
シティのビルドアップ
先ほど述べたとおり、両SBは積極的に前線に上がり攻撃を組み立てるシティだが、そうなると、後ろが手薄になり、ビルドアップは大丈夫なのか?と心配になる。しかし、そこもしっかりポジションバランスが保たれていた。

シティはボールを保持するとシステムを可変させた。チェルシーの3トップに対して、2CBのディアスとストーンズに加えてロドリがビルドアップを試みる。また両SBは高い位置に上がり、ベルナルドが下がってビルドアップに関わることで更にチェルシーの守備は撹乱される。しっかりポジションバランスを保ちながらポジションチェンジを行うことで、チェルシーの守備はより撹乱されていった。ボール保持者に対しての複数のパスコースが用意され、なおかつマークする選手が目まぐるしく動き回るので、それはそれはチェルシーの選手がシティのボールを奪うのは難しくなる。
シティは前半にカウンターからもう一点を加えて前半3点のリードを奪って、最高の形でハーフタイムへ。
後半に入るとチェルシーが前のめりになり、シティがカウンターからチャンスを作る展開に。追加点を奪えるシーンもあったが、奪えずに時間をゆっくり進めていったシティ。終了間際に1点を返されたがシティが前半奪ったゴールを守りきり、勝ち点3をマンチェスターへ持ち帰った。
おわり
シティがこの勝利で、今シーズン初めてのプレミアリーグ3連勝を飾った。コロナ感染者や、コンデションが上がらない選手がいる中での、難しい台所事象の中で、今まで出場時間が少なかった選手たちが確かな働きをしていたのは、チームとして大きかっただろう。ジンチェンコは今シーズン初めてのプレミアリーグ先発出場。前半の2得点は彼からの配給が起点に。その他にも攻守でミスもなく、ペップに活躍した姿を見せつけた。またシティのポジション争いが激化するはずだ。またプレミアリーグデビュー戦となったGKステファンも最低限の仕事をこなした。キックオフはじめにロドリからのパックパスをハンドしてしまい、いきなりチェルシーにチャンスを与えてしまったが、その後は自信を持ってビルドアップにも参加した。彼を支えるようにチームメイトもプレーし、彼のデビュー戦を勝利で飾れたことは非常に大きかっただろう。
Embed from Getty Images少しずつ順位を上げてきたマンチェスターシティ。不気味に、確かに力をつけながら、着々と首位を狙っている感じ。さぁ超過密日程は続きます。リーグ戦に加えて2つのカップ戦もシティは絶対に落とす気は無いはず。この試合のように、出場機会が少ない選手にも今まで以上にチャンスは巡ってくるはず。総力戦で頑張りましょう!
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