ジョアン・カンセロのプレースタイル・特徴 〜【カンセロロール】

サッカー戦術分析
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ジョアン・カンセロのプレースタイル・特徴

昨シーズン(19/20シーズン)にユベントスからやってきたポルトガル人。入団初年度の昨シーズンはなかなかチームに溶け込めず、ペップの要求にも答えられない何とも歯がゆい背中を見ることが多かったように感じるカンセロだった…しかし、今シーズンそんなイメージを払拭させる大活躍を見せ、今期のマンチェスターシティには欠かせない選手にまで存在感を増しているカンセロ。

2年目の今シーズン、カンセロはペップシティに完全にフィットした。そしてペップに託されたカンセロにしか出来ない『カンセロロール』はチームの快進撃の原動力となり、サッカーファンの新たな談義の種にもなっている。

今が正に旬!今絶対見るべき選手カンセロ!

簡単ではありますが彼の特徴、プレースタイル、今シーズンのシティでのタスクをご紹介していきます!

プロフィール

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ジョアン・カンセロ(João Cancelo

・ポルトガル代表
・1994年5月27日(26歳)
・身長182cm 右利き。どっちも蹴れる!
・両SB(どちらもできるのも彼の強み!)
・ベンフィカ→バレンシア→インテル。そしてユベントスを経てマンチェスターシティへやってきた。各国のビッククラブを渡り歩いてきた。どのクラブでもコンスタントに試合出場をしてきた。
・彼の最大の特徴は何と言っても攻撃スキルと攻撃センス。

今世界で1番の攻撃的なSBではないだろうか。攻撃面において世界で一番複雑で、とてつもない仕事量をこなすSBとも言えるかもしれない。この『カンセロロール』というタスクはカンセロだから出来る。カンセロにしか出来ないタスクだ。

ボール遊びが大好き

カンセロの最大の特徴はボールを持った時に発揮される。ボールを持つとSB離れしたスキルを遺憾無く発揮する。ドリブルにパスに相手の陣形をぶっ壊していく。シティではSBが主戦場ではあるが、サイドハーフでプレーしたり、IHでプレーする試合もありペップもカンセロの攻撃的スキルを認めているはずだ。上手い選手はプロの世界では大勢いるが、そんな中でもカンセロの攻撃スキルはエグイと思うはずだ。相手をドリブルで切り裂く。両足から繰り出される性格無比なクロス。時折見せる強烈なシュート。

本当にボールを持つとワクワクさせてくれる。

そしてそんなカンセロの特徴を最大限に活かした戦術が『カンセロロール』だ。

『カンセロロール』

『カンセロロール』とはカンセロに与えられたタスクを意味する。今シーズンのカンセロのプレースタイルと言ってもいいかもしれない。

『カンセロロール』とはSBのカンセロが、攻撃時にCHであり、IHのように中盤にポジションを移しプレーすることを意味する。「アラバロール」、「偽SB」とも言われる戦術と似ているだろう。この『カンセロロール』によりシティはメリットを獲得することができ、今のシティの好調を支える要因の一つになっている。

『カンセロロール』は「アラバロール」や「偽SB」と似ているといったが、今までのその戦術からさらに進化しているように感じる。カンセロは偽SBの役割もするし、オーソドックスなSBの立ち位置でプレーすることも。ビルドアップ時はCHもしくはアンカーのような振る舞いをみせ、バイタルエリアではIHとしてハーフスペースでプレーするシーンも。しかし、状況に応じてはサイドに張り、オーソドックスなSBの役割もこなす。サイドから鋭いドリブル、クロスをあげるシーンも。そしてカンセロはこれを両サイドでこなせてしまう。これがカンセロならでは。カンセロにしか出来ないことかもしれない。

サイドのエリアでも、中央のエリアでもハイレベルのスキルを発揮する。右SBでも左SBでも彼は難なくプレーをしてしまう。これが『カンセロロール』の最大の特徴かもしれない。正に神出鬼没。あらゆるエリアで顔を出し、数的優位を作り出し、ボールに触れれば質的優位を発揮する。

ビルドアップはCHに変貌

SBのカンセロはビルドアップ時にサイドから中央にポジションをとる。これにより中盤に数的優位を作り出す。またカンセロが中盤に入ることで相手の中盤の選手に迷いを与えることに。え?カンセロSBだよね。なんで中盤にいるの?誰がカンセロのマークつくの?という具合で相手の頭に迷いを与える効果も。それにより相手のプレスが遅れたり、プレスがズレることで周りの選手に時間とスペースを与える効果も。

カンセロが中盤に入ることでそれに合わせてチーム全体が可変することに。シティのベースポジションである4-3-3→3-1-3-3になったり、4-3-3→3-2-2-3になったり、4-3-3→2-3-2-3へ可変する。相手の配置に合わせて変幻自在に変形していく。それにより相手はさらに惑わされプレスに出れなくなり、シティのボール保持率は上がっていく。

サイドを空けるよ!

SBのカンセロがインサイドに入ることで中盤に優位性を作りだす。それだけではなく、カンセロが中盤に入ることでSHを一緒に中盤に連れていくことも。カンセロをフリーにさせまいと相手SHがマークについていく。

そうすると今度はサイドに大きなスペースが。シティはカンセロがインサイドに入るとWGは幅をとる。それによりワイドのパスコースが生まれる効果も。それだけでなくその空いたスペースに中盤からベルナルドやデ・ブライネが落ちてボールを引き出すスペースを空ける効果も。

ゴール前はIHとWGに変貌

ボールをより前へ、相手陣地に運ぶと、カンセロはより攻撃的な位置へポジションを移す。IHやトップ下、時にはWGとして攻撃的なスキルを存分に発揮する。

相手を押し込むとカンセロはハーフスペースでボールを待ち受ける。そこでボールを引き出すことで2つの効果が。1つ目が大外にはるWGをフリーもしくは1vs1の状況を作りだす。カンセロがハーフスペースでボールを受けることで相手のCBやCHを釣り出すことで中央に相手を集めてサイドを手薄にする効果が。それにより幅をとるチームメイトに時間とスペースを与える効果が生まれる。

カンセロのキックの質も高い為に、相手SBもしくはWBの背後を一気にとるボールを入れて決定的なシーンを作りだすこともお手の物。またカンセロはハーフスペースからワイドにボールを入れると、そのままペナルティエリアへ走り込んでポケット侵入し、今度は自分が相手の背後をとる動き出しを見せるシーンもある。

そして相手の状況、サイドを組む選手の特徴に合わせてそのポジションを変えることも。ワイドにスターリングやマフレズといったサイドからのドリブル突破が得意な選手とコンビを組むときは、上の図↑のようにハーフスペースに立ち位置をとり相手を中央へ集める。今度はベルナルドのようなインサイドに入ってプレーするのが得意の選手とコンビを組んだ時には、カンセロがワイドに出てドリブル突破、クロスを蹴り込むシーンも見受けられる。下の図↓

相手の状況、コンビを組むチームメイトに合わせてカンセロが立ち位置を変えるのも『カンセロロール』の特徴の1つ。インサイドでも、サイドでも難なくプレーができるカンセロならではだ。逆SBのジンチェンコも出来るからなお相手は厄介。

前後半でカンセロの立ち位置が明確に変わった試合があった。プレミアリーグ第15節ニューカッスル戦の試合。前半は右サイドをスターリングと組み、後半はベルナルドと右サイドを組んだ。前半はインサイドで、後半はサイドでプレーした明確に立ち位置を変えていた試合だった。

守備は頑張ってる!

ここまで攻撃面のカンセロの特徴を話してきたが守備面での彼の役割、特徴はどうなんだろう?ここにチームとしての課題も隠されている。

ボールを奪われた瞬間、カンセロは攻撃的なポジションを取っていることが多い。シティは高いボール保持率をほこり、相手陣内で押し込んでボールを動かす状況が多いからだ。その為カンセロも前線の選手たちと同様に、ボールを奪われた瞬間はトランジションプレスを試みる。まずはボールを抑えにいく。時にはプレスバックでボール回収を試みる。それが報われなければ急いでSBの位置へ戻り、4バックを形成する。

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4バックを形成した時のSBとしての守備の対応はカンセロのウィークポイントの1つかもしれない。昨シーズンに比べれはプレーの向上が見られるシーンもあるが、1vs1の守備対応が軽いシーンはまだあるのも確かだ。それでも、ディアスとストーンズ、GKエデルソンの鉄壁がカバーしてくれているからそんなに目立っていないのかもしれない。

1vs1の対峙した時の守備対応ともう1つはボールに食いつきすぎる特徴も。4-4-2のブロックを組んだ時に自分のマーカー、もしくは近くのボールに食いつきすぎてSBの背後のスペースを突かれてしまうシーンもある。このSBとして求められる守備スキルはカンセロの足りない面かもしれない。このスキルはウォーカーはピカイチ。ペップも相手やチーム状況に合わせて使い分けているのは何となく感じられるし、そこがまたゲームをみる楽しみの一つだ。

この2つのウィークポイントをまんまと突かれたのがプレミアリーグ延期分第1節のアストン・ヴィラ戦だった。この試合カンセロは左SBで先発。右SBにはウォーカーが入ったが、ウォーカーの負傷により前半途中から右SBへ回った。攻撃時は左右両サイドでも難なくプレーできたのはお分かりの通り、しかし守備の面でカンセロの弱点が浮き彫りにされたシーンがちらちら。アストン・ヴィラの左SHには旬のグリーリッシュが。ビッククラブ相手でも攻撃面で大きな違いを1人で出せるグリーリッシュにカンセロが手を焼いていく。この試合ペップが右SBにウォーカーを先発で使った意味も大きくなっていく。グリーリッシュの守備対応の為にウォーカーを右SB使った狙いだ。ウォーカーの怪我の影響でそのプランが崩れグリーリッシュに仕事をされるシーンも。それでも試合終盤に2点を奪って勝ち切ったシティ。攻撃面のカンセロの働きはこの試合も素晴らしかった。しかし守備の面でカンセロの脆さが出た試合でもあった。

チームとしてのマネジメント

『カンセロロール』によってシティの攻撃力は格段と上がっている。しかし、その代償、リスクがあることも確かだ。カンセロがSBの位置を離れて中央へプレーすることで、そのエリアを空けてしまうリスクだ。どうしてもカンセロの空けたサイドのスペースを使われて攻め込まれるシーンも。ここをシティはしっかり管理しながら、カンセロをより攻撃的なエリアでプレーさせるかが勝点を積み重ねるキーにもなりそうだ。

4バックの人選はペップの頭をいい意味で悩ませている状態だ。CBコンビはディアスとストーンズの鉄壁コンビ。そして一番はカンセロの逆に入るSBの人選だ。カンセロが左SBに入る場合は右SBウォーカーがかたいが、カンセロが右SBに入った場合の左SBの人選はキーかもしれない。ジンチェンコが入ると両選手ともにボールを扱うスキルは天下一品。ワイドでも、インサイドでも難なくこなす両選手が両SBに入ると超攻撃型と化すシティ。攻撃面は見ていて非常に面白いが問題は守備だ。カンセロに加えて、ジンチェンコも上がってしまえばよりサイドの守備が手薄になる。

守備時のカウンターに備えてかラポルテが左SBに入る試合も出てきた。カンセロが右SBから自由度の高い位置どりをする一方、後方はアンカーにロドリが入り、左からラポルテ、ディアス、ストーンズのロマン溢れる3バックが。この形もシティの新たな形になりそうだ。

また後方がカウンター対応に備えるだけでなく、前線の選手のトランジションプレスと、早い帰陣も不可欠だ。今のシティは守備面においてディアスとストーンズ、GKエデルソンの活躍に目がいきがちだが、前線の選手の早いトランジションプレスに、早い帰陣にも目を向けなければいけない。

ここまでのシティの戦いぶりは、カンセロをより前がかりにプレーさせ、カンセロが空けたスペースを使わせないリスク管理ができていると言えるだろう。この関係性を絶えず出来ればシティの快進撃は止まらないはずだ。

おわり

昨シーズン入団当初は苦しんでいたカンセロだが、今シーズンはその鬱憤を晴らす大活躍をここまで見せている。ペップに与えられた『カンセロロール』により持ち前の攻撃スキルを最大限に解放されチームの大きな力となっている。

『カンセロロール』はカンセロの良さを最大限に出す戦術だけではなく、チーム全体に好循環な影響を与えていることを忘れてはいけない。カンセロが中盤に入ることで、デ・ブライネはより自由に、より攻撃的にプレーが出来る。シティの攻撃において、彼が一番伸び伸びと攻撃的にプレーできることが、一番ゴールを奪う確率を上げることはサッカーファンにはお分かり頂けるだろう。

またカンセロがポジションを動くことで生まれたスペースにいち早く反応し惜しまず走るベルナルド。成長著しいフォーデン。カンセロの攻撃をカバーする鉄壁のCBコンビ。

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カンセロのポジショニングや、彼の攻撃スキルに目がいきがちだが、『カンセロロール』を可能にしている周りの選手たちの働き振りも忘れてはいけない。『カンセロロール』の弱点をいかに隠し、よりカンセロに攻撃的なタスクを与えられるかが今期のチームの結果に大きな影響を与えるかもしれない。カンセロから目が離せないのは間違いないだろう。

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