【3つの関門】アーセナルvsマンチェスター・シティ【プレミアリーグ第25節 戦術分析】

サッカー戦術分析
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怒涛の10分

キックオフの合図と同時に、シティが怒涛の攻撃を見せる。アーセナルに考える暇すら、対応させる暇すら、息をさせる暇すら与えなかった。そしてあっという間にシティが先制する。わずか2分で。左SBのジンチェンコからCBのディアスにパスが入る。そしてディアスから右のワイドに張るマフレズに綺麗なチェンジサイドが入りお得意のトラップから、お得意のドリブル開始。対面するSBを後ずさりさせ、抜ききる前に左足を振り抜いてクロス。左足から放たれたボールは綺麗な放物線を描いき、クロスは回転数を上げながら中で待つスターリングの頭に落ちていく。右のワイドのスターリングが中に絞ってクロスを頭で合わせて先制ゴールをもぎ取ったシティ。まさに電光石火。一気に試合の主導権を手繰り寄せた。

帰ってきたシティのキング

シティは基本配置の4-3-3から可変することで、アーセナルに守備の基準を定めさせない狙いを持っていた。これはいつも通りといった感じ。いつものように配置を崩しながら、配置を整えていくポジションチェンジでアーセナルのプレスを和らげ、回避していった。先制点も含む、開始10分まで流動的なポジションチェンジでアーセナルを翻弄していった。その時間の間に特に右サイドからシティは攻撃の形を作っていった。その中心にいたのは帰ってきたシティのキングだ。

1つ目が04″38分のプレー。

フェルナンジーニョの展開から先制点と同様に、右のワイドのマフレズにチェンジサイドが入り、マフレズがフリーでボールを受け取る。この時なぜ?マフレズがフリーなの?と思うだろうが、デ・ブライネの立ち位置がそれを可能にさせているのだ。先制点の時もそうだが、デ・ブライネが右のハーフスペースに立つことで、左SBティアニーを食いつかせる。そうすることで大外のマフレズがフリーとなる。少しの時間ができれば今の好調マフレズには十分。マフレズが多彩な攻撃を見せてくれた。そしてデ・ブライネはマフレズにボールが入るとオーバーラップでパスを受け、高速クロスを中へ送り込み好機を演出した。

2つ目が5″00のプレー。

お次は5″00の一連のプレー。これはシティが狙いが詰まったそんな攻撃であった。カンセロがカンセロロールでインサイドに入り、大外のレーンを空ける。またアーセナルの中盤を釣り出す効果も。空いた大外のレーンにインサイドのデ・ブライネが流れてストーンズからボールを引き出す。それに合わせて最前線のベルナルドは列を降りてCBを釣り出し、アーセナルの最終ラインに亀裂を加える。そしてその亀裂に大外からスターリングが斜めにランニングしデ・ブライネのキラーパスを受け取り決定機を作り出した。

3つ目が6″29のプレー。

このシーンでワイドのマフレズにボールが入った時にプレスにいったのがCBのパブロ・マリだった。それが不思議でよく観察してみると、これまたカンセロロールとデ・ブライネのコンビでアーセナルのプレスを後手にさせている事が見えてきた。先程の5分のプレーと同じような形からデ・ブライネがストーンズから大外でボールを引き出すと、今度はフリーにさせまいとSBのティアニーがプレスにでる。それを見てかすぐさまデ・ブライネがトントンと2タッチでマフレズに縦パスを入れていなしていく。それに合わせてマフレズへプレスにずれたのがCBのパブロ・マリだった。ここで先ほどの疑問の答えが。しかし、そうなるとCBがサイドにつり出されれば当然後方には広大なスペースが。そこを見逃さないのがベルナルド。ベルナルドが一気にパブロ・マリの背後へランニングをするも、残念ながらマフレズからボールが出なかったが、これが出ていれば決定機になっていたはずだ。

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久しぶりの先発出場だったデ・ブライネだが、その存在感はやはり大きかった。ボールを持ってももちろんだが、立ち位置だけで相手の脅威になるシーンも多く、頼もしい男がシティに帰ってきてくれた。

CBの運ぶドリブル

アーセナルもシティが可変することはスカウティング済みだ。しっかり対策もなされていた。前節のエバートン戦同様にボランチの選手はシティの2IHであるデ・ブライネとギュンドアンにはマンマーク気味でマークについた。またインサイドに絞る右SBカンセロには左サイドのサカがこちらもマンマーク気味で監視していた。そしてCBの選手も0トップのベルナルドが一列落ちるとこちらもしっかりマークに付いてくる意識が強かった。ここは前節のエバートン戦と少し違ったところだ。エバートン戦は列を落ちるジェズスがフリーになるシーンが多かったが、それほど今節の0トップはフリーにはならなかった。アンカーのフェルナンジーニョにはトップ下のウーデゴールがマークにつき、オーバメヤンが2CBにちょっかいを出しに行く。一人一人が明確な役割をもちシティへプレスにかけにいった。

こうなるとGKエデルソンと、2CBのディアスとストーンズのどちらか一人がフリーとなる。GKエデルソンへのバックパスでアーセナルの選手を釣り出して、プレスのズレを作って前進するシーンもあった。そしてもう一つ、このアーセナルのプレスを剥がすポイントとなっていたのが、CBの運ぶドリブルだった。ストーンズもディアスもガンガンドリブルでボールを運んで前進したり、運ぶドリブルで相手を釣り出して、味方をフリーにさせるシーンも度々見られた。

この運ぶドリブルにより、ボールを前進させ、アーセナル全体の重心を後ろへ押し下げる役割となっていった。

シティの3つの関門

シティは個人のスキルと、熟練されたポジションチェンジでアーセナル陣内へボールを前進していったが、アーセナルも自分たちが主導権を握ってボールを運ぶ事が得意なチームだ。後方から、またはゴールキックからしっかりショートパスとミドルパスを織り交ぜながらシティ陣内に入るシーンが徐々に見え始めたが、シティの仕掛ける3つの関門を攻略することは出来なかった。

シティの1つ目の関門

シティの1つ目の関門はトランジションプレスだ。アーセナルがシティのボールを奪うとすぐさまボールを返せと、凄まじい勢いでトランジションプレスが襲いかかる。ボールを奪ってからマイボールにするまでの作業は非常に難しい。シティは多くの人数をかけて厚みを持って攻め込むため、ボールを奪われるとその厚みがそのままトランジションプレスとして襲いかかる。これを掻い潜るのは相手チームにとっては至難の業。今のシティの好調を支える要因の一つ、即時奪還をかわすのがアーセナルに突きつけられた1つ目の関門だった。1つ目の関門をくぐり抜けてもすぐさま2つ目の関門がアーセナルを襲った。

シティの2つ目の関門

アーセナルがシティのボールを回収し、後方からビルドアップを試みる。またはゴールキックの局面になるとシティは4-2-4のような配置で前からプレスを襲いかかる。これが2つ目の関門。リヴァプールとの試合で見せたようなカウンタープレスを仕掛ける。ハイプレスを仕掛けて、敵陣深くでボールを奪い一気にゴールまで奪い去る攻撃的なプレスだ。シティが思惑通りアーセナル陣内深くでボールを引っ掛けて決定機を作るシーンも!

しかし、この攻撃的なプレスに臆することなく、アーセナルがボールを動かして前進するシーンもあった。この4-2-4のプレスに対して、アーセナルは人をかけて数的優位を作り出して、ファーストプレスを剥がしていった。しかし、このシティの2つ目の関門である、4-2-4の前からのプレスをひっくり返しても次は3つ目の関門がアーセナルを悩ませていく。このプレスは攻撃的スタイルである。こんな前のめりではリスクも伴い、プレスをかわされれば一気にピンチになるだろう!そんなシーンもあったが、そこもしっかり織り込み済みで、シティは4-2-4でプレスに出ていく。

たとえ前プレスを剥がされて前進されても、後方には4バックが並び、この試合ではアンカーのフェルナンジーニョが立ちはだかり、スピードアップを許さない設計もされていた。

アーセナルは2つ目の関門を突破してからスピードアップできなかった事が、得点を奪えなかった大きな要因だった気がする。

シティの3つ目の関門

そして最後の関門が3つ目の関門。帰陣が速い、すぐさま形成される4-4-2ブロックだ。2つ目の関門をかいくぐっても、4バックとアンカーにスピードダウンをされる。その数秒で一気にファーストプレスの4人が帰陣し、プレスバックに襲いかかり、それが出来なければ4-4-2のブロックを形成するのが3つ目の関門だ。

アーセナルは確かに後方からシティのプレスを剥がして前進するシーンもあったが、それだけではゴールはまだまだ遠い。3つの関門全てをくぐり抜けなければゴールを奪えない状況を作り出したシティ。プレミアリーグで最少失点数をほこる答えがここにあるのかもしれない。

チェンジオブペース

シティは後半早々も前半早々同様に見せたように、ギアを一つあげて追加点を狙いにいった。しかし追加点は奪えなかった。時間の経過とともにアーセナルもシティのやり方に慣れ始め、アーセナルがよりシティを観察しながらプレーするようになっていった。何となくどちらもゴールの匂いがするようで、しないような時間帯を嫌ったのか、最初に動いたのはペップだった。63″デ・ブライネに変わって守備職人のジェズスが投入された。献身的な彼の前線からの守備も期待されてもあるが、攻撃の新たな起爆剤として投入されたようにも感じた。

ジェズスが最前線に入った事で、後方からのビルドアップの形も変わっていった。マンネリ化したペースを変えるべく、もう一度前への意識を強めていった。GKエデルソンからのロングフィードが増えていった。ジェズスやスターリング目指してエデルソン砲が前線へ発射しまくる。

そしてデ・ブライネがいなくなった事で、カンセロロールがより発揮されるようにも。ジェズスの投入により、シティはチェンジオブペースをはかり、もう一度攻撃を活性化させていった。

おわり

シティが電光石火で奪いさった1点でスコアは動かずに試合終了。シティが公式戦18連勝。リーグ戦13連勝で今節も首位を守りぬいた。非常に戦術的にも見応えのある90分であった。シティの可変システムや、攻撃力に目がいってしまうが、この試合も速いトランジション。速い帰陣。強固なブロック。3つの関門を築き上げ、アーセナルにゴールを渡さなかったのは見事だった。シティの失点数が少ないのはやはりあなたが仕掛け人ですか?

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そして、キャプテンフェルナンジーニョはきいていた。ジーニョ!来季はもういないの?いてほしい…といういぶし銀な働きっぷりでした!まだまだあなたが必要ですよ!

さぁ、ミッドウィークはチャンピオンズリーグ。相手はボルシアMGと攻撃力満点のくせ者です。非常に楽しみでありドキドキ。プレミアリーグで見せる強さそのままにCLも圧倒してほしい。今週も心踊るゲームが盛りだくさんで楽しみ!

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