【3バックの真意とは?】フラム×マンチェスター・シティ【プレミアリーグ第28節 戦術分析・レビュー】

サッカー戦術分析
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準備されたフラムのシティ対策にゲームは均衡していく。シティはどのようにゲームを運んでいったのか?そしてこの日の配置は3バック。可変を加えて3バックではなく、ベースポジションが3バック。果たしてそこに込められたペップの思惑とは?

それではゲームを振り返っていきましょう!

フラムの組織化された守備

フラムはシティに対する明確な守備プランを用意してきて。その守備プランはシティを苦しめることに成功し、試合中盤までは思い通りにゲームを運べたかもしれない。

この日のシティはボール保持の局面になると3-4-3の様な配置となった。

これに対してフラムは3トップのルックマンとロフタス=チークがシティの3バックにプレス牽制を伺う。そして3トップのもう一人の左WGカヴァレイロは右サイドのカンセロを監視する役回りとなっていた。

シティの中盤に入ったロドリにはアンギサが、ベルナルドにはレミナが監視する。アンカーのリードは誰かを掴まえることはせずに、前線から中盤に落ちてくる選手にマークにいく役割を担っていた。トップのアグエロが中盤に落ちたところを上手く掴まえてアンカーのリードがボールを奪うシーンも何度か見られた。

フラムの守備プランはシティの攻撃を停滞させることに成功していた。果たしてシティはどの様にこの硬い守備を攻略していったのだろうか。攻略は出来たのだろうか!?

ルベン・ディアスのドライブ

フラムの守備プランの中にもどうしても時間とスペースを与える選手がいる。それはCBのルベン・ディアスだった。フラムにとってはこの男は非常に厄介だっただろう。比較的フリーなディアスは自分の貯金(時間とスペース)をしっかりと前線の選手に渡すことで少しづつ好機を作り出していった。

どの様にディアスが前線の選手に貯金を渡していったかというと、それは運ぶドリブル、ドライブだ。ディアスはフリーの状態でボールに触れることは出来るが、そこから先のパスコースは埋められた状態だった。そこでディアスは自らドライブしてボールを運ぶプレーを連発していく。

CBがドライブすることで前進することはもちろん、相手を引きつけて味方をフリーにさせる効果もある。

ルベンディアスのドライブ(運ぶドリブル)のスペースを作り出すために、中盤のベルナルドやロドリが中央から離れる動きで相手を引きつけるシーンは印象的だった。チームで誰がフリーで、誰を前進させるか共通意識されているなと思ったシーンでもあった。ピッチ上で状況を判断し、選手一人一人判断する凄みを感じた。

3バックの真意とは?

この試合一番の注目ポイントはシティの3バック起用だっただろう。シティの3バックにはどんな思惑が込められていたのか少し考察してみたいと思う。

この日のシティの基本配置は3-4-3だった。ボール保持になると後方3バックで2CHのロドリとベルナルドが関わり3-2の形でビルドアップを試みる。この形は4-3-3が基本配置でも可変を加えることでよくみられる形でもある。そして前線は両WBのカンセロとメンディが高い位置に上がり、3トップのラインまで吸収され5レーンに綺麗に人が配置される形となった。これもシティが4-3-3でもよくみられる形だ。

それでは大きく変わった面とはいったい何なのか?それはボール非保持での振る舞いに見受けられた。シティはこの日フラムにボールを保持されると5-2-1、5-4-1の形でプレスを試みた。シティのプレスは4-3-3もしくは4-4-2がベースになっているが、この日は少し違った。

それに伴いプレスラインもいつもより少し低め。ペナルティエリア付近まで出てガンガンプレスに出るというよりは、そこから10m程度下がってプレスをスタートさせていた様に感じた。それにより、前線と中盤のスペースをコンパクトにすることが出来る。フラムもガンガン前線に蹴り込むチームではないので、シティはボールを動かされる時間帯もあったが、プレスをひっくり返されて一気にゴール前に攻め込まれるシーンは最近の試合よりは少なく感じた。

ユナイデット戦しかり前節のサウサンプトン戦しかり前からのプレスをひっくり返されて一気にゴール前に攻め込まれるシーンが少なくなかったシティ。そんな事も踏まえて配置を変え、守備ラインの設定を変えたのかもしれない。

しかしこの3バックの真意にはもう一つの意味があった様にも感じた。それはターンオーバーだ。出場時間が多い選手を休ませ、出場時間が少ない選手を出場させる。そう考えるとこの試合の人選はある程度決まり、その選手たちの特徴やポジションを当てはめた時にいつもと違う配置、プランになったのかもしれない。

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前節からディアスとラポルト、ベルナルド以外の選手を変えてこの試合人選を組んだペップ。そして前節出場していた67分にはベルナルド→フェルナンジーニョ、75分ディアス→エリック・ガルシアを交代させた。そんなことを踏まえるとターンオーバーの影響を受けてこの人選、戦術プランになったのかなと予想もつく。

おわり

試合は後半ストーンズのセットプレーを皮切りに3得点を奪ったシティがリーグ戦連勝を飾った。フラムの戦い方もプランも決して悪くなかった。ビルドアップからのミスで生まれた2失点は非常に悔やむものとなってしまったが、シティのゲーム運びも見事であった。

大きなミスもなく、迎えたチャンスをしっかり決め切る強さ。シティらしい崩しからのゴールはなかったかもしれないが、色んな形からゴールが奪えるのは強さの象徴だ。

そしてアグエロがプレミアリーグゴールを奪った。PKの得点ではあったが本当の意味で「おかえり」だ。そしてPKを獲得したF・トーレスも躊躇なくPKキッカーをアグエロに譲り与えたことは個人的には好感が持てる。最近結果を出せずに焦りもあるだろうF・トーレス。絶対に自分で蹴りたい思いはあったはずだ。

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きっちり決め切ったアグエロに本当に嬉しそうに駆け寄るチームメイトの姿。彼をリスペクトし、チームが彼の復調を願う思いが本当に伝わった。

さぁ、ターンオーバーもしっかり完了し、ミッドウィークに迎えるチャンピオンズリーグvsボルシアMG戦。ファーストレグを勝利したことで有利な状況は変わりないが何が起こるかわからないのがチャンピオンズリーグ。ここからカップ戦も多くなり負けられない緊張感が増す試合が多くなるシティ。それはリーグ戦でも同じ。

緊張感ある試合でシティらしさを存分に発揮してほしい。

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