【ペップの試みとレスターの未来】コミュニティシールド2021 マンチェスター・シティ×レスター・シティ【サッカー戦術分析・レビュー】

サッカー戦術分析
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いよいよプレミアリーグの新シーズンが始まる!その狼煙となるのが、このコミュニティシールドです。昨シーズンのリーグ王者とFAカップ王者が激突する一発勝負のカップ戦。日本のJリーグで例えるとゼロックススーパーカップのようなイメージ!

レスターのスタメンに名を連ねた選手は怪我人を抜いたベストメンバーに近い布陣。片やプレミア王者のマンチェスターシティのスタメン、ベンチメンバーには、アンダーカテゴリーの選手が7名。EUROに出場した選手や、コパアメリカに出場していた主力選手がまだ戻ってきていない状態での試合となった。ペップもコメントで、シーズン序盤は苦しい戦いとなると言うように、主力が戻り十分なトレーニングが出来ないままシーズンに入る状態は、ペップのその言葉の意味を裏付けているのではないか。この試合でも連携でのミスが目立っていたが、ペップの新たな試みが少し見られて面白かった。

ペップの新たなビルドアップの試み。シティのプレスをひらりとかわすレスター。レスターを停滞させたシティの修正力。こんな流れで、試合を振り返っていこうと思います!それでは簡単ではありますが、この試合のレビューといきたいと思います!

ペップの新たな試み

両チームのスタメン!

ゲームの序盤から、シティがボールを保持すると違和感を感じた。その違和感がペップの新たな試みの一端であったのかもしれない。

昨シーズンシティは、シーズン中盤から終盤に猛烈に連勝重ねていった。その立役者がギュンドアンの2列目からの抜け出しであったり、もう一つがカンセロロールだった。SBカンセロがビルドアップ時には偽SBの役割(中央に入ってボールを引き出す)をこなし、アタッキングサードに入るとまるでIHのような振る舞いを見せることで、相手を混乱に陥れる戦術だ。この試合でも右SBに入ったカンセロはポジションをいつものようにインサイドにとったり、ワイドにとったり、神出鬼没にポジションをとっていた。ここまでは昨シーズンから見慣れた光景。

それでは私が感じた違和感とは何だろうか?それは左SBのメンディのポジションだった。左SBメンディは右SBカンセロ同様に、インサイドに絞ってボールを引き出していた。カンセロよりもよりインサイドにポジションをとるシーンも。両SBがインサイドに絞って、アンカーのフェルナンジーニョと横並びになり、ビルドアップ時に2-3-2-3の様な配置に可変してシティはボールを前進するトライをしていた。

中央で数的優位を作り、ショートパスで相手のプレスを剥がす。あえて中央に密集を作り出し、開いたスペースを利用する狙いもあっただろう。SBがインサイドに絞る動きに合わせて、IHの選手がワイドに流れてボールを引き出し、前進するシーンも。

この配置によってレスターのプレスが空回りするシーンもあったが、それと同時にボールを中央でロストしてショートカウンターを受けるシーンも。この一戦だけ見れば、このペップの新たな試みはハイリスク、ハイリターンというバランス。これから練り度をあげて、ハイリスクを出来るだけ軽減することは課題だろう。

シティのプレスを空転させたレスター

前半シティはレスターに何回も前からのプレスを剥がされた。自分たちの思い描いた形で、前線でボールを奪ってショートカウンターをあまり仕掛けられなかった。レスターがミスをおかして中盤でボールをロストした時だけ、シティはショートカウンターからチャンスを作る状況だった。

シティはレスターがボールを保持すると、4-4-2の形でプレスに出た。レスターはボールを保持すると、4-2-3-1ベースでボールを動かす。サイドバックは上下にポジションを変えながら、CBの補助に入る。

そして一番シティのプレスを空回りさせる要因になっていたのが、中盤の数的優位だった。ティーレマンスとエンディディの中盤センター2枚に加えて、前線のマディソンが落ちることで、シティのプレスを定めさせなかった。

前線2枚のF・トーレスとパルマーは頑張ってプレスに出るも、数的優位の中盤にボールを入れられてしまい、レスターに一気にスピードをあげられて、サイドにボールを散らされてピンチになるシーンを招いていってしまったシティ。しかし、ハーフタイムをさかいにペップが修正を加えて、レスターを停滞させていった。

レスターを停滞させたシティの修正

後半に入るとシティのボールの追い込み方や、ボールの回収のやり方が明確になった。この試合レスターがボールを失うパターンとして前半一番多かったのが、左CBソユンジュから長いボールを入れさせるパターンだった。彼から中盤にショートパスをつけられるとそこから前線に前進されるシーンが多かった事を踏まえて、あえてCBソユンジュにボールを持たせて、長いボールを入れさせて、後方でボールを回収するシーンを増やしていったシティ。見事な修正であった。

前線2トップはCBソユンジュにボールが入る様に誘導させて、彼の利き足である右足を切りながらアプローチをかけて、彼の左足で長いボールを蹴らせてボールを回収するシーンが後半は多く見られた。

これにより、シティはより厚みを持って攻守でレスターを押し込める様になった。そして後半20分には移籍したばかりの新10番ジャック・グリーリッシュをファンにお披露目。またベルナルドも投入して、左サイドを活性化させていったが、得点を奪えないまま、時計の針は進んでいった。

試合はこのまま延長かと思いきや、レスターがCBアケからボールを掻っ攫ってPKを獲得。これをイヘアナチョが強い球でゴールに突き刺し先制したレスター。これが決勝ゴールとなりレスターがカップを掲げた。シティは後味が悪い結果となってしまったが、ペップの新たな試みが見れたのは面白かった。

シティの開幕は大丈夫?

ここから約1週間でプレミアリーグの新シーズンが開幕する。開幕までにシティは不安も少なくないはずだ。この試合でも7人のアンダー世代の選手が名を連ねたシティである。コンデションや怪我を踏まえて、または若い選手への経験の与える意味もあっただろうが、開幕までにベストメンバーが揃えられるとは考えにくいだろう。全体練習に戻ってきていない選手もおり、徐々にアクセルを踏んでいくのだろう。もしかしたら、昨シーズンの様にシーズン序盤は苦しい状況を迎えるかもしれない。

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開幕までにベストなシティの姿は見れないかもしれないが、徐々にギアが上がっていくチームの戦いぶりを見ていくのも楽しみの一つかもしれない。果たして、新シーズンのペップシティの完全体がどんな姿なのか、サッカーファンとして早く見たい気持ちが抑えられない。

レスターの行く末は?

コミュニティシールドを掲げたレスター。彼らの強さをプレミア王者に見せつける形となった。やっぱりレスターは強いし、いいチーム。しかし、プレミアリーグファンにはお分かり頂けると思うが、レスターはここ数年ずっと強い。相手によって戦い方を変えられるロジャースレスター。ボール保持も、ボール非保持でも強さや巧さを出せる非常にいいチームで、レスターの戦い方を悪く言う人はあまり聞いたことがないくらい。

しかし、ここから先、レスターがもう一段階上のレベルになる為には何かが必要かもしれない。その何かを探す挑戦を今シーズンもする必要があるだろう。このタイトル、そして昨シーズンのFAカップ優勝とタイトルもとっているが、彼らが今一番欲しいのは、チャンピオンズリーグ出場権ではないだろうか。2年連続でCL権を最後の最後でこぼしているレスター。

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またヨーロッパリーグでもいい成績は残せていない現状。是非!レスターをヨーロッパの舞台で見たい!と言うサッカーファンが多い中でも、レスターはもう一段階チームのレベルを上げる必要があるだろう。

ロジャースレスターは完成形へと近づいていると感じる中、ここからどんな変化を今シーズンもたらしてくれるのかは、プレミアリーグを見る上で楽しみの一つになりそうだ!

さぁ!寝不足のシーズンがやってくる!

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