マンチェスター・シティのプレミアリーグ開幕戦の相手は、難敵トッテナム・ホットスパーFC。約62000人の超満員が、スパーズの選手たちの背中を目一杯押し出し、プレミア王者に隙を与えなかった。ヌーノ新監督はこの試合に明確な戦術を選手に授け、それを遂行したスパーズ選手たち。ペップシティは終始彼らのプラン、熱気、圧力に苦しめられる結果となった。
それでは簡単であるが、試合の振り返りをしていこう。
試合の構図
終始ペップシティがボールを保持し、スパーズがカウンターを仕掛ける構図となった。シティがボールを保持したというより、この試合はスパーズによって持たされたと表現した方がよいだろう。
シティはボールを保持すると可変を加えてボールを動かしていった。SBがインサイドに絞り気味で、2-3-2-3の配置でビルドアップを試みた。この可変システムはコミュニティーシールドでも見られた形で、これに対してヌーノ監督が明確なプランを用意した。
スパーズは4-3-3ブロックを自陣に形成した。前に3人の選手がいるので、ハイプレスを仕掛けると思いきや、決してそれはしなかった。ある程度2CBにボールを持たせて、ファーストプレスの位置をハーフラインに設定し、ボールを外へ誘導していった。

シティにボールを持たれる前提でプランを組んでいたスパーズ。とにかく奪ったら縦へ!前へ!シティの陣形が整う前に早く攻めるプランであった。4-3-3ブロックから、ボールを奪ってカウンターを仕掛け、終始シティを苦しめていった。シティが使いたいエリアを最初から塞ぎ、ボールを外へ誘導したヌーノスパーズ。
スパーズのソンフンミの決勝ゴールもカウンターからだった。
これが大まかなこの試合の構図だった。今回はシティが苦しめられたスパーズの4-3-3ブロックと、何度も受けたカウンターのメカニズムを紐解いていこうと思う。
スパーズの4-3-3ブロック
スパーズは自陣に4-3-3のブロックを形成して、シティの狙いを潰し思惑通り何度もカウンターから決定機を作り出した。
ゲームの入りは中盤3人でシティの前進を防げるのか?と疑問に思った人も多かっただろうが、ゲームが進むにつれてヌーノ監督の思惑が見え始めていった。
シティのベース配置は4-3-3。ボールを保持すると両SBがワイドに広がらずに、アンカーの選手の脇に位置取ることで2-3-2-3へと可変していった。これに対してスパーズはベースポジションの4-3-3の配置を形にシティのボールを取り上げにいった。
前からガンガンプレスに出ることは決してせずに、ファーストプレスをハーフラインに設定した。GKエデルソンはセービングで大変忙しかったが、足でボールを扱うシーンは非常に少なかったと感じる。彼がビルドアップに関与するシーンが少なかった。そこまでボールを下げる必要がない状態をスパーズの守備が作っていた。また、GKエデルソンまでボールを下げて、ビルドアップのやり直しが少なかったとも言えるだろう。シティは攻め急いでいたパラメーターにもなりそうだ。
スパーズの3トップの守備タスク

スパーズの3トップは2CBとアンカーフェルナンジーニョを監視する約束。最前線でボールを奪い切ることよりも、中央にボールを入れさせないことが最重要ミッションだったように感じた。なぜかと言うと、ボールを外へ誘導させてボールを奪う狙いがあったからだ。3トップはワイドにボールが入ると、ボールサイドへアプローチをかけるシーンもあったが、逆サイドにボールが行かないように蓋をする立ち位置を取っていたのが非常に印象的だった。
スパーズの中盤3人の守備タスク
次に中盤3人に与えられたタスクは?アンカーに入った新加入のスキップはボールサイドにスライドして中央をケアする役割。IHの選手はまずはハーフスペースをケア。シティのSBにボールが入るとグッと前に出てアプローチをかけにいく。

特に左SBのメンディから右IHホイビュルクが何度もボールを取り上げてカウンターを仕掛けるシーンは多く、スパーズの右サイドは非常に対人能力が強い選手も揃っており硬かった。また幅をとるシティのWGにボールが入ると、SBのカバーにアンカーのスキップが、プレスバックにIHが入る役割も担っていた。
カウンターを受けまくったシティ
この4-3-3ブロックに苦しめられたシティは何度もカウンターを受けてしまった。前線で厚みを持ってゆっくりボールを動かして攻めて、ボールを奪われると即時奪還をするのがペップシティの特徴。だがこの即時奪還がこの試合ではあまり出来ずに、畳みかける攻撃が出来ずに、逆に何度もカウンターを受けてしまった。
攻め残る3トップ

スパーズは4-3-3で自陣にブロックを形成するのは前述した通りだが、ゴール前までシティに攻め込まれると3トップは前線に残っている状態を作った。カウンターに備えて3トップを残していたのだ。これによりボールを奪うと一気に前線へボールを供給するスパーズ。一発で背後をとるシーンは少なかったが、セカンドボールを回収しカウンターを発動するシーンが目立った。数的同数となれば、早いスパーズの3トップ(ソンフンミ、ルーカスモウラ、ベルフワイン)はシティを独断で押し込んでいった。
またシティもスパーズが前線に3人残っているのに、SBがガンガン上がってしまい、後方が手薄になるシーンは何度もあった。もっとリスクヘッジしながら攻め込む必要はあるはず。
奪われ方が悪い
左SBのメンディは何度もボールを引っ掛けてカウンターを喰らうシーンは少なくなかった。SBの選手が前向きでボールを奪われると中々カバーをするのは難しいだろう。トランジションや、カバーが出来にくい状態で奪われるシーンが多かったシティ。その原因は確かに、個人の判断やスキルの問題もあったかもしれないが、チームの問題もあった。
ボールに対して厚みがないまま、ポジションバランスが整う前に攻め急ぎボールを奪われ、カウンター合戦のような展開に。この展開になれば強いのはスパーズ。スパーズの土俵へとずるずる引き込まれていったペップシティ。
シティの狙いは?
Embed from Getty Imagesスパーズの4-3-3プレスに苦しめられたシティではあったが、意図的にチャンスを作り出すシーンも当然あった。
逆サイドへの展開
スパーズの中盤は3枚なので、逆サイドにボールを展開できるとチャンスになった。それも中央を経由して逆サイドへボールが入った時だ。そんな展開を作られるとスパーズはピンチになるのは前提であったからこそ、サイドにボールが入ると一気に中央に蓋をして展開を許さなかった。
前半一度だけ左から中央のフェルナンジーニョにボールが入り、前線へスルーパスが入ったシーンはシティが形にしたかった形だっただろう。
サイドでの旋回
中央を固めるスパーズに対して、サイドを起点にポジジョンチェンジをすることで、ボールを前進するシーンも。中央を固める相手に対して中央を使わずに外から攻める!と言うわけではなく、外を起点に中央も、外も、逆サイドへも使える状況を!そんな状況をサイドで選手同士が旋回することで作り出していた。またグリーリッシュが逆サイドまでポジション移動してフリーになったり、フェラン・トーレスが落ちて中盤に優位性を作るトライもしていた。そんなシーンをもっと増やしても面白かったかもしれない。
前進しないパス
この試合に関してシティがどうすればよかった?と言う話はたくさんあるかもしれないが、シティは自分たちの土俵で長く戦えなかったことが一番苦しかった?
相手のアクションに対応する力も当然大切なことだが、やっぱりペップシティは自分たちが主導で出来るだけ長い時間ゲームを運ばなければ強さは際立たないはずだ。
私はペップシティの調子のパラメーターの一つが、「前進しないパスの数」だと思っている。攻め急いでしまえば「前進しないパスの数」は少なくなる。この試合は「前進しないパスの数」が少なかったように感じる。
Embed from Getty Imagesペップの言葉を借りれば「走りすぎていた」と言うところだろう。
もっとチェンジサイドの回数を増やしたり、バックパスでやり直すプレーでスパーズを揺さぶる駆け引きがあれば、シティの土俵へとずるずる引き込めたかもしれない。
昨シーズンのプレミアリーグ序盤思い出す。縦に縦に速いシティ。独断で、カウンターでゴールを奪っていたあの時に少し似ている。もっとゆっくり、優雅に。そんなペップシティをサッカーファンは待っているはずだ。
グリーリッシュとデ・ブライネの共演は夢があるね!
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