土曜日のランチタイム。
満員のエティハドスタジアム。
試合前に響き渡る「Hey Jude」の大合唱。
帰ってきたこの雰囲気。やっぱりフットボールはこうでなくちゃ。ファンが作り上げた、この最高の雰囲気の中ビックマッチが開催された。
マンチェスター・シティは、アーセナルが時間をかけて準備した戦術を、僅か5分で解剖した。そしてアーセナルに襲いかかるアクシデント。アクシデントではなく、全てはマンチェスター・シティが誘発させたものだったかもしれない。
シティの監督ペップとアーセナルの監督はアルテタと、師弟対決。軍配は師匠が貫禄なゲーム運びで、アーセナルを寄せ付けなかった。
それでは、簡単ではありますが、ゲームを振り返っていきましょう!
前節の振り返りはこちらです!
配置で見るチームの狙い

マンチェスター・シティのスタメンは前節とまるっきり一緒。これはペップシティに置いて極めて珍しいこと。前節と同じメンバーだったことは約4年ぶり。前節のメンバーは確かにハイパフォーマンスを見せていたし、コンディションの面を踏まえてペップは同じスタメンをピッチに送り出したのかもしれない。
対するアーセナルのスタメンは前節のチェルシー戦からメンバーも、配置も変わっていた。チェルシー戦では4バックベースだったが、この試合は3バック、5バックベースの並びとなった。
前からのプレッシングをかけることと、押し込まれた時に5バックを形成する為の並びかなと、ゲームを見ていくとそう感じた。
ゲームの入りからアーセナルはシティ陣内からプレッシングを仕掛けた。ここにアーセナルが準備をしてきた形の一つが見えた。アーセナルが仕掛けたプレッシングを紐解いていこう。
アーセナルのプレッシング
明確な狙いを持って。前に出たアーセナル。
マンマークをする選手。エリアを守りながら人に出る選手。スライドをする選手。それぞれ与えられたタスクを持ちながら、シティのボールを出来るだけ前で奪うトライを見せた。
シティの2CBとアンカーのロドリにはマンマーク気味で人をぶつける。中盤のジャカは中央のエリアをケアしながらギュンドアンへ。スミスロウはベルナルドをケアしながらウォーカーへもプレスに出るシーンも。WBはシティのWGをケアしながら、SBへプレスに出る。最終ラインは3バックを形成して裏のケアをした。

アーセナルの選手に与えられたタスクはそれぞれ異なっていた。コミュニケーションを欠かすことも出来ない。その中で、少し複雑な守備タスクを担っていた選手も。その場その場の状況に合わせて、守備のやり方、選択を変えることを求めらた。アーセナルは複雑に変わるシティに出される問題に、少しでも間違った答えを出してしまうと一気に押し込まれる。
特にWBの選手や、スミスロウ、ジャカに求められた守備タスクは複雑で難しかったように感じる。またベルナルドまでプレスに出るCBコラシナツも同じ状況に。
そして、マンチェスター・シティはそのアーセナルの複雑な守備タスクを担っている選手に、さらに迷いを与える問いを提示していった。それにより、アーセナルの前プレスはだんだんと機能不全に陥っていった。
ボールの出所を増やしたシティ
マンチェスター・シティは、アーセナルのプレッシングの問いを僅か5分で解剖し、回答を示した。その一つ目が落ちる動きだ。中盤のベルナルドと、FWのトーレスが自分のポジションから一列降りることで、フリーでボールを引き受けたり、味方に時間とスペースを与えることに成功した。

FWのトーレスが中盤に落ちると比較的フリーになりやすかった。中盤にいるのはギュンドアンをマークするジャカくらいだ。なぜかと言うと、アーセナルの中盤より前の選手は、シティの中盤より後ろの選手を捕まえにいったからだ。シティのボールの出所を抑えるのが第一優先。蹴られない事が前提。また蹴られてもコースを限定して、ジャカに回収させたり、3CBの一角が前に出てプレスにいく狙いだったのかもしれないがそれは上手く機能しなかった。ベルナルドが下がる事で、もう一つボールの出所となった事で、アーセナルのプレスのズレが生じてしまい、シティは前向きで前進することが出来たからだ。

ベルナルドが下がることでスミスロウが迷う。ウォーカーに行けばいいのか、ベルナルドに行けばいいのか。ティアニーは右の幅をとるジェズスが気になって思いっきりウォーカーへは出れない。そこでアーセナルは一つの回答として3CBのコラシナツを前に出した。
しかし、ベルナルドのドリブルによって剥がされてしまうコラシナツ。DFラインの選手が前に出てボールが取れないと、体力的な消耗はもちろん、メンタル的な消耗も大きい。リスクをかけてボールを前に出てるのに、ボールを取れなければ前に出てプレスにいけなくなってしまうもの。そんなベルナルドのボディーブローにより、アーセナルのプレスがはまらなくなっていった。
GKエデルソンの2つのミス
シティはアーセナルのプレッシングを攻略し、前半早々に2点のリードを奪った。その後、GKエデルソンが大きなミスパスを2つおかしてしまう。運よく失点に繋がらなかった。アーセナルのプレッシングが機能していたとも言えるシーンだが、GKエデルソンは自分にプレスが来ない事を理解した上で生まれたミスとも考えられる。

GKまでプレスに出ないことを逆手にボールを離すタイミングを伺っていた。プレスに来ない時間を利用して、左SBのカンセロがインサイドに絞ってエデルソンからボールを受けたり。エデルソンがあえてボールを持って、アーセナルのプレスをつり出してフリーになった選手へパスを出した。
確かに立て続けに大きなパスミスを2本してしまったが、その後は彼からのパスでシティのフィールドプレイヤーには時間とスペースが与えらることになり、ますますアーセナルのプレッシングは機能しなくなっていった。
変更できずに与えた3点目
前半早々に2点を奪ったシティだが、彼らはますます試合を優位に進められる状況へと。アーセナルの中盤ジャカがカンセロに対して、両足のスライディングでレッドカードを提示され、アーセナルは10人で戦わなければいけない状況に。
アーセナルにとっては一種のアクシデントではあったが、その後の対応が後手となり、シティに3点目を返上してしまうことに。一人少なくなったアーセナルだが、ハーフタイムに入るまで、ゲームプランを変えることはなかった。それにより、唯一DFラインと前線のプレスの繋ぎ目となっていたジャカが退場したことで、アーセナルの中盤は空っぽに。
GKエデルソンから列を降りたFWトーレスが縦パスを受けて前を向いてドリブルで前進。左のグリーリッシュがドリブルで切り込み、最後はジェズスが3点目を奪った。
おわり
試合は一人多くなったマンチェスター・シティが試合を優位に進め、後半2点を加えて5得点の大勝をおさめた。5得点ともにシティらしさが詰まったゴールであり、トランジションの強度も最後まで落ちなかった。
そしてこの試合に関して、一番見て欲しい、勉強になるのが、シティの対応の速さだ。アーセナルが長い時間かけて準備した戦術をあっという間に解剖した速さだ。僅か5分でアーセナルの問いに回答し、10分足らずで2得点を奪い試合を優位に進めていった。
Embed from Getty Imagesペップからの指示なのか、ピッチにいる選手が自分たちで対応したのかは分からないが、どっちにしても対応スピードは凄まじかった。
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