前節プレミアリーグ5連勝で首位に立ったマンチェスター・シティ。今節はホームで新監督を招聘したウルブスを迎え撃った。試合は終始シティがボールを握りウルブスがカウンターを狙う展開となったが、試合は荒れに荒れることに。
ウルブスにはハプニングが重なり、自ら首を締めてしまう状態にも…戦術的にも非常に面白い試合であっただけにゲームが荒れてしまったのは非常に残念ではあった。
それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきましょう!
ウルブスの5-3-2ブロック
シティのホームにやってきたウルブスは明確なペップシティ対策を講じてきた。5-3-2のブロックを形成してカウンターを狙う作戦だった。5-3-2ブロックと言えばトゥヘルチェルシーの代名詞!と言わんばかりに、昨シーズンペップシティはこの陣形攻略がほぼ出来なかった!
しかし今シーズンはその教訓をしっかり活かして、5-3-2ブロックへの攻略方法を見いだせている感じを受ける。
ペップシティはボールを保持すると2-3-5の様な配置へと可変する。その2-3-5の可変システムに対して5-3-2ブロックを噛み合わせてみると?配置が噛み合うと思いませんか?
配置をかみ合わせる事でペップシティが使いたいエリア、狙っているエリアを始めから封鎖する。誰に誰がマークに着くのか明確にする事でボールへの決断スピードを上げるetc…

こういった理由がペップシティが昨シーズントゥヘルチェルシーに限らずに、5-3-2ブロックに苦しんだ要因の一つである。
そして今節ウルブスはペップシティを苦しめるべく5-3-2ブロックを形成したがペップはそこを逆手にとるような戦術を落とし込み、特に前半はいつもとは違う戦いぶりが色濃く出ており非常に面白かった。
ペップシティの2-4-2-2
ウルブスの5-3-2ブロックに対して、ペップシティのこの試合のスタート配置は4-3-3ではなかった。いつものように4-3-3から後方を2-3の五角形にし、前線5レーンに人を配置してしまうと5-3-2ブロックの思う壺というのは前述した通り。
そこで5-3-2のブロックが噛み合わない立ち位置を各選手がとるかのように、ボールを保持すると2-4-2-2の様な配置になっていた。

亀裂を入れるSBの立ち位置
シティの後方は2CBの立ち位置はそのままで、SBは絞る事なくやや高い位置へ上がりウルブスの中盤3人の脇に立った。このSBの立ち位置がこの5-3-2ブロックに亀裂を入れるキーエリアになった。
このエリアに立つSBにウルブスがプレスに出ると一気に守備ブロックが壊れる種が隠されていた。

プレスに行けば中盤もしくは5バックの構造が壊れ、プレスに行かなければシティのハイクオリティのSBに好き放題攻撃のタクトを振られる選択を迫られたウルブスだった。結果として前半無失点に抑えたウルブスだったが、5-3-2ブロックの構造に亀裂が入るシーンも何度かあり、ペップの狙い通りとなるシーンもあったはずだ。
シティのSBがウルブス5-3-2ブロックの中盤3の脇になるサイドのエリアに立つ事で、ウルブスにどんな脅威となったのだろうか?
中盤が出るのか?WBが出るのか?
このエリアに立つ事でフリーとなるシティのSB。ここへ中盤3人がスライドすると、2IHのグリーリッシュとベルナルドがそれぞれのサイドに分かれて、スッと落ちてウルブスの中盤3人の後ろでボールを引き受ける。

またウルブスの中盤3人で横幅をスライドカバーするので、どうしても横にボールを動かされるとスライドが間に合わずにシティのSBがフリーとなる。遅れてプレスに出ればボールを運ばれる、もしくは中央のエリアにズレが生じ、そこにグリーリッシュとベルナルドが落ちてボールを引き受ける連動性を見せた。
それではWBが前に出るのはどうなの?
しっかりウルブスもそんな疑問を試してみるが、それも上手く行かない構造をペップシティに作られていた。

5バックのWBが縦スライドしてシティのSBにプレスに出ると、今度は最前線の2人が斜めに走って一気にウルブスの最終ラインをブレイクする戦術が用意されていた。
ハーフレーンに立つ2トップ
前半のシティの前線はスターリングとジェズスの2トップだった。しかしその2トップの立ち位置が非常に興味深かった。一般的な2トップの立ち位置!という表現では伝わらない様な立ち位置だった。
中央にドンと2トップが並ぶのではなく、ハーフレーンに2トップが立つ事が求められていた様に感じた。なぜ?中央ではなく、そこからやや外のハーフレーンに2トップを立たせたのか?
それはWBの背後をとり、3バックの脇へ向けてペナルティエリアのポケットへ侵入する狙いがあったのだ。特に前半は右のハーフレーンに入ったスターリングは、SBカンセロとのコンビで何度もウルブスの左ポケットへ侵入した。

ウルブスの中盤3人の脇でカンセロがボール受ける。WBがプレスに出る。スターリングがその背後へハーフレーンから背後へ抜ける、カンセロから絶妙なスルーパスが入り斜めにペナルティエリア侵入!そんなシーンが再現性を持って前半何度も見られた。
その為この日の2トップの立ち位置はハーフレーンだったのかも。
後半はいつもの様に。分厚い右サイド。
前半終了間際にウルブスのエースであるヒメネスが退場となった。少し安易なプレーで連続カードをもらいの退場で非常にもったいなかった。戦術的にも非常に面白いやり合いをしていただけに、少し残念な気持ちにもなったが、シティにとっては有利にゲームを運ぶ要因になったはず。
1人少なくなったウルブスに対して、前半見せた2-4-2-2の様な配置から、慣れ親しんだ4-3-3ベースの配置で、5レーンを使った畳み掛けるか攻撃を見せていった。
スターリングとカンセロの右サイドは前半同様に厚みのある攻撃を見せていった。前半は幅はカンセロ。インサイドはスターリングという役割を後半は逆にし、より深い幅に立つスターリング。より深いハーフレーンでカンセロが立ちボールに触れる事で、何度もウルブスの左サイドを叩いていった。
Embed from Getty Images1人少なくなった事でより守る意識が強くなったウルブス。1人少なくなった事でよりブロックが強固になり、最後まで1点が遠くなってしまうのはサッカーあるある。同時にカウンターのカウンターからブロックの構造が整わない間に失点してしまうのもあるある。シティの先制ゴールはそんな後者のサッカーあるあるが当てはまる様な展開がキッカケだった。
シティの攻撃を前向きで跳ね返しいざカウンター!と狼煙を上げる矢先に左WBがボールを引っ掛けてしまい右サイドをベルナルドに抉られてクロス!これをモウティーニョがスライドしブロック!しかし判定はハンド!このPKをスターリングが落ち着いてゴールに沈め均衡を破ったシティ。
Embed from Getty Imagesこのゴールでスターリングはプレミアリーグ100G目。おめでとう!
おわり
先制点を奪ったシティは1人多い優位性を活かしてその後も畳み掛ける攻撃を見せるも、奪ったゴールはスターリングの100Gのみとなった。終了間際にはウルブスが一矢報いる攻撃で決定的なシーンを作るも守護神エデルソンがビックセーブ!こちらもメモリアル。シティにやってきてGKエデルソンの100試合目のクリーンシートゲームとなり、ペップシティが1点を守り切った。
Embed from Getty Images退場者が出るまでの前半の両チームの戦術的な駆け引きは非常に面白かった。昨シーズンペップシティが大いに苦しんだ5-3-2ブロック。昨シーズンだけでなく長いシーズンか。その攻略法が少しづつ見えてきたのかもしれない。
これでプレミアリーグ 6連勝で前節からの首位の座をしっかり守り抜いた。次節は難敵リーズ。昨シーズンはあまりいい印象が無い相手!奇才ビエルサ監督とのやり合いも非常に楽しみだ!
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