【カウンター後ろで止める?手前で止める?】マンチェスター・シティからカウンター対応を考えよう!〜サッカー戦術分析〜

サッカー戦術分析
この記事は約9分で読めます。

試合を一気に面白くし、心を一気に高揚させる「カウンター」

カウンターが発動されると、サッカーをプレーするもの、サッカーを観ているものの気持ちのボルテージが一気に高まる。

前のめりに攻めたてる相手に対して、手薄となった後方へ一気に人が流れ込む。そのスピード感や迫力がゴールへの期待感やゴールへの恐怖心が高まり、心をハラハラ、ドキドキ高揚させる。

切れ味抜群のカウンターは試合の状況をガラリと変えてしまう。

Embed from Getty Images

自陣にワザと敵を引き込みカウンターからゴールを奪うシーンや戦術。攻め込まれ自陣深くにブロックを敷く劣勢の状態でも、相手の一つのミスからカウンターを発動させてゴールを奪ってしまうシーンはサッカーの試合ではよく観られる場面。

それではサッカーの試合を面白くし、試合の勝敗も決めてしまうカウンターについてこのブログでは解説していこう!

とは言わない!

そんな話の真逆の話。サッカーの魅力であり醍醐味であるカウンターをどうシャットアウトするのか!そんな話をマンチェスター・シティを例に話していこうと思う。是非最後までお楽しみ!

失点数も少ないマンチェスター・シティ

ペップ率いるマンチェスター・シティには、その華麗なボール回しや、規律のとれた立ち位置、そして破壊力抜群の攻撃力ばかりに目がいってしまうことが多いだろう。しかし、これだけ勝点を積み重ねられる要因には攻撃力だけでなく、堅い守備力も装備していることを忘れてはいけない。

ここまで2021/22シーズン、プレミアリーグ25節を終えてペップシティが奪ったゴール数は61ゴールとリーグ1位(リヴァプールと同率)。そして失点数もリーグ最少の数字14。1試合平均に換算すると僅か0.56の数字。

クリーンシート(無失点)の数も14試合の数字を叩き出している。

なぜ?マンチェスター・シティがここまでこれほどまでに失点数が少ないのか。そのキーワードになるのが「カウンター対応」だ。

リスクと隣り合わせ

圧倒的なパス本数とボール保持率。相手を敵陣に押し下げた状態でそれを実行するスタイルがペップシティの特徴の一つだろう。しかしこのスタイルはカウンターを受けるリスクとの隣り合わせでもある。

敵陣で圧倒的にボールを握りながら1発のカウンターで失点するシーンは、ペップシティではお馴染みと言っていいかもしれない。

どんなにペップシティにボールを自陣で握られても1発のカウンターに賭ける!そんな対戦チームは少なくない。ゴール前に、ペナルティエリア内に10人の選手を配置してブロックを形成してカウンターを狙うチームも少なくない。

その為ペップシティは自分たちの攻撃的なスタイルを貫く為にも「カウンター対応」は至上命題なのだ。幾度となく悩まされてきたカウンター対応に、今シーズン新たな試みを見せているペップシティ。この試みがプレミアリーグ最少失点という結果にも現れているはずだ。

カウンターを後ろで?それとも手前で食い止める?

今季のペップシティは新たな試みをしている。ベース配置である4-3-3からの可変の配置を2-3-5(2-3-2-3) にしている。昨季多く観られた形は4-3-3からの3-2-5(3-2-2-3)の形。

昨季多く観られた3-2-2-3可変システム

昨季も今季も前線の5人の配置はあまり変わらない。変革されたのは後方の形が3-2の五角形から、2-3の(2CB+3CH)の台形へと変わったことだ。

ボールを握ると2CBとアンカーは自分の持ち場から動きすぎずに固定。SBはやや内側に入り、アンカーの両脇へ位置どる。また相手のプレスの出方に合わせてSBは内側に入ることはせずに、最終ラインの幅をとる役割を担うことも。これにより相手の様々なプレッシングに合わせて優位な位置どりが可能となり、安定したビルドアップが出来るようになっている。

敵陣深くで幅をとるWGにボールが入ると、内側にポジションを取ったSBはサポートへ回る。WG、SB、IHの3人で三角形を形成し旋回し、バランスを保ちながらポジション移動することで相手に捕まらない効果も。WGがサイド深くえぐった時には、ハーフレーンでマイナスのボールを受け取り、逆サイドへの展開の役割も担っている。

後方の陣形を2-3にすることで生まれた攻撃のメリット。この変革によって攻撃の側面だけではなく、このブログのテーマである「カウンター対応」の側面でも様々な効果が生み出されている

カウンターを後ろで食い止める3-2配置

昨季は4-3-3のベース配置から3-2-2-3への可変システムを採用していたことは先ほど少し触れた。一方のSB(ジンチェンコやカンセロ)がインサイドに入りアンカーの選手の横でプレー。もう一方のSB(ウォーカー)は最終ラインの内側に入り後方を3バックに可変しビルドアップを試みた。

インサイドに絞るSBを相手が捕まえられずにプレスを空転させるシーンを幾度となく作り出したことに成功した昨季の3-2-2-3可変システム。相手を押し込んだ際のカウンター準備では、後方の3バックが最終ラインに待ち受けて「カウンターを後ろで止める」準備をしていた。

後方に3人のDFが待ち受ける事で安心感はあるようには見える。確かにSBのカイル・ウォーカーが3バックの一角に入りカウンター対応で無双状態を作っていた。しかし、ウォーカーの様な抜群の1vs1強者がいてもカウンターから失点するシーンが生まれてしまうのもサッカーの面白さだろう。

確かに後方に人はいるが、今度はセカンドボールを拾う選手や、トランジションプレスの一番手になる選手が少なくなってしまう。そうなれば攻撃の跳ね返りを相手に拾われ前向きでスピードアップされてしまい、カウンターの狼煙を上げられるシーンも少なくなかった。カウンター対応の場面で輝きまくっていたカイル・ウォーカー。見方を変えればそれ程カウンターをうたれてしまっていた証拠にもなるはず。

カウンターを後ろで食い止める3-2配置から、今季はカウンターを手前で食い止める試みを見せているペップシティ。

カウンターを手前で食い止める2-3配置

今季ペップシティは4-3-3のベース配置から、後方を2-3配置へと変革し、ビルドアップ局面やフィニッシュワークで安定と破壊力をより増していることは先ほど述べた通り。

それではこのブログのテーマである、相手を押し込んだ時の「カウンター対応」はどうなのか紐解いていこう。

相手を押し込むと後方には2CBが最終ラインで待ち受け、トップのくさび対応と背後のスペースケアの役割。そしてロドリとインサイドに絞る両SBを含めた3ボランチで中盤に蓋をするイメージ。

ボールサイドのSBはボールに関わり積極的に攻撃参加。それに合わせてアンカーの選手と、逆SBはボールサイドへスライドし逆サイドへの展開役を攻撃時は担いながら、ボールを奪われた時の回収役、トランジションとの一番手となる守備時の役割も担っている。

中盤に形成された3ボランチのお陰で「カウンターを手前で止める」回数を増やし、より相手ゴールに近いエリアでボールを即時奪還する回数もアップ。失点数を減らす効果と一緒に、攻撃力をあげる相乗効果も生まれている。

三段階構造のカウンター対応

「カウンターを後ろで止める」ことから「カウンターを手前で止める」新たな試みを見せているマンチェスター・シティ。この効果もありここまでのプレミアリーグ最少失点につながっているはずだが、「カウンターを手前で止める」戦術にも当然リスクはある。

3ボランチのファーストプレスが決まらず、長いボールに前線に送り込まれて「後ろでカウンターを止める」シーンも出てくる。昨季より1枚少なくなった最終ラインにボールが入れば当然不安は大きい。しかしそこにボールが入った時のCBの役割はより明確になり、チームとしての守備意識もより向上している様に感じる。

Embed from Getty Images

くさびが前線に入ると対応するCBは激しくチェイシング。当然背後のケアの意識は持ちながらも、落ちるトップの選手にもしっかりついていき潰す、もしくはアプローチで時間をかけて味方のプレスバックの時間を作る。このプレスバックが猛烈に早いのが今季のマンチェスター・シティの特徴の一つ。1人だけでなく、チーム全体の戻りが凄まじく早い。たとえボールを奪えずに相手がカウンターからボール保持に切り替えた時には、すでにマンチェスター・シティの選手たちは自陣に4-4-2のブロックを作り上げる徹底ぶり。

この様に今季のマンチェスター・シティは三段階構造でカウンター対応を見せている。

①3ボランチにより「カウンターを手前で止める」トランジションプレス

②前線にボールが入るとCBが前に出てプレス。潰し切るか、プレスバックの時間を稼ぐ。

③チームで猛スピードで帰陣。自陣に4-4-2ブロックを形成

初めにも述べたが、ペップ率いるマンチェスター・シティの攻撃力の方へどうしても目を向けてしまうことが多いかもしれないが、その持ち前の攻撃力を支える確かな守備戦術がこのチームには携わっているのだ。ペップの人柄を考えれば、攻撃だけ考える!攻撃だけすればいい!なんてことはあり得ないはずだ。

全てがハイレベルで綿密なチームを作り上げるペップシティ。是非攻撃場面だけでなく、トランジション局面や守備場面も観察してほしい。本当にサッカーの大切なことを沢山教えてくれるはずだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました