【世界最高峰のフットボールがここに】プレミアリーグ第32節 マンチェスター・シティ×リヴァプール

サッカー戦術分析
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首位マンチェスター・シティと2位リヴァプールの勝ち点差は僅か1。そんな状況の中行われたプレミアリーグ終盤戦での天王山。プレミアリーグのみならず、今現在世界でも最高峰のレベルに達しているシティとリヴァプールがリーグタイトルを大きく左右するこの状況の中での1戦。

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最高のシチュエーションがより最高の90分を作り出してくれた。

見た方がいい90分。ではなく。見なければいけない90分。

と言い切れる本当に素晴らしい試合だった。

それでは試合を振り返っていきましょう!

マンチェスター・シティの狙いは?

まずはマンチェスター・シティのスタメンを見てみよう。

なぜ3トップはこの並びになったのか?

なぜロドリとベルナルドが中盤に横並びになったのか?

その解像度は試合経過と共に上がっていった。ペップのプランには言うまでもなく必ず狙いや理由がある。

3トップに与えられたタスクと狙い

左からフォーデン、真ん中スターリング、右にジェズスの人選がこの頂上決戦の3トップに選ばれた。この日1番のサプライズは右WGで起用されたジェズスだったかもしれない。

確かに今季序盤、ジェズスは右のWGとして新境地を開拓しアシストを量産してきたが、最近の序列を考えるとこのビックゲームのスタメン起用には多くの人を驚かせただろう。

振り返れば前回対戦のリヴァプール戦でもジェズスは右WGで起用されて攻守に大切な仕事を担っていたのを思い出した。

対リヴァプールにはジェズスは欠かせない男なのかもしれない。

この試合の3トップに与えられたタスクと狙いをまとめると…

①左WGに左利きのフォーデン。右WG右利きのジェズス。

→ボールを外に回して切返さずにそのままクロスを上げる狙い。
→切り返す時間を与えるとリヴァプールの素早い戻りが間に合ってしまう!
→中央でボールを奪われてくない!リヴァプールのWGをサイド深くまで戻してカウンターを打たせない対策も!
→スピードのある両選手でガンガン背後とる!

②ビルドアップ時ジェズスは内側に!

→ビルドアップ時に右WGジェズスはSBとCBの間にポジションとり。リヴァプールのプレッシングを食らった時の逃げ道の役割!
→ジェズスが内に入ることで、SBのウォーカーを高い位置に上げる!後方からの高い位置を取るSBへの対角のロングフィードはこの試合の明確な狙いの一つ!右サイドからも左サイドからもリヴァプールのハイラインの背後を狙う!

③スターリングのトップ起用

→0トップの役割ではなく、まずは背後。中央から斜めにサイドに抜けてリヴァプールのハイラインの背後を狙う。後半VARで取り消されたゴールも彼らしい背後の抜け出しだった。
→素早く背後をとった後のクロスに合わせる役割。後方でリヴァプールを集めて一気に長いボールでリヴァプールの背後を突く。リヴァプールの戻りが間に合わない間に素早くクロスをDFとGKの間にガンガン送り込むので、クロスを合わせる人選も当然スピードのある選手が適任。そう言った面でもスピードのあるスターリングがトップ起用されたのは納得かと。

④リヴァプールのSB対策

リヴァプールの特徴の一つはSBの攻撃参加。そこの対策の為にもサイドにフォーデンとジェズスが起用された意味もあったはず。アップダウンを繰り返し守備もサボらず、スピードもある両選手。

それでもリヴァプールの1点目は左SBロバートソンのクロスから右SBアーノルドが合わせ折り返し生まれたゴール。シティの準備した対策を上回るクオリティは流石のリヴァプールだった。

ベルナルドとロドリの中盤横並び

簡潔にこの試合の3トップに与えられたタスクと狙いまとめてみたが、お次も簡潔にロドリとベルナルドがなぜ中盤の横並びになったのかまとめてみたいと思う。

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ペップシティといえば4-3-3の中盤逆三角形だが、この試合では中盤の配置を三角形にした。デ・ブライネがトップ下となり、その後方にロドリとベルナルドが横並びで中盤を形成された。

相手がリヴァプールということで守備的な意味で中盤の底を固めた!という見方もあるが、リヴァプールの弱点をつく為に、点数を奪う為にロドリとベルナルドは中盤の底で並んでプレーしていることも見受けられた。

リヴァプールのプレッシング

リヴァプールの最終ラインはこの日もハイラインだった。シティ相手でも変わらず自分たちらしく最終ラインを非常に高く設定し、非常にコンパクトな陣形でジリジリとシティのボールへ圧力をかけていった。

そしてもう一つ特徴的だったのが前線のプレスの形。リヴァプールと言えばWGが外を切りながら中央へプレスをかける形が多くみられるが、この試合はその形を変えてシティへ圧力をかけた。

シティにプレッシングをかける際にWGはやや下り気味で4-5-1の陣形となった。そこからシティのCBへはトップのジョタに加えて、IHのヘンダーソンとチアゴの一方が前に出てプレスに出る形を見せた。

この方法は最近の対シティでよくみられるようになったプレスの形。シティから今季1点も奪われてないクリスタル・パレスの試合を参考しているチームが多いのかもしれない。

集めて対角背後→大外アタック

このリヴァプールのハイライン、4-5-1プレッシングに対してシティは明確なプランを持ち、それを徹底的に遂行していった。

ここでの1番のキーパーソンになるのがロドリとベルナルドが中盤横並びだ。この日のシティのビルドアップはGKエデルソン+2CB。そしてベルナルドとロドリの5人が後方でゆっくりボールを動かして行く。その間に両SBは高い位置に上がり、前述した通りWGは内側に絞る。

その陣形が整うと後方でボールに関わる5人の選手が対角にリヴァプールのハイラインの背後を狙って長いボールを送り込み、ビルドアップの出口に設定した。4-5-1の陣形で一番分厚い中盤を避けながら、リヴァプールのハイラインを逆手にとりながら、この形から何度もサイドをえぐってチャンスを作り出していったシティ。

ロドリだけでなく、ベルナルドが中盤の底でボールに関わることで数的優位を作り出せる。またリヴァプールのプレスを集める効果にも。どんなに強烈なリヴァプールのプレスが来ても、ベルナルドは一度も選択を誤ることなくボールを動かしながら、プレスを集めてSBの上がる時間を作り出して見せた。

また一つベルナルドの凄みを見せつけられた気がする。いつも以上に相手のボックスで仕事をする回数は少なかったが、彼がチームにもたらす影響は変わらず素晴らしかった。

マンチェスター・シティのプレッシング

ここまでマンチェスター・シティの保持局面とリヴァプールのボール非保持局面の解説が長くなってしまったが、当然のことながら両チーム共にこの逆の局面でもそれぞれハイレベルのクオリティを見せつけるチームだ。

どんな状況でもお互い手を替え品を替え状況を目まぐるしく変えていった。それが出来てしまう手札の多さもこの両チームの強さの理由の一つだ。

マンチェスター・シティはリヴァプールのボール保持局面になるといつもと少しテイストを変えた陣形とタスクでボールへ圧力をかけていった。大枠はいつもと変わらずにハイプレッシングと、ボールを奪われた瞬間にまずすべきはトランジションプレス。

プレッシングからリヴァプールのミスを誘発させて前線からショートカウンターを発動させてチャンスを作り出すシーンも。特に先制ゴールは奪われた瞬間のトランジションプレスからリヴァプールのファールを誘発させ、そのリスタートからデ・ブライネがボールを受けて左足を振り抜いて生まれたゴールだった。

それではもう少しシティのプレッシングを詳しくみていこう。

4-1-3-2プレッシング

いつもは4-4-2や4-3-3でWGの外切りプレスでハイプレスを繰り出すが、この試合は4-1-3-2のような陣形でリヴァプールに圧力をかけにいった。

2トップにはデ・ブライネとスターリングが。その後ろにロドリとベルナルドが縦関係となりリヴァプールのアンカーを消す役割を担った(デ・ブライネがアンカーを消すタスクもあった)。左ワイドのフォーデンはアーノルドへの意識強く監視。右のワイドジェズスはより難しいタスクを遂行していた。アンカーの脇に降りてくるチアゴのコースを切りながら、左SBロバートソンへのプレス。ジェズスしかな出来ないタスクでリヴァプールの左サイドに蓋をしていった。

プレッシングが決まらずにリヴァプールに前進されるとすぐさま撤退。自陣に4-4-2のブロックを形成。高い位置をとるSBロバートソン、アーノルドにはジェズス、フォーデンがしっかり戻って対応。時には6バック気味になることも。

リヴァプールの前進は最終ライン手間

シティのハイプレスからショートカウンターを食らったり、ミスを誘われ、ボールを引き渡す時間帯もあったリヴァプール。しかしそんなシーンで引き下がるチームではないのがリヴァプール。シティが提示した4-1-3-2にプレスに対して一つの形を示し、状況を盛り返していった。

リヴァプールがビルドアップ局面で狙っていたのはシティ最終ライン手前のエリア

シティの前線のハイプレスの頭上を越える長めのボールを最終ラインの手前に落として、そのボールをワイドの選手が後ろ向きにキープし、チーム全体の押し上げる時間帯を作った。もちろんまずは背後を狙うも、そこはシティも細心の注意を払ってい為そう簡単には狙えない。

そこで前進のキーエリアになったのがハイプレスと最終ラインに生まれる本当に僅かなスポット。シティの4-1-3-2プレスの最終ラインの手前。しかも中央にはシティの中盤が一枚いるのでその脇の、WGの手前の僅かなスポット。

この手の長さのキックは非常に難しい。キックが手前すぎてはショートカウンターを喰らい、長すぎてしまえば簡単に相手にボールを手放す。本当に微調整が必要なキックが求められるが、リヴァプールの後方の選手たちは当たり前のように、ピンポイントにその僅かなスポットにボールを供給し、シティのハイプレスを空転させて前進してみせた。

リヴァプールもフィニッシュは大外経由

そしてボールを前進するとリヴァプールもシティ同様に大外を起点にフィニッシュを狙っていった。後方からの対角線状への大外への長いボール。こちらもシティと考え方は似た感じ。中央でボールを引っ掛け理リスクを回避しつつ、ワイドにはSBを含めた強烈なタレントがいるリヴァプール。そしてワイドへ性格へ蹴り分けられるCBや中盤の選手がいることを考えれば当然の形であり、リヴァプールの得意技。

シティもその対策としてワイドにフォーデンとジェズスを並べて大外のスペースを埋める役割を担ったが、その対策の上のクオリティを見せたリヴァプール。大外を起点に2度のリードを追いついてみせた。

お互い対策の上を越えたクオリティ

両チームともにこの日の試合の為に準備してきた戦術やプランをここまで簡潔にまとめてみたが、両チーム共にそれを上回るクオリティ。対策の対策を講じるスピードも凄まじく主導権がどちらのチームに偏ることは本当に少なく、目まぐるしく試合の状況が変化していった。

まさに世界最高峰のフットボールがこの90分に詰まっていた。

マンチェスター・シティはリヴァプールのハイライン、ハイプレスを空転させる対角への長いボール。ベルナルドとロドリを中盤底に並べてリヴァプールのプレスを後方に集めて背後のスペースを作り出す。トランジションからのゴール。らしい逆サイドポケットへの巻クロス。

リヴァプールは僅かに生まれるスポット(シティ最終ラインのサイドの手前のエリア)からの前進。らしい大外からのフィニッシュ。

両チーム共に目まぐるしく状況が変わる中でやり合い。目まぐるしく状況を意図的に変える両チームの手札の多さ。本当に素晴らしい90分だった。

見た方がいい。ではなく。見なくてはいけない。

この試合を見終わった時にあなたの心には本当に大きな衝撃、嬉しさ、幸福感。人それぞれ受け取り方は違えど何かをあなたの心の中に残してくれる。そんな素晴らしい90分だった。この試合は見た方がいい。ではなく。見なければいけない本当に世界最高峰の90分だった。

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近年このカードは本当にハイレベルな試合を我々サッカーファンに届けてくれる。ここまでフットボールは進化している。フットボールはこんなにエキサイティングで素晴らしんだぞ!と毎回サッカーの現在地、醍醐味を教えてくれる。

本当に感謝です。そして1週間後にこのカードがまた見られる幸せ。FAカップ準決勝。こちらもタイトルがかかった大一番。また違った最高の試合を私たちに届けてくれるはずだ!

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