1stlegを1-0で勝利したマンチェスター・シティがアトレティコの本拠地に乗り込んだ。

アトレティコは勝利しなければいけない状況の中、1stlegよりも攻撃的な姿勢を見せた。後半に入るとホームの後押しも背に、アトレティコが残された45分で猛攻を見せた。
全てはこの45分の為に。
この第四クォーターに猛攻を仕掛ける為に、シメオネが135分間をどんな戦術を使っても耐え忍んだ理由だろう。
これほどまでに攻め込まれ、ただただ耐えるペップシティは珍しいほどの猛攻を見せたシメオネアトレティコ。結果は果たして…
それではゲームを振り返っていきましょう!
アトレティコ・マドリードの5-4-1ブロック
試合開始からアトレティコは1st legよりも前への姿勢を示した。1点のアドバンテージがあるアトレティコにとっては当たり前の光景だろう。

アトレティコは5-4-1のブロックを形成し、ショートカウンターから早くシュートまで持ち込む狙いが試合序盤から見られた。

ボールを一方のサイドに誘導すると全体をボールサイドへ圧縮してボールを奪いに出ていった。時にはWBが縦にスライドをしてボールに出て行くシーンも。ブロックを形成しながらもジリジリと引く訳ではなく、あくまでもボールを刈り取るための攻撃的なブロック形成だった。
際立ったコンドグビアのプレス回避
シティを外へ誘導し、5-4-1ブロックの網の中でボールを奪っても対戦相手には次なるミッションがやってくる。それはシティの素早いトランジションプレスを回避することだ。このトランジションが今季のシティは今まで以上に鋭くしつこい。しかしこの試合アトレティコはその難題を回避し何度もカウンターフェーズへ移ることに成功した。
その起点となったのがMFコンドグビアだった。

シティのトランジションの圧力がボールに集まっても、コンドグビアが持ち前のキープ力と懐の深さでボールを逆サイドへ展開。また最悪ファールを誘発させてシティの攻撃をストップさせる働きも。ボールを奪う力に加えて、この試合はカウンターフェーズでも素晴らしい働きを見せた。
Embed from Getty Imagesカウンターフェーズに入ると快速WBが一気に大外を駆け上がりシティのゴールへなだれ込む。サイドの突破はもちろん、大外からシティの最終ラインが下がりきる前に、速いクロスをDFとGKの間に蹴り込む狙いも見せながら、カウンターから何度もシティのゴールを脅かしていった。
マンチェスター・シティのプレス回避
前半序盤アトレティコの圧力に押されていたシティだが、少しづつ相手の出方を伺いながらボールを動かし、ゲームを落ち着かせていった。
まずはボールをサイドに誘導された時GKエデルソンまでボールを下げてアトレティコのプレスをリセットさせた。

簡単に言ってしまえば無理をしなくなったイメージだ。横へ揺さぶりながらゆったりボールを動かすようになり、アトレティコのプレスを受ける回数を減らしていったのだ。
横への揺さぶりでアトレティコの横スライドが間に合わない瞬間にボールを前進させることで、安全にボールを前進させていった。
フォーデンとベルナルドのポジションチェンジ
前半中盤左WGのベルナルドとトップのフォーデンの立ち位置を変えたシティ。これが非常に効果的だった。中央に入ったベルナルドは、より中盤に下がってボールを受けるアクションを見せる。
これによりアトレティコの中盤のプレスのズレが生じる。プレスが定まらずにシティがより安定的に後方でボールを動かせるように。それだけではない。トップのベルナルドが下がれば当然アトレティコのDFラインも彼が気になってどうしてもラインが上がってしまう。

ベルナルドが落ちるアクションを起こすことで後方でより時間を作れ、SBが高い位置を取れる効果も。そして少し高くなったアトレティコのラインの背後に長めの浮き玉が入り、高い位置に上がったSBのカンセロが裏抜けしてペナルティエリアへ侵入するシーンも見られるようになった。
Embed from Getty Imagesそしてシティのこの日の1番の決定機もSBの上がりから生まれた。右サイドのマフレズからインナーラップをしたウォーカーへスルーパスが入ると見事にアトレティコのポケットを攻略。クロスをあげて最後はギュンドアンがシュートに持ち込むもポストにあたり得点とはならなかったシティ。
見事に鉄壁のアトレティコを分解したシーンだったがゴールへ結びつかなかった。このシーンでアトレティコに決定打を与えられなかったシティが、後半45分苦しい状況へと引き込まれた。
カピタンコケの気迫
後半に入ると是が非でもまずは1点が欲しいアトレティコがより前への姿勢を示した。カピタンコケの気迫がアトレティコを一層奮い立たせた。
前半見せていた5-4-1のブロックから、後半に入ると中盤を一枚削って5-3-2、4-4-2の配置でより前へ前への圧力を増していったアトレティコ。

ホームの後押しも背にシティに襲いかかっていった気迫のアトレティコ。これはハーフタイムでシメオネからの指示があったのか?それよりもカピタンのコケが自らチームを鼓舞するように勇気を出してボールを出ていったように私は感じた…
このカピの気迫を合図に、攻撃的姿勢が吹き出したアトレティコ。
全てはこの45分の為に135分間を耐え忍んできたかのように、アトレティコの逆襲が始まった。
何を言われようと全てはこの45分の為に
1stlegで見せたアトレティコの5-5-0ブロック。シュートゼロ。非常に守備的だった…何を言われようが135分間アトレティコが耐える理由が残り45分に詰まっていた。
Embed from Getty Imagesホームの後押し。残り45分で1点差。何が起こる分からないカオスの状態を作り出す為に耐え忍んだ135分間。残された45分はシティが耐え忍ぶ番となった。
幅と背後を取り続け、勇気ある前からのプレッシングで完全にシティを圧倒していったアトレティコ。これほどまでに苦しいペップシティを見るのは珍しいほど、アトレティコのプレッシャーは凄まじく鋭かった。
しかし、最後に耐え忍んだのはマンチェスター・シティだった。
Embed from Getty Imagesおわり
2試合合わせて見るべきゲーム。90分ではなく180分の中での駆け引き、ゲームプラン。チャンピオンズリーグならではの痺れる試合となった。
非常に我慢強さが求められる身体的にも精神的にも消費が激しかった。本当に「我慢対決」と表現していい対戦だった。
Embed from Getty Imagesアトレティコの残り45分の猛攻は本当に恐ろしく、これほどまでにシティが追い込まれるゲームは久しぶりだったはずだ。しかしシティはそんな状況の中でも2戦合計ゴールを割らせなかった結果は素晴らしい。
サッカーは戦術や戦略では語れない状況も生まれるスポーツ。感情や意志の強さで勝る試合もある。それがサッカーの楽しさでもあるが、そんな新たな強さをシティはこの苦しい我慢対決で見せてくれた気がする。
決して彼ららしいゲームとは言えなかったが、彼ららしくない形でも勝ちきる強さを手に入れたのかもしれない。いよいよセミファイナルまで進んだペップシティ。次なる相手は白い巨人。チャンピオンズリーグでどこよりも強いチームレアル・マドリード。
Embed from Getty Images悲願のCL獲得に為には超えなければいけない白い壁。今からワクワクが止まらない。また素晴らしいエキサイティングな試合を我々サッカーファンに見せてくれるはずだ。
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