プレミアリーグ最終節。21-22シーズンの王者が決まった日。
非常にドラマティックな締めくくりだった。もしかしたらペップシティらしくないそんな終わり方だったかもしれない。
90分の中に喜怒哀楽。誰も予想できないそんなドラマが詰まっていた。一本の映画を見ているようなそんな最高にエキサイティングな90分だった。
それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきましょう!

突き落とされたペップシティ
試合開始からシティがボールを持ち、ヴィラが辛抱強く守りカウンターを狙う構図が出来上がった。ある時間にはシティが8割近いボール保持率を記録することも。
ヴィラはシティにボールを持たれると4-3-3のブロックを形成した。中盤と前線に3人を並べて中央をしっかり固める陣形をとった。この陣形で思い出されるのは今季の開幕戦となったスパーズ戦。
まんまとスパーズの4-3-3中央閉鎖ブロックにはまり、カウンターを喰らい開幕戦を落としたゲーム。あの試合はシティは執拗に両SBがインサイドに入ってビルドアップをしており、それが逆効果となり中央で何度もボールを奪われたのは懐かしい。
そんな二の舞は踏まないように、ヴィラの4-3-3中央閉鎖に対してシティはサイドから前進していった。4-3-3は確かに中央に分厚さを確保できるが、空いてしまうスペースがある。それが4バックのSBの位置。シティのSBはヴィラの中盤3人の脇に立ち位置をとりボールを引き受ける。ある時はIHであるベルナルドとデ・ブライネが、それぞれのサイドでその位置をとってボールを引き受ける事でヴィラのプレスの遅れや、ズレを生じさせていった。

サイドを深く抉るシーンまで安定的に持ち込むことに成功したシティだったが、最後のフィニッシュの局面でヴィラの分厚いブロックを崩せない時間が長く続いた。優勝のかかる重圧なのか、パスのズレや、らしくない焦れた選択も目立ち攻撃が単調に終わるシーンもしばしば。
そうもたもたしている間に、ヴィラが攻撃の好機を見出していった。
狙いはセカンドボール回収。そしてSBの駆け上がり。
ヴィラは中央にコンパクトな4-3-3。攻撃時は4-3-2-1の陣形を生かしてカウンターから好機を作り出した。最前線のワトキンスに長いボールが入るとその周辺に多くの選手が集まってこぼれ球を回収しに行く。中央に人が密集する事でワトキンスの周りには多くの選手がおりセカンドボールの回収率がたかったヴィラ。しかし中央に人が多いとサイドに人がいないのでは?その問題を解説するのがSBの長い距離のランニングだった。

セカンドボールを回収し前向きな状況になると、ヴィラのSBは長い距離を一気にサイドを駆け上がる。SBの駆け上がるスペースを空けるために中央に人を密集させたとも言えるかもしれない。
そんな狙いがヴィラのゴールには詰まっていた。
まずは先制ゴール。
Embed from Getty Imagesドウグラス・ルイスが最終ラインに落ちてボールを引き受けると一気にドリブルで前進。そして列を落ちてラムジーがボールを引き受けると彼もドリブルで前進。前向きでボールを運ぶ仲間の状態を見て左SBリュカ・ディニュがオーバラップ。サイド深くでボールを受けると高精度のクロスを供給。そしてこのクロスに合わせたのが逆SBのマティ・キャッシュだった。両SBの長い距離を走ったプレーでシティにさらなるプレッシャーをかけるゴールを奪ってみせた。
そしてシティを絶望の淵へ突き落とした2点目。
69分。GKからのゴールキックがシティ陣内に蹴り込まれる。これにワトキンスが競り勝つとセカンドボールを拾ったコウチーニョがシティのペナ付近で前向きに。華麗なワンタッチで相手をかわしGKエデルソンの逆を完全につくシュートをゴールへ突き刺した。
シティに残された時間は20分。しかもビハインドが2点。勝利の為、優勝の為に必要なゴールが3つ必要となった。諦めたのか?優勝はリヴァプールの元へ?いや最高のドラマはここからだった。
貫いた攻めの姿勢
1点リードされて後半のピッチに入ったシティ。前半ロングボールの標的となっていたフェルナンジーニョに変えてジンチェンコを投入。右SBにカンセロ 、2CBにストーンズとラポルトが並ぶ最終ラインとなった。
明暗を分けた交代策
後半一段と攻めへの姿勢を強めていったシティだがゴールが奪えない。そんな状況の中ペップがいつもより早く交代策を講じた。勝てば優勝という状況の中、もたもたしている時間はないというのも分かるが、決して出ている選手の調子が悪いわけでもなかった。そんな状況の場合、今季のペップの采配を見ている人からしてみればこのまま交代はしないのかな?と思った人も多かったはず。しかし、この日のペップは違った。
Embed from Getty Images58分にマフレズを変えてスターリングを。68分にベルナルドに代えてギュンドアンを投入して攻撃的な選手をどんどん投入。ロスタイムを考えても残り20分以上ある中で交代枠を全て使い切ることに。この交代策で一気に逆転のエンジンをかけたかった直後、ヴィラに一瞬の隙を突かれて点差を2点に開かれ、そんな逆転ムードを一気に掻き消されていった。落胆する選手たち。ホームのファンの多くもこの時点で優勝を諦めた…どうせリヴァプールはゴールを挙げて逆転優勝されてしまうと…
しかし、本当のクライマックスはここから始まった。

ヴィラは2点目を奪った直後に、コウチーニョに代えてナカンバを投入。突き放すゴールを奪ったコウチーニョの疲労度を考えての交代だったはず。またナカンバはコウチーニョよりも守備的な選手。残りの時間、点差を考えてジェラードはその選択をしたのかもしれない。
対するシティは自分たちで確実に優勝を決める為に3点が必要になった。残りの時間を考えても諦めたくなる状況だったかもしれないが、彼らは自分たちのスタイルを貫いた。
それが最高のクライマックスを引き寄せた。
手間より手数
一番初めに話したようにヴィラは4-3-3ブロックに対して、安定的にサイド深くまでボールを供給できていたシティ。しかし、そこからクロスを上げてもヴィラのブロックに何度も跳ね返される状況だった。そこで後半左SBに左効きのジンチェンコが。右のワイドには左利きのマフレズに変わって右利きのスターリング入ったことで手間をかけずにクロスを上げるシーンを作り出した。
手間とはなんなのか?前半左SBには右利きのカンセロ。右のワイドにはマフレズが。それぞれの大外は逆足の二人が担っていた。確かに大外深くに安定的にボールは送り込み、カンセロとマフレズが1vs1になるシーンを多く作り出していた。しかし彼らはクロスを上げるにしても、一度切り返して自分の利き足に置く手間をとっていた。その手間がヴィラの守備を整わせる時間になっしまった。
そこで左サイドには左利き。右サイドには右利きを置くことで、切り返す手間を省きクロスの手数を増やしていった。そしてベルナルドに変わって投入さえてたギュンドアン。彼に求められた仕事は昨シーズンストライカーへ片鱗した姿そのもの。ベルナルドよりもゴールへの嗅覚が高く、クロスへの入り方がべらぼうに上手いギュンドアンが大仕事をみせた。左ワイドのフォーデンは右サイドのクロスに対して中に入って合わせるアクションを繰り返した。この動きにつられて右SBキャッシュもやや中に。そうすると開くスペースが大外。フォーデンとクロスする形でギュンドアンが右サイドからのクロスボールをファーで合わせた。ギュンドアンが奪った1点目。そして3点目の逆転ゴールと共にヴィラの右SBキャッスの後ろから走り込んで奪ったゴールだった。
選手に注目👀
— Manchester City (@ManCityJP) May 26, 2022
今回注目するのはアストン・ヴィラ戦でのギュンドアン!#ManCity pic.twitter.com/4avcXS7qOd
連覇。そして新たなチャレンジの始まり。
5分間で3得点の奇跡の逆転劇で、マンチェスター・シティはプレミアリーグ連覇を果たした。非常にドラマティック。ペップシティらしくはない勝ち方で優勝という最高の形で締めくくった。
チャンピオンズリーグの悲劇の敗退から、リヴァプールの猛追のプレッシャーをはねのけ、最後はボロボロにながらも首位の座をリーグ15節から誰にも渡すことはなかった。
そんな想いや、このリーグの過酷さ。そして成し遂げた凄さはペップの涙に全部詰まっていた。
ペップの涙が全て👏 pic.twitter.com/qUc9Ar5Gux
— inamo (@inamo18) May 22, 2022
プレミアリーグ優勝、そして2連覇本当におめでとうございました。そして新たなチャレンジへの始まり。そう来季は3連覇への挑戦。そして悲願のチャンピオンズリーグ優勝のチャレンジの始まりだ。まずは今季も大いに楽しませてもらい、人生を豊かにしてもらいました!
ありがとうペップシティ!また来季も会いましょう!

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