J1を舞台に、27年間、唯一続く宿命の一戦。
それがThe CLASSIC。
2019年4月28日平成の終わりが近づく日に。平成最後のThe CLASSICが行われた。4万人近い観衆が日産スタジアムに集まる中、暑い日差しを浴びながら、熱い熱い90分闘いが繰り広げられた。試合巧者のアントラーズに対して、マリノスは曲げずに、焦れずに、スタイルを貫き通した。逃げも隠れもしないマリノスの戦う姿は、集まったファンの心に大きな勇気を与えてくれただろう。両チームのプライドを試合は非常に熱く熱い闘いだった。
両チームのスタメンはこんな感じ!

アントラーズは4-4-2。古巣対決になるFW伊藤が頂点で、その下に土居が入る感じだった。三竿がスタメンに復帰し、永木が右SBに着いた。怪我人が続出中のアントラーズ。大岩監督の頭を悩ませているだろう。それでも、やはり一人一人の選手のクオリティは高く、そしてアントラーズのプライドを胸に闘っていた。
マリノスはいつも通りの配置。喜田がアンカーに戻り、左のワイドに遠藤が入った。GK朴が怪我からの復帰。予定よりも早く復帰できたのはマリノスにとってはポジティブな要素だっただろう。左SBにはJリーグ初スタメンの和田が入った。この試合和田、遠藤、天野の左サイドのユニットは非常に機能していた。新たなマリノスの強みになりそうな予感!
マリノスがボールを握り、攻めて攻めまくる。アントラーズは自陣にブロックを敷き、マリノスの攻撃を待ち構え、カウンターを狙う戦い方となった。
キックオフから前半まではアントラーズの戦術的狙いがはまっていた。
アントラーズの狙い
アントラーズの守備
マリノスにボールを握られることはしょうがないと戦術を組んできたアントラーズ。自陣に4-4のブロックを敷き、マリノスの攻撃を待ち構えた。
2トップも前からプレスに行かずに、マリノスのビルドアップ時には自由を与えた。あくまでビルドアップ時にはマリノスに自由にやらせてもいいよ。自分たちの守備ブロックに入ってきたら(特に縦パスに対しては人に強くいく)ガツンとボールを狩にいく戦術を採った。
守るだけではなく、攻撃の狙いも隠されている。
アントラーズの攻撃
マリノスは攻撃時に非常に流動的に人が動く。ポジションを崩しながら攻め込んでくる為に人を掴まえずらい一方に、逆にボールを奪った瞬間に広大なスペースがあく。特にSBの裏。CBの脇。逆サイド。わざと攻め込ませて、カウンターを仕掛けるスペースを創り出す為にマリノスに攻めさせた。
攻めさせる戦い方でマリノスから勝ち星を奪い去ったのは前節のコンサドーレだろう。
レオ・シルバの質的優位
レオ・シルバの高いキープ力とボールを刈り取る力。これは今のアントラーズの1番の強みかもしれない。ボールを中盤で奪う力はJリーグでも屈指だろう。それだけではなく、高いキープ力も兼ね備えている。グランパス戦で魅せた中央からドリブルでぶち抜いてゴールを奪ったシーンは今でも鮮明に覚えている。
この試合でも攻撃のスイッチ、守備のスイッチをバンバン入れたレオシルバ。彼がボールを持つと攻撃にスイッチが入ったかのように、アントラーズの選手がランニングする。彼のことを信頼しているんだろう。必ずパスがくる。必ず前に運んでくれると言う信頼感。そして、先制点はレオシルバからの今のアントラーズの強みが出たゴールだった。
安西の走力!
見事なショートカウンター!
アントラーズの誤算
キックオフ序盤こそ、狙い通りショートカウンターから見事に先制点を奪うことに成功した。そして先制点を早々に奪うことができて、マリノスがさらに前のめりになることを想定して、よりカウンターを仕掛けやすくなる。しっかり守備を固めて、機を観て攻め込むぞとう意思はチームとしてあっただろう。
しかし試合時間が過ぎるにつれて、マリノスにボールを保持され、動かされた。そうするとスタミナがどんどん削られてしまうのは明確だろう。
試合序盤こそはカウンターを仕掛けるパワーやラインを押し上げるパワーは十分にあったが。そこでしっかり走りきって、奪いきって、守りきって、勝ちきるのがアントラーズの最大の強さだったが、この試合では思った以上にスタミナの消費は早かった。怪我人続出の影響や、ACLを戦う中での疲労の蓄積、要因は様々だっただろう。
アントラーズはいくら攻められたも90分守りきっちゃう力があるチーム。勝ちきる!力はJリーグの中でもナンバー1の力があるくらい。どちらに転ぶかわからなかったゲームかもしれない。マリノスが圧倒した勝ち方をしたかと言えばそれは違うのではないか。
しかし、マリノスが勝利を手繰り寄せた要因も多くあっただろう。前節同様に自分たちのビルドアップのミスから早々に先制点を返上した。前節とは違い、そこから崩れることはなかった。そして諦めず、仲間を信じて、自分たちのスタイルを貫き通すことゲームをひっくり返した。
ミスを引きずらずに、仲間を信じた
失点に繋がるミスをしてしまった、マリノスの心臓喜田。しかし彼は下を向くことなく前を向いて攻め続けることをやめなかった。
「責任はあったが、あくまで自分のミスであって、技術的なミス。みんなには前向きにプレーして欲しかったから、それを自分の姿勢で魅せていこうと思った。」
「ひたむきに前向きに戦って、仲間のおかげで勝ちきることが出来た。」
なんてメンタリティ。喜田と言う男は凄いな。

アントラーズに先制されても、ひたむきに、
マリノススタイルを貫き通した。
マリノスの狙い
ハーフスペースからの攻略
4-4のブロックを敷くアントラーズに対して、間でボールを受けることで攻撃の攻略に挑んだ。特に活用したのはハーフスペースだ。左サイドでは遠藤が、右サイドでは仲川もしくは三好が大外に張り、相手のSBとSHを釣り出して、ハーフスペースを開門させ、そこにスペースを創り出した。
左サイドのハーフスペース

この試合非常に大きかった
①遠藤が大外に張って、天野もしくは和田、マルコスがボールを受けて前向きでプレーする。
②遠藤が大外からドリブル突破。中央を固める相手に対して大外から切り込んだ。(天野、和田がハーフスペースにいることで、大外の遠藤がフリーになる)
右サイドのハーフスペース

①仲川が大外に張って、三好もしくは広瀬、マルコスがボールを受けて前向きでプレーする。
②三好が大外に張る。それにつられてレオシルバがよく付いてくるので、自然とハーフスペースが空くので、三好のドリブルスペースが空き、お得にのドリブルでゴール前に侵入した。
③仲川の大外からのバックドア。これは彼のお得意技。
幅を使った攻撃
今まであまり見られなかった、大きなシンプルな展開。逆サイドからのロングボールのサイドチェンジで大外の遠藤が縦に突破。中央を経由してのサイドチェンジ(こちらはよく見受けられるシーン)。幅を非常によく使えていた。大きな幅を持ってボールを動かすことでアントラーズの守備陣を広げさせ穴を空けることに成功した。
中央からの崩しにこだわるのがマリノスのスタイルかもしれないが、サイドをもう少しシンプルに使えばもっと攻撃の幅が広がるのになと感じていた人は多かったのでは?中央を活かす為の外であって、外を活かす為の中央。両方バランスよく使いながら攻め込めたらより攻撃力はアップしていくだろう。
SBが逆サイドまで
戦術的に決まっていたのかは分からないがよく見受けられたシーンだ。SBが逆サイドまでボールにより、数的優位を作る意図があったのだろう。この形はこれから数試合見ないとハッキリとは分からないので追って観ていきたいと思う。
こういう戦術的な狙いを持ちながら攻め続けたマリノス。それでもアントラーズのゴールをこじ開けることは出来なかった。最後はゴール前で魅せたクオリティがゴールを生んだ。
Embed from Getty Imagesボックス内のクオリティ
1点目 仲川のクオリティ
仲川のスピードを活かした突破は大きな武器だ。ゴールシーンが生まれる前までのプレー全て縦に突破をしていた。ずっと縦に行っていたので中にカットインした時に相手の対応が遅れた。そして左足を振り抜き同点ゴールを獲った。仲川にボールが渡るまでの過程も見事だった。喜田からカットから三好がハーフスペースで受け、仲川にパス。良い距離感でのパス交換。
仲川は同点弾同様に同じような位置からもう一度カットインから左足を振り抜いてポストを叩くシーンがあった。このシーンが彼の形の一つになればゴールを量産できるだろう。アシストが多い仲川。それは縦に突破してクロスをあげるパターンが多いのも一つだろう。このようなシーンが増えれば、アシスト同様にゴールの数もどんどん増えていくだろう。
2点目 広瀬とマルコスのクオリティ
マリノスは一瞬の隙を見逃さずに逆転ゴールを奪った。
アントラーズの左サイドでのファールで笛が鳴る。笛と共にアントラーズ左ハーフの白崎が交代で金森がピッチへ。再開の笛でマリノスが近くの広瀬へパス。ここで一瞬ではあるがアントラーズのマークの受け渡しが遅れる。それにより広瀬は楽々前を向き、少しの時間ではあるがプレーの選択を選ぶ時間が生まれた。それに反応したマルコスの裏抜けに対して、広瀬の精度の高いロングフィードでマルコスはゴール前に侵入。
ここでマルコスはクオリティの高さを示す。アントラーズのCBをブロックしながら、GKの逆をつくニアへのシュートでゴールに流し込んだ。トップスピードの中で冷静に状況を把握しながらのシュート。もうアグエロだよね。本当に良い選手。ゲームを作れるし、こんな動きも出来るし、ミドルも打てるし。サボらず前からガンガン守備できるし。
そしてもう一人。広瀬のパス出しセンス。
このアシストのシーンの他にこの試合では決定機を演出するスルーパスを2本ほど出した。彼の攻撃のクオリティも非常に高い。
スタッツで振り返る
最後にスタッツを図にしたもので試合を振り返る

ほぼアントラーズ陣内にボールがあったことがわかる。この数値からもアントラーズは自陣でブロックを敷きマリノスの攻撃を待ち構えた。逆に言えば長い時間マリノスが攻め込んだとも言えるだろう。攻めていたのか、攻めさせていたのか。最初は攻めさせていたかもしれないが、試合経過とともに体力の消費と共に攻められいき、マリノスに68%のボールを握られ、17本ものシュートを浴びてしまった。こんだけ押し込まれていたら攻撃はカウンターしかないでしょう!とも言えるだろう。
マリノスは押し込んで攻め続けられたことがよく分かる。772本のパスと68%のボール支配率。チーム走行距離は116km、チームスプリント回数200回とよくボールを動かし、よく走ることでアントラーズをかき回した。2ゴール共に右サイドから生まれた。しかし左サイドに59%の割合でボールがあった。左サイドでゲームを組み立て、右サイドで仕留める!のがパターンになっていたのかもしれない。
課題もある。それはCK。CKが14本もあった。CKからのゴールが0だった。このクオリティをあげれば得点力は更に上がるだろう。それだけ押し込み、攻め込めている要因でもあるが。
連敗をしないことは非常に良いことだ。前節の悪い流れを断ち切れる力が付いていることは非常に良きことだ。次節は元号が令和になって初めてのゲーム。さぁマリノスよ輝かしい時代を築いていこうじゃないか!
マリノス 2−1 アントラーズ
得点者
マリノス:仲川、マルコス
アントラーズ:安西
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