チャンピオンズリーグGS第3節と同カード。その時はホームのシティが5発を奪うプレミア王者の強さを存分に発揮した試合でした。リベンジに燃えるアタランタのホームに乗り込んだシティ。今節も壮絶なゲームとなりました。この試合キーとなったのが「適応力」でした。まずはシティが見せた前半の戦いぶり。アタランタの戦術に適応して、分析して、相手の弱点を突く戦い方で前半を圧倒しました。決定機もいくつもあり、前節の悪夢がアタランタの頭にはよぎったかもしれません。しかし、それに臆することなく、後半になるとシティの戦いに「適応」して反撃をしました。ホームのアドバンテージも活かして前半の戦いとは一変して主導権を握っていきました。そして試合終盤にシティをアクシデントが襲います。そのアクシデントをチャンスに出来なかったアタランタとそれにしっかり適応したシティ。アクシデント後のシティの選手の試合巧者ぶり、ゲームの終わらせ方は見事でした。
この試合も非常に見所がたくさんで面白かったですね。
それではゲームを見ていきましょう。
前半
Embed from Getty Images前半圧倒したのはアウェイのシティだった。何度もアタランタの守備網を掻い潜りチャンスを作っていった。その中心になっていたのがGKエデルソン。エデルソンのキックの「質」でアタランタの守備戦術を破壊していった。前からアグレッシブに人数をかけてくるアタランタのプレスを逆手に一気にチャンスを演出したエデルソンの正確なロングフィード。前半はエデルソン砲が何度も炸裂した。
アタランタの守備
アタランタは5-3-2もしくは3-4-1-2の配置でシティにプレスに行った。前線からハイプレスをかけに行く。
シティの2CBとアンカーにも明確なプレスをかけに行く選手が決まっている。IHの2人にもマークが付く。とにかく中央でボールを奪う狙いがあった。そこで比較的マークが浮くのがシティのSBだった。彼らには最初からマークは付かなかった。SBにはボールが入ってからアタランタのWBがプレスにいくことになっていた。

アタランタのWBのスタートポジションは5バックの位置だった。まずはシティの3トップを5バックで監視することがファーストミッション。浮くシティのSBにはボールが入った時にスライドをして対応をする狙いがあった。
そしてアタランタの守備のもう一つの大きな特徴はマンマークでのディフェンスだ。エリアを守るではなく、人に付いていきボールを受けさせない、もしくはボールを受けても難しい状態でミスを誘発させる狙いがあった。これを可能にするの為には対人の強さや、人に付いていく豊富な運動量が求められる。アタランタにはそれを可能に出来る選手は揃っている。
アタランタにはこのような明確な守備のタスクがあったが、それに上手く適応していったシティ。
フリーになるSBとマンツーマンの守備を上手く活かしてシティが攻撃を組み立てていく。
シティの狙い
まずはビルドアップ。
ここで活躍したのがGKエデルソンだ。

前がかりになる相手に対して、エデルソンが意図も簡単にSBへパスを供給する。狙いはフリーのSBへのパス供給。正確で早いボールのお陰でシティの両SB選手には時間とスペースが与えられて前進することが出来た。

アタランタもシティのSBをいつまでもフリーにさせてはいない。SBにボールが入るとWBもしくは3CBのサイドの選手がプレスにくる。これでシティのビルドアップが防げる!訳がなく、エデルソン砲がまたもやアタランタに襲いかかる。5バックの選手がボールにプレスに行くということは後方が手薄になる。シティの3トップは前線に張っている状態なのでWBがシティのSBが気になってマークに行くと今度は前線が3トップvs3CBの数的同数になる、そうなるとエデルソンが今度は前線に高精度のボールを供給してビルドアップを成功させた。
次にフィニッシュワーク
ビルドアップが成功し、アタランタ陣内に入る。そうするとアタランタはほぼマンマークの状態でシティの選手に圧力をかけていった。シティはアタランタのマンマーク状態を逆手にとってフィニッシュまで持ち込む。マンマークというより、人にアタックすると言った方が伝わり易いかもしれない。とにかく人に付いていくのでシティにとっては常にマークがいる状態だった。人に付いてくるのでシティの選手が動けばどこかにスペースが生まれる。
それを利用して裏を取りまくってゴール前に侵入していたのがデ・ブライネだ。

SBがボールを持つ。WGのマフレイズが幅を取る。そうするとアタランタのWBはマフレイズにマークに行き、フリーでボールを持つカンセロには左CBがプレスに行く。そうすると裏のスペースが空く。そこへデ・ブライネがランニングして裏を取りゴール前にクロスを上げてチャンスを作り出した。
そしてシティの先制点も連動したランニングを重ねることでアタランタの選手を動かして、ゴール前にスペースを空けてゴールを奪った。
6分 ベルナルドがアタランタ陣内でボールを回収。前を向くと、前線のジェススが斜めにランニングする。それにつられてアタランタの中央CBのパロミノがジェズスをマークする為にサイドに流れる。ベルナルドからジェズスにスルーパスが入る。それに合わせて今度はスターリングがジェズスの空けた中央のスペースに走り込み、ジェズスからワンタッチでフリックパスを受け、簡単にペナに侵入してGKと1vs1の状況を作りだし、しっかり流し込み綺麗な崩しで先制点を奪い去った。
Embed from Getty Images前半はこのままスコアは動かずにシティが1-0リードでハーフタイムへ。シティが圧倒した前半だった。アタランタは1点でよく抑えられたという感じだ。実際前半にはPKも獲得したがジェズスが外してリードを広げられなかった。これを決めていたらシティはもう少し楽にこの試合を進められただろう。
後半アタランタが適応力を見せる。
後半
アタランタが前半の戦いから一変した戦いを見せる。ハーフタイムでしっかり修正した、ガスペリーニ監督の手腕は凄い。
修正したプレス
後半に入るとアタランタはプレスの掛け方と選手の配置を変えてプレスをかける。ゴメスを一列前に上げて2トップの位置でプレスに行かせる。2トップの左に上がったゴメス。左がキー。まずは右SBのカンセロのパスコースを切りながら、機を見てオタメンディにもプレスに行く。ゴメスは非常に感度が高い選手。色んな状況を感じ取りながらシティにプレスをかけていった。なぜ左にゴメスを配置したというと、ボールをアタランタの右サイド、シティの左SBのメンディへボールが入るように誘導する為だった。

なぜメンディのサイドにボールを誘導したかは分からないが、後方でボールを持った時には、メンディよりもカンセロの方が細かい動きができたり、捕まえずらいからだったかもしれない。メンディはサイドを駆け上がり高い位置でボールを受けるとその破壊力を発揮するが、ビルドアップでは少し難があるとガスペリーニ監督は踏んだのかもしれない。
メンディ自身はフリーな状態でボールを受けるが、今度はパスコースがアタランタに埋められている状態に。メンディにさぁどうするという感じで迷いを与える。その間にプレスにいったり、メンディが中央へパスを出すとアタランタの狙い通りという感じで中央を固めるアタランタのプレスが牙を剥きボールを奪っていった。
Embed from Getty Imagesアタランタがボールを奪うシーンが増えていった。シティは前半の見せたような崩しは隠れ始めていった。アタランタの修正も見事ではあったが、やはりGKエデルソンがハーフタイムで負傷交代したことは大きかった。交代で入ったブラボもしっかりボールを蹴れる選手ではあるが、エデルソンと比べてしまうと、ビルドアップに関しては全ての選手が劣ってしますだろう。それほどエデルソンのキックは素晴らしい。
狙いの攻撃も出始める
WBを使った攻撃がで始める。WBが高い位置に上がり、ワイドを使ったアタランタの狙う攻撃が少しづつ見え始める。そしてWBにシティのSBが食いついてマークに行くと、今度はSBとCBの間に前線の選手がランニングで抜け出して裏をとる。またWBが上がることでシティの陣形を横に伸ばすことにもなり、中盤のギャップも空いてくる。そこにパスが入って前向きでボールを運ぶシーンも見られてきた。アタランタもボールを持ったら確かな技術や関係性でボールを動かす。段々とアタランタの攻撃が活性化してくる。
Embed from Getty Imagesそして後半早々に同点弾を奪う。
49分 上がったカンセロの裏をとってゴメスが左サイドへ抜け出してボールを引き出す。オタメンディとマッチアップになると、抜ききらずにサイドから左足のクロスをファーにあげる。そのボールにパシャリッチが頭で合わせてゴールをもぎ取り同点に。
シティを襲うアクシデント
その後も後半は勢いを持ってアタランタがゲームを運んでいく。シティも時折チャンスを作り出すも、流れはアタランタへ。しかし、アタランタも、シティも中々なゴールを奪えない状態が続き、気付けば残り10分。
そして迎えた80分。
中盤でギュンドアンがバックパス。これがアタランタにカットされゴメスが前向きでボールを運びショートカウンターへと。イリチッチへスルーパスが入ると最終ラインを一気に突破。たまらずGKブラボがペナから出てきてイリチッチにアタックすると倒してしまい、GKブラボ一発退場。
アタランタは決定機を決めたかっただろうが、GKブラボ退場となり、数的優位な状況へとチャンスに。
シティにとっては1人少ない状況になる。しかも退場したGKブラボの代わりに投入するGKがもうベンチに居ないのだ。アクシデント発生。フィールドプレーヤーの誰かがやらなければいけない状態でカイル・ウォーカーがグローブを着用して登場!ウォーカーもまさかという感じで苦笑いするシーンも。
さぁこの後の試合どうなるのだろうか?
シティの対応力
アタランタにとっては思ってもない形で逆転のチャンスが訪れる。数的優位で、しかもGKがカイル・ウォーカ。しかし、この状況でのシティのゲーム運びが本当に見事だった。
Embed from Getty Images迷ってしまったのはアタランタの方だった?
GKがウォーカーだからそれが逆にどうやって攻めるんだという感じでピッチの選手に迷うプレーが目立っていた。クロスをあげるのか、遠い位置からでもシュートを打つのかと迷っている感じだったアタランタ。
それに対してシティ。状況的にはやる事ははっきりしていたかもしれない。残り時間も少ないし、引き分けに持ち込む意識が共通していた。
ゲームの終わらせ方が非常に上手かった。こんな状況になっても試合巧者はシティだった。アグエロがファールをもらったり、ベルナルドがわざとコーナーキックにして時間を経過させていったりと、一人一人が冷静にゲームを進めていった。
GKウォーカーがボールを触ることもほとんど無く、ゲームを終わらせにいったシティ。
ゲームはこのまま終わり、両チーム勝ち点1を分け合った。
おわり
Embed from Getty Imagesアタランタは前節シティに大敗していたが、今節ではその戦いを払拭させる、見事な適応を見せてシティ相手から勝ち点1をよくもぎ取りました。シティは前半のうちに仕留めるチャンスがあっただけに満足は行かなかったかもしれないが、後半の終盤のアクシデントにも慌てることなく、ゲームを終わらせにいったのは本当に見事でした。
前半、後半で両チームの置かれる状態が大きく変わる面白いゲームでした。悪い状態を修正する両チームの適応力、そして両監督の手腕が見事でした。アタランタはチャンピオンズリーグの舞台で初めての勝ち点。残りのGS2節の巻き返しの兆しになるか。
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