3連勝で迎えたマリノス。今シーズン初の4連勝を目指してホームに迎えるはコンサドーレ札幌。ルヴァンカップ決勝では川崎フロンターレとの熱い熱い熱戦を繰り広げて多くのサッカーファンの心を踊ろらせたのは記憶に新しいですね。
両チームともに超攻撃型のスタイルが特徴で、この試合もキックオフから試合終わりまで走りまくりの、闘いまくりのフルスロット状態の90分で非常にエキサイティングなゲームでした。タイトル通り、両チームとも守る気なんて微塵もなく、リスク上等でゴールに迫っていく試合は見ている者にとっては面白く、新たなサッカーファンが増えそうなゲームでしたね。
「横浜にシャーレを」
持ち帰るには絶対に負けられないマリノス!絶対に勝点3が欲しい気持ちがサポーターからも、ピッチの選手からも感じましたね。それではゲームを見ていきます。
前半
試合早々からいきなりゲームが動き出す。両チームインテンシティが高く激しいディエルの攻防が三ツ沢のスタジアムで繰り広げられる。バッチバチの熱戦だ。
8分間で3点
前半2分 早速ゲームが動く。コンサドーレのバックパスをエリキがGKク・ソンヨンから奪い去り、無人のゴールに流し込んで早々に先制したマリノス。エリキが速かった。確かにコンサドーレのバックパスも弱かったし、ク・ソンヨンのファーストタッチも少し長かったが、エリキが僅かな距離でトップスピードに持っていった初速が凄まじく、あっと言う間にゴールを奪い去った。
これだけでは終わらないマリノス。
前半4分 コンサドーレの4バックの守備をSB松原の縦パスから崩していく。SB松原がボールを持つと、WG仲川が大外に張って左SB菅を釣り出して、チャンネルを空ける。釣り出したタイミングで仲川がバックドアで裏をとり、縦パスがSB松原から入りゴール前へ侵入。一度はコンサドーレの戻った守備陣にカットされるもトランジション早くボールを回収して、仲川がセンタリング。これにエリキが頭で合わせて2点目。
Embed from Getty Images電光石火の攻撃で2点を奪い去った。強ぇマリノスと誰もが印象付けられただろう。
しかし、このゲームまだ落ち着かない。
今度はコンサドーレだ。
前半8分 CKから福森の高精度キックがニアに上がる。彼のキックは本当に精度が高い。ジェイが頭にピンポイントヒットするがGK朴がセーブ。しかしこぼれ球を鈴木に押し込まれて1点を返される。
コンサドーレも決して引く気なしと言う感じだ。壮絶な打ち合いの幕開けだ。
10分過ぎから両チームの狙いが少しづつ見え始める。
コンサドーレの守備は決して引くことはせずに、前からマリノスに圧力をかけにいく。攻撃ではシステムを動かして、可変システムで位置的優位、数的優位の状況を作って攻撃を仕掛けていった。
コンサドーレの狙い
コンサドーレ攻撃
ボール保持時にコンサドーレは可変システムになる。

左SB菅が高い位置に上がり、チャナティップがインサイドに入る。時には鈴木も落ちて楔を受けたりするが、鈴木、ジェイ、フェルナンデス、左SB菅の4トップ状態になり、マリノスのハイラインの裏をまずは取りにいく攻撃を仕掛ける。
それに合わせて後方は、CB福森がスライドして、CHの深井が一列下がって3CBになり守備のリスクをケアし、可変システムが完成する。
マリノス右SB松原はチャナティップがインサイドに入ると釣られてプレスにいき、上がったSB菅がフリーになるシーンもあった。これがコンサドーレの1つの狙いだろ。
コンサドーレのこの狙いが見えるシーンが。
13分 チャナティップがインサイドでボールを受ける。それに対してマリノスは強くチェイシング。松原もボールアタックする。そこで奪え切れずに左SB菅にボールが入り、彼から前線のジェイと鈴木目掛けて滞空時間が長いボールGKとDFラインの間に入る。ジェイが頭で反らせて、鈴木がボールを拾いシュート。決定機を演出した。
コンサドーレの一番の狙いはマリノスの背後。ここは強く意識していた。右SHフェルナンデスと左SB菅は何度も裏を取るランニングを見せるし、前線のジェイと鈴木は強さと高さを活かす攻撃を見せる。
そしてもう一つ、コンサドーレの特徴的な攻撃時の可変システムのキーマンがCB福盛だった。
偽CB福森
左SB菅が高い位置を取れるのは彼の攻撃力や運動量がある事はもちろんだが、それを押し出して、裏のスペースをケアできるCB福森の存在が大きい。CH深井が一列下がって、そこでもDFとしての仕事が出来るのもの大きだろう。
しかし、一般的にも、CBが広がって、CHが一列落ちて3CBになる形はよく見るが、コンサドーレの福森の動きはこれだけではない。福森がもう一列ワイドに、時にはSHの位置まで上がるのが最大の特徴だ。

15分 CH深井が一列下がってCBキム・ミンテとボールを動かす。あれ?もう1人のCB福森がいないぞ?そうしていると今度はもう一方のCH荒野がボールに寄り、ボールを動かすと、一気に前線にロングフィード。そしてそのボールを競ったのはCB福森。この時マリノスの4バックに対してコンサドーレは4トップ状態。福森が競ったボールをSB菅がボールを回収して前を向きジェイへスルーパス。ここは惜しくもオフサイドになってしまったが、チャンスになったシーンだ。

福森の技術の高さが可能にする戦術だ。CBもSBもSHも難なくこなすハイブリットな選手だ。
これ以外にも、この形は前半は見られた。左サイドで数的優位を作る戦術だった。CB福森とSB菅が左サイドの高い位置をとった時にボールが入ればチャンスになる。この配置を左サイドで作っているがボールが入らなかったシーンもあった。コンサドーレにとっては悔しかったかもしれない。入ればチャンス。マリノスにとってはピンチになっていただろう。
マリノスのハイプレスを何とかして掻い潜ろうと色々と試行錯誤していたコンサドーレだったが中々、自分たちがボールを保持する時間もなく、攻撃の狙いであるマリノスの背後も時間経過とともに取れなくなっていった。マリノスのオフサイドトラップにまんまとかかっていってしまった。
前半だけでマリノスはコンサドーレからオフサイド8本を奪った。少しづつコンサドーレの攻撃のチャンスを摘んでいった。
コンサドーレの守備
コンサドーレは引くことはせず、前からマリノスのボールを奪いにいった。一方のサイドにボールが入ると、ボールサイドの逆サイドのSBが大外のマリノスのWGを捨てて中に絞ってカバーに入り、その他の選手はほぼマンマークでマリノスのボールにアタックしていった。

また、コンサドーレのSHがマリノスのSBを捨ててボールサイドに圧縮してプレスをかけにいくシーンもあった。SHのチャナティップが中央へ入り、マリノスのCHをマークに付いた。これにより、マリノスの中盤にはマークが付いている状態となった。マルコス→深井。扇原→荒野。喜田→チャナティップ。
そうするとチャナティップがインサイドに入るので、右SB松原がフリーになるシーンは多かった。そこを活かしてマリノスが前進するシーンもあった。
しかし、マリノスが普段見せるハーフコートゲームには中々持ち込めない状態に。コンサドーレのプレスに苦しめられ自陣でボールをひっかけられて、ゴール前に侵入されるシーンもあった。
それではマリノスがどんな形でコンサドーレを攻め込んだのか?
それは、ポジティブトランジション(守→攻のトランジション)からの攻撃だった。
ポジトラから好機を
この試合マリノスのチャンスになるシーンはほとんどがカウンターのような形だったかもしれない。コンサドーレのボールを奪ってからの攻撃。守備から攻撃のトランジションが早くて正確でそこから一気にゴール前に攻め込んでチャンスを幾つも作り出していった。
とにかくこの試合、前線の選手がコンディションが良かったのか、前へのスピード、推進力が凄かった。トランジションも速かった。もちろん戦術的な狙いはあったに違いないが、シンプルに「速さ」でコンサドーレをぶっ壊していった。得点シーンもゴールを守るシーンもマリノスの爆発的な個人の「速さ」が印象的だった。
速さは強さ
その速さの中でプレー出来る技術もしっかりあるということでもある。
質で殴るマリノス

マリノスの攻撃の狙いはWGの仲川とマテウスにボールを入れる事だった。もはやマリノスのストロングポイントだろう。マルコスがCBとSBの間で顔を出したり、SBが内側に入ることで大外のWG2人をフリーにさせていた。また、コンサドーレはボールサイドに多くの選手をかけてボールを奪いにいき、逆サイドの幅をとる選手を捨てるので、逆サイドで待つWGにボールが渡せればフリーな状態になる。前がかりになれば当然裏が空く。そこをつくロングボールも入り、WGがフリーでボールを持つシーンも増えていった。
マテウス、仲川に入ると1vs1で仕掛けて突破する。サイドの攻防ではマリノスに質的優位があった。実際2点目は仲川のサイド突破から得点も生まれたし、マテウスもドリブル突破をしてクロスバーを直撃するシーンも作っていた。
そして3点目はWGの質でカウンターを成立させる。
23分 コンサドーレが攻め込むも、こぼれ球をマテウスが回収する。そこからマテウスがドリブル突破でカウンター発動。2、3人置き去りにするドリブル突破。センターサークル付近でボールを引っ掛けられるも、今度は仲川がボールを回収。仲川が一気にトップスピードになり、中央をぶっちぎる40m近いドリブルで最後はGKも交わしてゴールに流し込み3点目を奪い去った。
速かった。ただただ速かった…
Embed from Getty Images中央を制圧する喜田とチアゴ
この試合、守備に関してキャプテン喜田とチアゴの貢献度は非常に高かった。いつも彼らの貢献度は高いが今節はいつも以上に印象を受けた。
喜田は攻撃からの守備のトランジションでボールを回収して、二次攻撃の起点と、コンサドーレのカウンターのチャンスも摘んでいた。コンサドーレの可変するシステムにも、チャナティップがインサイドに入ってきた時には喜田がしっかりマークにいき、中央ではほとんどチャナティップに仕事はさせなかった。守備から攻撃からのトランジションでも貢献度が大きかった。
守備から攻撃になった時に自分たちのボール保持に切り替える作業は極めて難しいミッションなのだ。コンサドーレも攻撃から守備のトランジションが早いので、ボールを奪った瞬間に、複数の相手がボールを取り返そうとボールに襲いかかる。この作業で喜田はマリノスのボール保持に繋がるパスを味方に出していた。また、苦しい状態でボールを受けた時にはファールを受けてマイボールにするプレーはまさにいぶし銀の仕事振りだった。
そしてもう1人。
守備戦術はチアゴ!
Embed from Getty Images56分 のカバーリングは速すぎ。
クリアした後に喜田がチアゴの頭をポンポンするシーンは良かった。笑
この試合のチアゴの守備の貢献度は凄まじかった。まさに規格外のプレーを連発し、何度もコンサドーレの攻撃を防いでいった。速すぎる。本当に守備範囲が広いし、決断力、判断力、高さ、全てがハイレベル、本当にJリーグでNo. 1ではないだろうか。
マリノスはやはり攻撃に目がいくが、この2人のプレーも見ものだった。良い仕事していた。
このままマリノスが試合経過とともに圧倒していった前半だった。コンサドーレは決して狙い通りにゲームを進められなかっただろう。スコアは3-1でマリノスリードでハーフタイムへ。
後半へ
前半だけで両チームのファール数は20回以上もあり球際が激しいゲームだ。どちらもアグレッシブで強度たっぷりのゲーム。さぁ後半は運動量は落ちるのか?そうなった時にどんな展開になるのか?
後半に入るとコンサドーレが修正をしてくる。前半よりは自分たちのやりたいサッカーを実行してくる。後半早々コンサドーレにチャンスが訪れる。
ハーフタイムにコンサドーレはジェイに代えて、アンデルソン・ロペスを投入。
46分 ゴール前の右からのFKを獲得したコンサドーレ。キッカーは勿論レフティー福森。左足から綺麗なクロスが上がる。SB進藤がドフリーでヘディング。GK朴がビックセーブ。弾いたボールを鈴木が押し込むもGK朴がすぐ立って反応してゴール阻止。これはビックプレー。この時間帯にゴールが入る入らないじゃこの後のゲームの流れは大きく変わったかもしれない。ナイスキーパーだった。
コンサドーレの狙いは前半同様マリノスの裏だ。
50分 右サイドの混戦から、コンサドーレのロペスが逆サイドを走る左SB菅にサイドチェンジを送る。ペナに侵入するも右SB松原がスライディングカット。勇気あるプレーでチャンスを摘んだ。
段々とコンサドーレの攻撃が活性化してくる。
59分 コンサドーレが動く。キム・ミンテに代わって宮澤が投入される。これによりコンサドーレはより前がかりにマリノスにプレスをかけにきた。
宮澤の投入

宮澤の投入により、まずはコンサドーレのボール保持がより後方で安定した。ボールを動かす時間も増えてコンサドーレが狙う攻撃も多くなっていった。そしてもう一つの狙いが、マルコスの監視役だ。宮澤は明確にマルコスにマークにつくミッションが与えられていた。マルコスが落ちてボールを引き出しても、しつこいくらいに最終ラインのスペースを空けてまでマルコスに付いていく。ほぼマンマークのミッションが与えられていた。
コンサドーレの超攻撃型ハイプレスが段々とマリノスを攻め込んでくる。
しかし、マリノスが4点目を奪う。
大きな4点目
Embed from Getty Images68分 CKのこぼれ球を後半途中に投入された遠藤が右サイドでボールを持つ。相手が飛び込むまでじっくりボールを持つ。そのタメを使ってマルコスが裏抜けを開始。そのタイミングで遠藤がスルーパス。マルコスが前向きでペナの中でボールを受けると、後ろから引っ掛けられてPK獲得!
それをマルコスがきっちり決めて4点目獲得!大きなゴールが決まった。
しかし、コンサドーレも決してゴールを奪うことを諦めない。あくまで攻め続ける姿勢を見せる。これがコンサドーレの色であり、ファンを魅了させるチームの魅力だろう。マリノスにとってコンサドーレのこのメンタリティーは厄介だっただろう。点差をいくら離しても攻め続けてくる。
狙いがハマった2点目
攻め続けるコンサドーレ。マリノスの4点目が入ってからのキックオフから決定機を作る。
70分 深井から大外に張るフェルナデスにサイドチェンジが入る。ボールを受けたフェルナンデスがアーリークロス。GKとDFの間にクロスが上がる。そこに飛び込んだロペスがループシュートを放つも惜しくもクロスバー直撃!決定機だった。
72分 超攻撃型プレスがマリノスに牙を剥く。途中交代のCB宮澤のボール奪取からゴールが生まれる。マリノスのビルドアップにハイプレスをかける。インサイドに絞ったSBティーラトンに縦パスが入ると、落ちてきたマルコスのマークに来ていた宮澤が縦パスを奪取する。ドリブルでサイドを駆け上がりタメを作る。中央へ横パスを入れてボールを動かす。横パスを受けたチャナティップがワンタッチで浮き玉の縦パスを送り込み、マリノスの最終ラインの裏をとる。最後は鈴木がこの日2点目となるゴールを奪った。綺麗な崩しだった。
Embed from Getty Imagesいくら点差がひらこうが決して攻める姿勢が折れないコンサドーレ。いいチームだ。
残り15分も変わらずに自分たちのスタイルを貫き通した両チーム。本当にいい試合だった。スコアはこのまま動かずに4-2で試合終了。マリノスが今シーズン初の4連勝を手に入れた。
試合後には両監督が抱擁して、互いを讃えるコメントをしているようだった。痺れるゲームだった。
外しすぎだマリノス!
勝ったマリノス。4得点と攻撃力を爆発した。が欲を言えばもっと獲れた。獲らなければいけなかった。
だって優勝する為に得失点差は絶対大事になるから。あの1点を奪っておけば良かった…とならない事を祈るばかり。それほど決定的なシーンは多かったのは確かだ。選手のコンディションも非常に良さそうで、マリノスの強さである「速さ」を存分に発揮していた。
エンターテインメント性溢れる本当に面白いゲームだったのは間違いなかった。マリノスが2点取ってコンサが1点返す。そこからまたマリノスが2点を奪って突き放す。しかしコンサが再び1点を返し迎えた残り15分。攻め込むコンサ。とってもハラハラドキドキするゲームだった。
Embed from Getty Images勝ち点3もゲット出来たし、こんな面白いゲームも見れてとても素晴らしい一戦だった。両チームともに90分通して全く引く気なんて微塵もない超攻撃型なサッカーを見せてくれた。こんなエキサイティングなゲームを見せてくれた両チームに大きな拍手を送りたい。
さぁ残り3節。さぁどうなる。
大混戦の優勝争い。ワクワクが止まらない。
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