【出力の出しどころ】プレミアリーグ第17節 アーセナルvsマンチェスター・シティ レビュー

サッカー戦術分析
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先日行われたリヴァプールとワトフォードの解説を担当していた川崎フロンターレの中村憲剛選手がこんな事を言っていました。

長くハードなシーズンを戦い抜く上で「出力」=力の出しどころは非常に大切になってきます。この時はみんなで守る、このチャンスは一気に出力上げて攻めるぞ!といった感じに自分たちで出力のコントロールが出来る事が、今シーズンのリヴァプールの大きな強みだと仰っていました。

毎試合トップコンディションでプレーする事は極めて難しい事ですが、勝負所でしっかり「出力」を出す事で、ゴールを決められたり、ゴールを防ぐことに繋がる事は多々あります。

今節のシティの戦い方は、チームの「出力」の出し方をコントロールしていたとも見受けられました。いつもならもっとアグレッシブに前からプレスに行くところを、少し重心を下げて、相手を引き込んでからボールを奪ったり省エネをするシーンもあったり、攻める!となった時にはギアを一気にあげ得点を奪ったり、「出力」の上げ下げを上手く行っていたとも言えます。

当然、私もシティの試合を何試合観ている中で、いつもらしくない部分や、不安要素もある試合でしたが、アウェーのアーセナル相手に、簡単な状況ではない中でも「出力」をコントロールしながら90分戦い抜けたゲームでした。

スタメン

前半

開始早々に浮き彫りになるシティの課題と希望。アーセナルの縦パス一本からピンチを招いてしまう。オタメンディとフェルナンジーニョの2CBが対応するも、18歳マルティネッリに振り切られシュートを打たれいきなりCKを与えてしまった。

今シーズン入ってからあちらこちらで言われる課題と言われるCB問題。やはり裏への対応やスピードといったDFスキルが劣ってしまう部分が早速浮き彫りになってしまった。

しかしアーセナルに与えたCKからシティらしさが全開する。CKを回収するとアーセナルのトランジションプレスを掻い潜りながらボールを動かす。左から右へ。再び左へボールを動かし、アーセナルを自陣へと押し下げると、左CBのフェルナンジーニョがボールを受けるとゆっくりドリブルでボールを持ち上がる。

スルスルっと、あれやあれやとアーセナルのプレスを1枚、2枚と剥がしていく。これは軽すぎる…簡単にドリブルで侵入したフェルナンジーニョは斜めに走ったジェズスへスルーパスを通し、簡単にペナへ侵入。ジェズスもトントンと2タッチで前を向きえぐってファーサイドへクロス。そこへ好調デ・ブライネが走り込んで豪快にアーセナルゴールに突き刺し早々に先制点を奪った。

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デ・ブライネを活かす配置

シティの崩し、デ・ブライネのフィニッシュワークは見事だったが、フェルナンジーニョがなぜこんなにもボールを運べたのか?一つの理由はシティの配置だ。

中盤の底に普段居ないはずの選手がもう1人いた事でアーセナルはフェルナンジーニョにプレスに行けなかった。普段よりも中盤の底に選手が1人多いシティ。後方で4人がボールに関わりながらボールを動かすシティ。

それにより、アーセナルの守備の基準に迷いが生まれ、誰がフェルナンジーニョにプレスに行くの?といっている間にフェルナンジーニョがスルスルっと侵入していった。

後方4vs2でボールを動かすシティ。アーセナルの守備基準が定まらない。

4-3-3が多いがこの試合は4-2-3-1の配置だったシティ。ジェズスが頂点に入り、トップ下にデ・ブライネが入り、中盤の底にはギュンドアンとロドリが並んだ。

中盤の底に2枚が並ぶのでボールロスト後のリスクの軽減と、ビルドアップの安定が生まれた。また普段のシティと違うぞ?とアーセナルの選手に迷いを与えられ、その事でフェルナンジーニョがスルスルっとドリブル出来たかもしれないが、アーセナルの守備はあまりにも軽すぎたシーンでもあった。

これの配置に対応する前に先制点を奪われてしまったアーセナル。あまりにも早すぎる、痛すぎる一点となってしまった…

選手を後方に1人増やす事でメリットもあったが、前への厚みが減ることデメリットも同時に生まれる。しかしデメリット以上に好調なデ・ブライネを活かす為にはこのシステムは適していた。普段よりも攻撃に自由度を与えられたデ・ブライネが決定的な仕事をしていく。

相手の配置を見ながら相手に捕まらない立ち位置を取っていた。時にはワイドに、時にはギャップに、お得意のチャンネルに抜け出す動きも、カウンターの時にはドリブルで持ち運びゴールに迫ったなど、多種多様に攻撃に参加していき、個の違いを見せつけた。

デ・ブライネの後ろには2CHが後ろで待ち構えるので、ボールをロストした時にも彼らがリスクを軽減してくれたし、デ・ブライネに掛かる守備の負担も軽減され、より攻撃的にプレー出来ていた。

重心下げた守備

開始早々に先制点を奪ってから、シティがここから畳み掛けるのかと思いきや重心を前にかける事は無く、アーセナルがボールを握る時間が続いた。

アーセナルが握ると言うよりも、シティが重心を下げてアーセナルの攻撃を自陣に引き込んでからボールを奪う狙いがあったように伺えた。守備の時になると、4-4-2の配置になり、ジェズスとデ・ブライネがプレスのファーストプレスとなった。ファーストプレスの位置はセンターサークル付近を先頭に4-4-2のブロックを作って中央を固めてサイドにアーセナルを追い込んでいった。

先制点を早々に奪ったお陰なのか分からないが、無理してボールを奪いに行かなかったのかもしれないが、守備に関しては省エネしているように感じた。エネルギーを使わずにアーセナルからボールを奪う為に、ある程度ボールを保持させて自陣に引き込んでから、時間とスペースを奪った状態になってからボールを奪いに行っていた。

サイドにボールが入るとココからボールを奪うアクションを起こす。特にアーセナルの右SHのぺぺにボールが入るとメンディーがプレス、左SHフォーデンもプレスに行き、ぺぺには孤立した状態でボールを持たせるシーンが多かった。案の定2点目はぺぺからボールを奪ってカウンターを発動させて、これまたデ・ブライネの3人をひきつけてからのクロスをスターリングが合わせて2点目が生まれた。

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シティは前半特に自陣でのファールが非常に多かった。アーセナルの攻撃が前向きに侵入していたとも言えるし、ファールでしか止められなかっとも言えるし、ファールに行けるほどボールにアタック出来ていたとも言える。

守備に関してはリスクを掛けずに、より「出力」を抑えて、しかし危ない部分は「出力」を出してファールをしてでも危険なエリアを埋めていった。逆に言うとアーセナルは敵陣でのセットプレーをもう少し活かせたら結果は変わっただろう。

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数的不利な状態での3失点目

40分アーセナルのコラシナスが負傷で退場となる。急いでアーセナルのベンチは動き出し、サカが準備を始める。ボールはGKレノが持った状態でプレーが再開された。GKレノが再開する寸前にサカはピッチサイドに準備している様に見られた。レノは前線にボールを蹴り込みこのボールをシティに拾われて試合が再開。数分の間アーセナルが数的不利の状態となった。

ボールを拾ったシティがアーセナル陣内に攻め込む。この時、1人少ないアーセナルに迷いが生じる。誰がコラシナスの位置を埋めて、それに合わせて他の選手がどんな配置になってシティの攻撃に備えるのか?今何をすべきなのか?その僅かなズレからシティが右サイドからボールを運んで攻め込む。

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フォーデンが右サイドからボールを動かし、中央に立ち位置をとったデ・ブライネがパスを受けるとボールに触れずにターンをして、前向きでドリブルを開始。前を向くとすぐさまバイタルエリアから左足を一閃。

デ・ブライネは前半だけで2G1Aの活躍。好調ぶりを見せつけた。

後半

後半に入ると、アーセナルが「このままでは終われない」と言わんばかりに前へ前への姿勢を見せるが、その勢いも数分だった。段々と勢いは影を潜めていき、ペップシティの術中の中に引き戻される形となっていった。

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いつもと違うシティの中盤の配置に対応してプレスをかける様になったが、シティも配置を変えてそのアーセナルの変化したプレスに対応してボールを前進していった。

後半はそれ程戦術的にも面白くない展開だったかもしれない。試合経過とともに、ホームのアーセナルファンは試合のホイッスルを聞かずに足早にスタジアムを後にして行く。

何も起こらずに、何も起こらなそうに試合を経過していく。シティはそれで十分。前半に奪った大きなアドバンテージがある為に、何も起こらずに試合を終わる事でも十分この試合の収穫を得られるからだ。後は怪我人が出ないことだけを祈りながら試合を見ていたかもしれない。

試合は動かずに3-0でシティが勝利。
勝ち点3を持ち帰り、次節のレスター戦へ。

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終わり

スコアだけ見ればシティの3-0の快勝かもしれないが、内容を圧倒していた訳でもなかった。開始早々に奪えた先制点は大きかった。そのお陰で「出力」の出しどころを考えながら、守備に関しては省エネをしながらゲームを運び、チャンスと見れば「出力」を上げて、好調なデ・ブライネの自由度をあげる配置でしっかりとチャンスを活かしていった。やはりこう言う戦い方を出来るシティは強いチームだ。

リヴァプールに大きく勝ち点を開かれているものの、強い勝ち方を示せた。次節は好調のレスターとの一戦。2位と3位の上位対決だ。ここでどんな戦い方、どんな「出力」を出してシティが戦うのか非常に興味深い。レスター戦でどんな戦い方を出来るか、今節のアーセナル戦の戦い方の評価も大きく変わってくるかもしれない。戦い方次第で、アーセナル戦は自分たちで「出力」をしっかりコントロールして戦えたとも評価されるだろう。それとも、好調のデ・ブライネの個の力だけで勝てたと言われるのか、アーセナルの問題が大きかった…どんな評価になるかは次節のレスター戦がキーになってくるかもしれない。

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久しぶりに見たアーセナルのサッカー。色々うまくいってないのは明白で、難しいチーム状態だった言う感想だ。アーセナルはどんな道筋を辿って、これからどんな未来が待っているのだろうが。この試合でもシティのアルテタが良く映像に抜かれていたが…彼が監督になる報道も出ていたり、出ていなかったり、どうなるのでしょうか。

難しいね…

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